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偉くなるたび、臭くなる人

上司の香水は、セクハラか?

 とある会社の出来事です。社内の相談窓口にこんな連絡が入ったそうです。

「うちの課長、私の入社前から、頭はポマードにリーゼント、臭いがきつい香水で有名で、廊下でその香水の香りがするとその課長がさっき廊下を通ったとことが分かるくらい臭うのです。
 周囲は仕方ないと半ば諦めていたのです。 ところが、その課長が今年の春に部長に昇格したのですが、香水がさらにきつくなってきて、クサイを超えて社内公害レベルです。なんとか注意してもらえませんか?」と連絡が入ったそうです。
  しかも相談には続きがあります。
「しかも、部長、そうは言っても根はいい人なんですけど、おまけに昼ごはん食べても歯も磨かないし、そのままコーヒー飲んで、タバコ吸って、そのまま喫煙室から戻った後のOne on Oneの面談は最悪ですよ。罰ゲームもいいところ。
  ある夏の日、個室の臭いに耐えられずに、ある面談の日についに耐えられずマスクをしていったら、 「夏なのに風邪?早く直せよ!」まるで、他人事なんです。
  これ、セクハラとパワハラの合わせ技?それともスメハラ?なんでもいいですけど、注意してください!我慢できません。みんな、部長の被害者です。課長も部長に気を使ってみてみぬふりで、注意しないんです」

ひょっとしたら、あなたの職場の光景かもしれません。

  さて、この相談からハラスメント問題を考えていく上で大事なポイントがいくつか見えてきます。

① 「スメハラ」なんて言わせない!

 この対話を伺う限りでは、真っ黒なセクハラとは言えません。
ビジネスマナーやエチケットの範疇で指導すべき問題であり、セクハラ問題ではありません。
 大事なことは、ここで「スメハラ」とか、意味のわからない言葉遊びで楽しんでいることの方がよっぽど問題だということです。ここで言葉遊びに振り回されてていると、なんでもかんでも「セクハラだ!」「パワハラだ!」「○○ハラだ!」と本質が見えなくなりますので、「スメハラ」という言葉で人をいじる行為自体の方がよっぽどハラスメントを正しく理解していないと思われるかもしれません。
 是非、今日から、ハラスメントの問題と、ビジネスマナー、エチケットの問題を区別して考えるようにしましょう。

②いつの時代も部下は上司にモノが言いにくい!!

       組織的不正でもそうですが、そもそも、組織において部下は上司にモノを言いにくいものです。口臭と組織的不正を比べることは大げさかもしれませんが、部下は上司に臭い!とは面と向かって言えませんので、我慢しているのです。
      特に、口臭は難しい問題です。偉くなると、誰も注意をしなくなります。このままでは最後には、裸の王様になってしまいます。「なんでも言いなさい」、という上司は、一見器の広い上司にもみえますが、部下はやっぱりなんでも言えないのです。悪い情報、自分には都合の悪い情報、耳の痛い話を部下が言える組織風土が大事であることは皆、分かっています。そうであるならば、 まずは、初めはかなり遠回しですが「部長、よかったらガムいかがですか?」と部下が上司にそっと渡す人間関係をつくることは大事ですが、意外とそこが希薄だったりします。そもそもガムを渡される意味が分からない部長には、残念ですが効果はありません。
      偉くなると、30年前、40年前、自分が若かったころ散々上司に気を遣っていたことも忘れてしまうようです。実るほど頭が下がる稲穂かな、昔の人は素敵な言葉を残してくださいました。今では、エチケット問題を実際に研修で取り上げる会社もあります。まずは、自分が周囲に迷惑を掛けていないか、常に考える習慣、周囲に気を使える意識、エチケットの問題がハラスメントだ!と言われない対処法のひとつかもしれません。叱っても、慕われる上司になる方法ともいえるでしょう。

③メッチャ香水臭い人は、承認欲求の強い、寂しい人?!

      部長もこの位の臭い、俺も部長になったんだから、このくらい許されるだろうという気持ちになっていたかもしれません。聞いた話ですが、ある会社では、超年功序列で完全なる社内の序列が存在する会社で、この令和の時代に勘違いも甚だしいのですが、昭和の感覚を捨てられないのです。変化を極度に恐れるのです。この会社の部長は、「俺の言動がこの会社のバイブルだ!」と言ってメンバーがびくびくしているようです。 本物の「バイブル」に失礼!?です。
     エスカレートしていく香水の匂いは、承認欲求の態度のひとつの表現ともいえます。俺は偉いんだ!と勘違いしている人も、これはあくまで「条件付偉いんだ!」であり、つまり、あくまでその組織の職場の「役割」に限り、一歩玄関を出ればただの人なのです。何をもって「偉いのか」定義も曖昧ですよね。このまま放置しておけば、徐々に部下は心理的に、最後に物理的に距離が遠ざかっていくのです。
     
    あなたは、上司、先輩で偉そうにしている人の気持ちご存知ですか? 上司、先輩の皆さんは、実は自分の過去の生き方、働き方を正当化して欲しくて、いつも良い子でいたいのです。だから、自分に対する他人の評価が自分の考えと違うととても耐えられず、反対に逆ギレする人もいます。
     以前、ある講師がこんなことを言っていました。「理不尽な態度の上司にも赤ちゃんの時代がありました。だから、そんな上司を赤ちゃんとイメージして接しましょう」と言っていましたが、私は絶対に無理です。噴出してしまいます。余計にムカッとするかもしれません。(笑)

もう一度、気持ちよく身体も、気持ちも快適な状態で働ける職場をつくるために、何が出来るか、一人ひとりが考えてみませんか?

ハラスメント問題は、知識の問題ではなく、意識(心がけ)の問題なのです。

ハラスメント研修企画会議 主宰

藤山晴久 株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を実施してきた。