給湯室とハラスメント   男性上司の知らない世界   前編

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なんとなーく「セクハラ」の定義を理解していませんか?

最近、研修のなかで特に感じていることは、職場のなかで「セクハラだ!」と声をあげる側、言われる側も実は、セクハラを規定する法律の定義を正しく理解していないという厄介な問題を抱えています。つまり、言う方も、言われる方も「なんとなく」の自分の解釈で理解しているケースが圧倒的に多いと感じるのです。そんな曖昧な定義の理解の状況のなかで、研修でも定義の説明もそこそこに、セクハラの事例だけが先行して紹介ばかりされているケースをよく目にします。せっかくの機会ですからもう一度、定義を整理しましょう。

男女雇用機会均等法11条1項(2007年改正)

『事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない』このなかには、皆さんもご存知の対価型セクハラ、環境型セクハラの2種類が定義づけられています。

セクハラの定義を理解する前提として「労働者」というキーワードを正しく理解する必要があります。セクハラの相手方は「労働者」であって、性別は全く関係がありません。「行為者が男性、相手方が女性」「行為者が女性、相手方が男性」「行為者が男性、相手方が男性」「行為者が女性、相手方が女性」というこれらすべてセクハラに該当します。つまり、同性同士の行為もセクハラになり得るということも再確認しましょう。

 

男性上司の知らない世界

先に述べたようにハラスメントの話題の中に行為者は「男性、女性」と決めつけるのは本意ではありません。しかしながら、世の中を見渡すと、行為者として男性上司が圧倒的に多いのもこれまた現実です。ここだけは必ず前提条件としてお伝えしますが、これからお読みいただくケースが、「女性の世界でしか起こらない」というわけではありませんし、必ず起こるという訳でもありません。ただ「異性だからこそ分かりにくいこと、職場に潜むトラブルの「芽」に気付きにくいことも実際現場ではあるのではないか」という仮説をたててみました。

今回の事例は、ハラスメント研修企画会議でもご紹介している当社の講師のコラムをもっと多くの方にご紹介する目的で具体的な事象を引用しています。これからご紹介する内容は、例えば男女の立場を入れ替えて読んで頂いても構いません。是非、想像力を働かせてみてください。

 

「お茶入れの世界」

企業に訪問した際にお茶を出して下さるところはとても多いです。最近は男性が持ってきて下さる企業も増えました。これは大変喜ばしいことと思っています。但しお茶入れは女性の仕事となっている組織もまだあるのが現実でしょう。当番制となっていても微妙な世界が存在することがあります。

 

「好きな人には自分で淹れたい乙女心」

社内恋愛の善し悪しは置いといて、当番があったとしても暗黙の了解となっている事があります。こんな些細なことから悪しき「芽」が出ることもあります。

 

「差し入れのお土産などをわざと出さない」

お菓子の個数が人員数ピッタリということはほとんどありません。例えば数が足りないという理由でいつも同じ人に配っていないということがあります。

 

「ランチの世界」

お昼休憩はサラリーマンにとって大事なリフレッシュの時間ですが、気を付けて観察するとこんなことが起こっていることもあるのです。ご存知ですか?

 

「外食派と内食派」

ランチは気の置けない仲間と過ごしたい。そんな気持ちの中で派閥が出来たり仲間外れになっている人がいるかもしれません。

 

「外食予算でモヤモヤ」

毎日のことになるとランチ代もかさみます。外食派に所属したものの自分の意見が言い出せず予想以上のランチ代に戸惑う人もいます。元々かけられる金額が人により異なるのでお互いに気遣いが必要なところでもあります。しかし「お金が無い」とは言い出しにくく悩んでいる人もいるのです。

 

「ランチはみんなでご一緒に」

お昼くらい自由にいられれば良いのでしょうが、いつの間にか仲間内で過ごすのが当然になり参加しないと無視やいじめの対象になったり、参加しない人の陰口の場になったりと面倒くさいことが起こっている可能性もあります。これはランチだけではなくお茶会や女子会などにも共通するところがあるのです。

 

「笑顔の下の世界」

あくまでも講師の私見ではありますが“女は愛嬌”という言葉があるように笑顔でいる方が「利がある」ことを本能的に知っているのではないかと思うこと経験的にあります。笑顔は敵対心を持たせないため、コミュニティーを広げる為、関係を深めるために必要不可欠なツールなのだと思います。平等といわれつつ、戦後、男性社会が根付いてきた今の日本の職場の環境の中で染み付いてしまった技術なのかもしれません。 女性は感情が出やすくわかりやすいと思っている方はいませんか?

 

「嫌いな相手でも笑顔で話せる」

大嫌いな上司に仕事を頼まれればもちろん引き受けます。苦手な相手でも必要があれば笑顔で話します。イザコザが起きた時「あれ?あの人たち仲良かったんじゃないの?いつも笑って話していたのに」と思うのはたいてい男性です。笑顔で話していても悪口は言っていないとは限りません。

もうこれで終わり?そんなことはありません。

 

まだまだ続きます。

つづきは、次回のブログで。大事なことは、もう一度読み返すときに、男女を入れ替えて読んでみてください。どんな世界がみえてくるのか、その想像力を働かせる力がハラスメント問題を考える上で重要な思考トレーニングになります。

藤山晴久

ハラスメント研修企画会議
http://www.harassment.tokyo/#modal-options

◆注目!企業研修プログラム
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うっかり余計な一言に、上司は顔 真っ赤っ赤
http://www.harassment.tokyo/program/index15.html
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https://www.impression-ilc.jp/contact/

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を実施してきた。