「コトバのボキャブラリーを増やして、上手に感情を語れる人になろう」
学研から3年前に発売されて重版している「感情のことば選び辞典」(学研プラス)をご存知でしょうか? 帯のキャッチコピーも秀逸すぎるのです。
「気持ちを言語化できずに、じたばたするあなたに!」
そう、まさに、普段の仕事やメールでとっさの時に、こんな場面で「なんて書けばよかったっけ」と悩むことはないでしょうか?(ちなみに、私はかなります。)
テレワークになって仕事の内容だけではなくて、自分の想いや感情を上司に伝えるときに、実際に職場で相手と話すときには使えた「ヤバい」も、いざ、コトバだけで目に見えない自分の感情を目の前にいない相手に伝えるときに、意外と自分のボキャブラリーが少ないことに気が付いた人が多いのではないでしょうか?
そうなんです。
気持ちを言語化するって意外と難しいのです。
「バカやろう」のコトバは、いつでも、どんな時でも常に断定的に100%パワハラになるのですか?
先輩から言われる「お前は本当にバカだな!」という言葉も、
例えば、非常に仲の良い先輩後輩で顔を真っ赤しながら、二人とゲラゲラ笑いながら「やめてくださいよー先輩」!いった状況)では許容されたとしても、
メールで突然、先輩から「お前は本当にバカだな!」という一言が書かれていたら、同じ言葉でも、ムッとする確率が高くなるか、パワハラだ!と訴えられるか、自分がなにかやらかしたかと後輩は焦るかもしれません。
このように、文脈や前後関係と相手との関係性が全くわからないために、どうしても最大公約数的な表現になりがちですし、受け止め方も千差万別です。
ある人は、まるで社内の人とも取引先との会話調のメールになっている人や、性格かもしれませんが改行もせず、読み手の息が詰まるほど、文字が詰め詰めでぎっしり(思わずスパムメールか!?)書いてくる上司もいます。
皆さん、一様に文章の書き方に苦戦している様子が見えてきます。また、その方の個性や文書の癖がよく見えるのです。
仕事のメールに「お疲れ様です!」の「!」はダメですか?
驚くくらい、会社の社風によって本当に異なるのですが、例えば、テレワーク中に「お疲れ様でした!」の「!」を書くと、「ムッ」とする大先輩がいたりする会社や、違和感を覚える上司がいる職場があることも事実です。
一方で、テレワークになって初めてチャットやスラックを始めた会社で、最初は心理的抵抗があったのですが、慣れれば60代の社員も顔マークを使いこなしている職場もあり、本当に様々です。
ただでさえ、毎日のように感染者数がテレビから聞こえてきて、不安と落ち着かない状況ですから、イラっとしやすい精神状態になっている方が多いとも聞きます。感情を語ることに、正解、不正解はありませんし、これは、本当に多くの企業を見て思うのが、自分の会社のこれまでのメールでのコミュニケーションの取り方が、ルールもないのにも関わらず、「絶対」と信じ切っている人が特にベテランの方に散見されます。
イチイチ「!」や絵文字に振り回されて、「イラっ」としているくらいなら、どうすればメールの文脈やツールを使いながら気持ちのよい会話ができるのか、業務の指示だけではなく、仕事に必ず紐づく感情を相手に伝えることができるのか、感情というボールを使って、考えながら相手とキャチボールすることがますます大事になってくるのでしょう。
「感情のことば選び辞典」から学んだ、上司、先輩への感謝の気持ちの伝え方
「先輩、スゴイですね」でメールを受け取ると、バカにされているように思う人もなかにはいるようです。例えば「スゴイですね」の代わりに、「敬重すべき先輩の指導に感謝します」などと、表現を変えるとどうでしょう?
これも新手のパワハラか?と捉えるのは大げさですが、大事なことは「敬重」という言葉が、頭の中で選択肢の一つとして、スッと出てくるかどうかをあなたの胸に手を当てて考え欲しいのです。反対にいくらいい言葉を使っても、相手側が知らないとスルーされるか、プチ嫉妬されることもあるので、相手や状況をよく考えて使う点は気を付けたいところです。
この辞典のスゴイところは、「敬う(うやまう)」と辞書をひくと、「畏敬」「渇仰」「恭敬」「仰望」「欽慕」「敬愛」「敬重」などなど、26個のバリエーションが出てくるのです。
ただし、使い方やTPOを誤ると恥をかくので、職場での使えるものを、事例を参考に取捨選択する必要はありますが、大事なことは、自分のボキャブラリーのなさを思い知らされるのです。特別にあなたが小説家を目指しているのでなければ、まずは気楽にさっと目を通す程度でも十分でしょう。
その他にもいくつかご紹介します。
相手を褒めるときに使うコトバに「上手」「上手いですね」がありますが、さすがに先輩に「上手ですね」とは書けませんので、辞書を紐解くと
「得手」「軽妙」「手練」「絶妙」「堪能」など全部で28個のコトバがあります。さらに、やわらかい表現の仕方も紹介があります。「鮮やか」「見事」などなど。
ムカムカしているときも、「イラつく」とは書けませんので、
「焦る」、「鬱憤」、「焦心」、「焦慮」、「急く」などなどに変換する
笑うときも、「笑」「wwww」もいいのですが、
「一笑」「笑壺」「呵々」「莞爾」「噴飯」 合計26個も言い換えるコトバがあります。
毎回使うのもいいですが、ここぞ!という時に使うといいかもしれませんし、辞書に見慣れてくると、自分にとってしっくりきて使いなれてくる言葉は、息を吸って吐くように自然と使えてくるでしょう。
新入社員だからこそ知っておきたい、ボキャブラリーを増やすと、仕事に自信が持てる!
特に新入社員の皆さんがLINEで短い言葉でやりとりするときにこの辞書のコトバを使っても、相手は驚くので刺さるかもしれませんが、一方で、就職して、即テレワークで仕事をはじめる方も増えてくるでしょう。
文章での会話がますます増える環境で、日本語の響きや言葉のボキャブラリーを増やすチャンスと思って、是非、この辞書を(小さいので見やすい)机の片隅におきながら、ゆっくりと言葉を増やして上司も驚喜するような仕事ができるようになってみませんか?(自戒の念をこめて)
大きな声では言いませんが、コトバ遣いは、特に年配の方ほどよく黙って見ています。「彼、彼女は言葉を知っている人だな」と思われると、長い目で見て結果的に得をすると思います。なぜなら、皆、先輩も含めてそんなに言葉を丁寧に扱っている人が意外にも職場では多くないからです。
毎日の仕事のなかで、少しだけ意識して使うことで、数年後に圧倒的に差がでることは間違いありません。先輩たちも頷いていると思います。
また、「バカ」という言葉も、確かに深く考えずに職場で部下指導や相手を非難攻撃する際に用いられる言葉ですが、発言者に相手を馬鹿にしてやろうといった意図がなくても、パワハラと受け止められる可能性もケースによってはゼロではありません。
コトバひとつでお互いにあらぬ誤解を招くことほど、悲しいことはありません。また、大事なことは、メールは証拠力が強いために、記憶ではなく「記録」として残ります。
やっぱり「文は人なり」
ボキャブラリーを増やすことが、大げさかもしれませんが、本当に自信をつけて上手に仕事ができるようになる一歩、といってもいいかもしれません。
是非、コトバを磨いて、自分を磨いて年齢に関係なく成長していきたいものです。