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「青春は密」と語った高校野球の監督から学ぶ。パワハラにならない部下指導のヒント

「監督の指示は生徒を思考停止にさせる!?」

嬉しい。メチャクチャ嬉しい。仙台育英高校が今年、夏の甲子園で優勝した。高校まで育ったふるさと仙台。(しかも自宅は育英高校から近かった)上京後も、毎年の全国高校野球大会だけは見続けていました。
「東北勢は、冬の練習量が圧倒的に西日本に比べて少ないから弱いんだ」
この単純に「練習量」の問題だけが、優勝できない理由のように結論づける論調に長年、長年、疑問を感じていました。

今の中学生のみなさんが聞いたらショックを受けるかもしれませんが、30年前当時の公立中学の部活動では「今日は校庭100週だ!」「素振り1000回!」と突然先輩に指示されるのです。
「何のために?」
その目的を尋ねるたびに先輩から殴られ、「逆らうな」と暴言も吐かれた記憶がよみがえります。
今、冷静に考えると先輩たちも論理的に説明することが出来ない、いや、監督から言われたことだけ後輩にやらせる「指示待ち」に育てられた、ある意味可哀そうな側面もあったのでしょう。すべて監督の責任です。

「いいからやれ」
「そういうものだ」
「伝統的にこうなんだ」
理由と目的を語らない先輩と監督。
あれ? どこかの上司のセリフに似ているような、、、

YouTubeと上司。学びが多いのはどっち!?

優勝後、スポーツニッポン新聞社のスポニチアネックスWEBに非常に興味深いインタビュー記事が掲載されており、そこには日本の管理職も学びたいマネジメントのヒントが満載でしたので、ご紹介したいと思います。仙台育英高校の監督の須江さんは、記事で次のように仰っていました。

『昔は、監督やコーチの助言や経験則、技術指導、アドバイスでした。今は、場合により監督よりも優秀な指導力のある人間はたくさんいて、その情報を得ることも非常に容易になっています。SNSを開けばプロ野球選手が感覚として思っていたことを言語化していたり、有名選手の練習法も調べることが可能になりました』

そうなんです。部下指導の方法や、コミュニケーションの取り方、起業の仕方、投資などYouTubeやインスタ等々を見れば、ご存知の通り物凄い数の動画があります。国内外を問わず、世界中の自分に合った指導者や有名人の話を聞いて学ぶことでも出来ますし、あらゆるジャンルの超一流に簡単に触れることができます。ひょっとしたら、SNSで楽しみながら学び続けている部下がいる一方で、アップデートしない昔のやり方を貫き通す上司の影響力が下がっていく時代は間違いなくそこまできているのでしょう。

「YouTube?インスタ?そんなもの知らないし、見ないよ」

いまだにこんなベテラン社員や、上司、新しいことに挑戦しない上司、現実が分かっていない実態を見るにつけ、大袈裟かもしれませんが、彼らが知らぬ間に、今の中学生、高校生が会社をリードする頃には、もっと世の中の部下指導の在り方も様変わりしているはずです。

「俺の指導が古いとでも言うのか!」

さらに須江さんは、こう仰います。

 『指導者は技術指導を含めて絶対的な存在でしたが、今は違うと思います。監督の仕事は“交通整理”をすること。彼らの思考の交通整理をしないといけない。だから千賀投手になりたいと言っている子が、全く違うメカニズムとか、体の使い方をしているケースがあるので“どこを目指してどんな練習をしているのか?”と聞いてあげる。その上で、だったらこの人に教わった方がいいんじゃないか、こういうトレーナーさんに助言をもらった方がいいのでは、のように話し合いますね』

 自分のやり方が「絶対」と思い込む上司は意外といまだに多い印象です。我を張って自分のやり方をおしつけたり、根拠や目的なき根性論をいまだに美化したり、行き過ぎた指導がパワハラになる可能性が高いのですが、昭和の指導をいまだに愛しく思う上司は、自分の指導法を金科玉条として信じて疑いません。

 また、須江さんは、自分が全部を教えるのではなく、個々の相手の個性を見て、指導する人を変えたりと、サポート役にまわり、助言をする役割に徹しています。「俺が、俺が」のでしゃばるタイプの上司と全く異なる点です。なぜそのかかわり方が大事なのか?これからのみなさんの会社に入社してくる若手には、自分の価値観や信念に基づく指導だけを部下に押し付けても、効果が少ないだけなく、どれだけ採用に金額を投資しても、さっさと辞めていくリスクを知って欲しいものです。

優しさは、想像力 -怒る指導の終焉

 巷で「アンガーマネジメント」が流行るように、怒りの感情を部下指導にも持ち込むことのリスクなどは色々な方が解説されていますので、ここであえて触れませんが、怒って叱ることについて

気になる須江さんの言葉がありましたので、シェアさせてください。

須江さんは、こう仰っています。

 『僕も叱る時はありますが、選手のモチベーションを上げる存在ではないといけません。時代が求めている監督の役割は変わりました。』

怒って叱ることに快感を覚えている管理職がいます。従業員が沢山いる場面で、部下に大声で叱るのです。これでは、部下のモチベーションを上げるのではなく、怒っている上司の脳が快楽を伴い、上司のモチベーションを上げる!?だけの単なる自己満足であり、全く意味と効果がありませんよね。

また、須江さんは、次のように述べています。

 『同じことを言っても誰が言うか、いつ言うか、その聞く相手がどんな精神状態か、によって効果も変わります。話を聞いてもらうには相手の心が穏やかではないといけません。優しさは想像力ということを選手には常に話しています』

これは本当に生徒の方を一人一人よくみていないと気づくことができませんし、相手の状態を常に観察することの重要性を感じます。これは、部下との関係にも当てはまると私は思います。

「優しさは、想像力」 胸が熱くなります。

あなたの部下指導、「優しさと想像力」がありますか?

是非、記事を読んでみてください。
正直、解説したりないのですが、今回はショート版ということで、ご容赦ください。みなさん、是非、下記のリンクから記事をご一読ください。
『  』 括弧書き 須江監督のインタビュー記事
引用元:スポーツニッポン新聞社 スポニチアネックスWEB 2022年8月26日
スポーツニッポン新聞社様に許諾を得ております。

記事リンク先
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2022/08/26/kiji/20220826s00001002152000c.html

ハラスメント研修企画会議 主宰

株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を企画してきた。

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2022/08/26/kiji/20220826s00001002152000c.html