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あなたの上司はマサイ族!?世代間ギャップとハラスメント

乾杯の音頭は、カシスオレンジで!

とある内定式の話です。
懇親会で乾杯の音頭にビールをとある男性の内定者に渡そうとしたところ、

「カシスオレンジでお願いします」

と答えた内定者がいたとのです。

彼は「なぜ、乾杯をするときに「とりあえず」全員がビールなのか?
意味が分かりません。 カシスオレンジではダメなのですか?
おまけに取引先のビールの銘柄まで決められているんです。
何の説明がないので、モヤモヤが残っています」

別の学生は、
「俺はビールよりも、コーラが好きなんです。
なんで、皆で同じ美味しくないビールを飲む理由に合理性が全くないので
断ります」
と素直に伝えた人もいたそうです。

また、ある女子学生からはこんな声がありました。

「私、今日の内定式、人生で初めてビールを口にしました」
このように会社の内定式でビールの味を覚えた大学生が実際にいるのです。
とある上司が苦笑しながらもとある内定者に「不味かった!?」と声をかけたところ、彼女曰く、
「正直、とても苦味を感じました。でも、これが社会人の味なのですね。
    勉強になりました」

とニコニコと満面の笑みでかえされたとのこと。 

座布団一枚!


未来の会社の主人公は上司ではない



 上司の皆さん、どのようにお感じになられたでしょうか?
ベテラン世代の方からすれば、不満を感じる方も中にはおられるかもしれませんが、これが最近の内定者の現状です。

むしろ、会社側としてよかれと思って行う内定者後の懇親会を「恐怖でしかない」と感じる学生もいるために、参加したくないと内心感る人もいるようです。

 ビールの問題はさておき、パワハラ問題、特に、上司が正しい指導と「信じている」仕事のやり方と、部下が考える「上司から任せられる仕事のやり方」に対する考えの違いから違和感を感じ、反感を覚え、その不平不満を「パワハラっぽい」ですよね、と「パワハラ」という言葉を使って自分の不平不満を表現してくる状況はあちらこちらで起こっています。

 「今どきの若手は」と感じた上司のあなたも、昔は同じことを言われていた「はず」ですが、若かりし頃の記憶は遥か彼方へ消えているかもしれません。

使うな!危険「とりえあず」



一方、部下の皆さんの不満も納得できます。

「 『とりあえず』これやっておいて!」

忙しい上司からこんな言い方で仕事を任される方も多いと思います。
「とりあえず」ってどんな状態に仕上げておけばいいの?
仕事のアウトプットのイメージが出来ない状態で任されることに、部下は不安を感じ、スッキリしないモヤモヤが残ります。

  部下が質問しようものなら「自分で考えろ」の一点張り。ステレオタイプな言い方ですが、「背中をみて覚えろ、仕事は盗むものだ」と言われて、誰からも説明されずに育った上司からすれば当たり前。

     一方で、部下からすれば、「あなたの背中に何が書いてあるのか?あなたの背中は本当に正しいといえるのか?」不満が残ります。説明能力に欠けている上司だと感じ、いつまでも平行線が続きます。


あなたの上司はマサイ族!?



想像してみてください。突然、あなたの会社で社員の出身構成が20代 ヒンバ族(ナミビア)、30代 ゴロカ族(パプアニューギニア)、40代 サンブル族(ケニア)、50代 マサイ族(アフリカ)、60代 ラバリ族(インド)から集まった組織になったとしましょう。

     互いに言語も風習も生活習慣といった文化が全く異なります。勿論、会社ですから同じ企業理念に賛同した人が集まっている点だけは共通していること以外、互いに会話や仕事の進め方や、やり方の議論は全くかみ合いません。

      かなり極端な例ではありますが、特に海外に拠点がない会社、職場に日本人だけの職場、取引先に海外の会社がないような企業にお勤めの方には、是非、イメージして欲しいのです。

     もし、この組織をまとめるには、相当な時間と根気強い対話を積み重ね、双方が納得しない限り「民族間(世代間)の働き方の考え方のギャップから生まれるパワハラの問題」は増加し続け、続々と退職者が増え、ついに組織は崩壊するのは時間の問題でしょう。

    一見無理がある設定ですが、今の時代、世代の価値観の違いから生まれるパワハラ問題を理解するには、

部下と上司は、「民族が異なる、または国が異なる人と仕事をしているのだ」

という位に捉えてみる心の余裕とおおらかさかに加えて、これくらいの大胆な発想がないと、職場が息苦しいと感じるかもしれません。
   
       異なることにいいも悪いもありません。存在していることに、価値があります。 「違うから嫌いな人」とすぐに、相手を切り離す考え方ではなく、「違うから面白い」と相手を受け止める余裕と一呼吸をしてみてはいかがでしょうか?(これも実際、難しい人もいるのですが、、、)

      部下が嫌う上司部下に押し付ける言葉に
「フツー、仕事ってさぁ、こうすべきでしょう」
という過去の成功体験を元にした言葉遣いがあります。
これを変換してみます。

「オレの民族ではね、仕事ってさぁ、こうすべきでしょう」

日本人のあなたから見たら 「ええええ!」と思うことがあるかもしれませんが、
彼らのフツーです。

部長、あのお土産マズイです。言える人、言えない人



これまで説明してきた価値観の違いを見事に考えさせられる1冊をご紹介したいと思います。
 「お金儲けはインド式」ビジネス社 というご著書です。
パワハラ問題を考える上で、示唆に富む内容であり、是非、引用させて頂きたいと思います。

『インドでは10月末から11月頭に「ディワリ」という大きなお祭りがあり、慣習として会社が従業員にギフトとして菓子を配るという。ある時従業員から「ボス、昨年もらったお菓子、あれ、おいしくなかったですよ。買う店変えた方がいいでしょう」と言われたそうだ。

    日本なら、忖度して「美味しいです」と言うところだが、インドでは絶対にそうならない。 意見を言うには美徳ではない、謙虚でいたいとうい慣習、文化はランチで行きたい店すら言い出せないという現象となる。
     仕事においては、
「日本では給料が安くても手を抜かず働き、昇給も自ら要求しないのが美徳」
「たとえ単価は安い仕事であっても、決して手を抜かないのがプロ」
といった無言の圧力が生まれているこの独特な仕事への美意識が、結果、ブラック企業を増やし、下請けいじめが増え、多くの従業員を疲弊させており、また、どんなことでも自分に責任があると感じ、とりあえず誤ってしまう考えは正直不健全であると、著者は考えます。

     実際に不満に不満をためてからの突然の退職など、日本ではよくある。 ビジネスの交渉もインド人は「自分の希望を伝える」という点のみにフォーカスし、そうすることで相手がどう思うか、という点はまず考えない点をあげているが、実際にこのようなマインドを持った日本人も多くいる。

     このように考えると、多数派ではないものの、国籍はあまり関係がない』 インドでは「どうしても人は人に迷惑をかけるのだから、あなたも他人からの迷惑を許せ」と教えるとのこと。

      ミスをするたびに徹底的に叩かれる日本社会よりも、のんびりで生きるインドの方が悪くないという著者の考えに共感しました。
      是非、ご一読頂きたいと思います。

仕事に疲れたら海外へ!?

     相手の背景にある文化を理解しながら、自分の想いが伝えることは、一生懸命対話を重ねないと難しいでしょう。他人同士が理解しあうことは、そもそも難しい訳ですから、時には意見の食い違いや間違うこともあるのですから、そのときは素直に謝ればいいのです。(謝れない人が多いことも事実ですが、、、)

    このように、上司部下の価値観の違いから生まれるパワハラ問題も、民族が異なると捉えれば、共通言語にあたる、理念の共有、働き方についての同じモノサシと、モノサシの使い方の相互理解も必要になります。

     多様性が大事と言いながらも、いまだに職場のなかの人間関係の多様性には意識が向きにくいですし、その議論から避けようとする上司もいます。
 あなたの「フツー」って何? 言葉の定義のすり合わせから始めなければいけません。たとえイライラしても、暴力は絶対にいけません。ブラックなパワハラです。

最後に、非常に当たり前なことで恐縮ですが、組織の中で相手は自分と異なる価値観を持っていることを強く、強く、常に想いながら、部下、上司双方が日常の対話を重ねつつ、今年の新入社員を暖かく迎えて欲しいと思います。
      この考え方がわからない大人が、驚くほどに沢山いる事実を研修を企画するたびに痛感します。 

     世代間ギャップにイライラしたら、有休で海外に行き、自分のフツーが全く通じない体験を沢山積み重ねることもいいかもしれません。


ちなみに、あなたの部長は何族でしょう?(笑)

ハラスメント研修企画会議 主宰

 藤山晴久 株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を実施してきた。