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これからのリーダーが知っておきたい 、年上部下の老化と認知症

 

定年がなくなる時代に、20代、30代のリーダーが知っておきたいこと

 今年の4月から改正高年齢者雇用安定法が施行されました。65歳までの雇用確保に加えて、70歳までの就業確保(努力義務、現時点)となり、70歳までに定年引上げ、定年制の廃止が求められています。

 20代、30代の皆さんからすれば、「70」という数字を聞くだけでは、自分にとっては50年先、40年先のことは関係ないと思うかもしれません。それは仕方がないことかもしれませんが一方で、20代、30代の経営者、管理職からすれば、自分がスタートアップした会社、あるいは、自分が勤める会社でマネジメントをする立場の方は、他人事ではなくなるかもしれないということを知って欲しいのです。

20年後、30年後は、他人事ではない

「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること 講談社現代新書」(出典引用)の人口減少カレンダーによると、2024年団塊世代がすべて75歳以上となり、社会保険費が大きく膨らみ始める。
2040年には団塊ジュニア世代がすべて65歳以上となり、大量解雇で後継者不足が深刻化。
2050年には団塊ジュニア世代がすべて75歳以上となり、社会保険制度の破綻懸念が強まる。

と、会社の中の人員構成が変化せざるおえない状況に向かっていることは容易に想像できます。この事実からも定年引上げは自然な流れであり、この事実から私たちは逃げることができません。

 今回は、そんな特に若手のリーダーのみなさんに、年上部下が抱える年齢を重ねることで高まるリスク「老化」と「認知症」について部下指導をする上で知って欲しいと思います。90歳を超えれば、9割が認知症と言われています。

 今、会社を退職した方も様々な契約形態で再雇用、起業したりと活躍しています。先日、マクドナルドで日本最高93歳のクルーの方がネット上で紹介されていました。周囲の若手にもいい影響を与えてくれる素晴らしい方もいらっしゃれば、一方で、はた迷惑な人がベテランがいることも事実なのです。具体例をご紹介しましょう。

困った年上の部下の懲りない面々

 なぜか上司である30代の彼に「くん」づけを執拗に言ってくる50代の年上部下、「誰のおかげで偉くなったと思っているんだ」と過去の成功体験を美化してチクチクと攻撃したり、話を聞こうとしない年上の部下との付き合い方に苦労している20代、30代の管理職の悩みは絶えません。

他者を理解しようとする力

今後、様々なテクノロジーの発達により、認知症の問題も解決に向かうことを期待しつつ、認知症や老化のメカニズムを知っておくことで、もし、年上部下の言動や健康状態を上司であるあなたがきにかけたときに、単に「困った人、或は年齢のせい」で片付けないで産業医に相談したり、適切に対応できることがあります。

若手の上司に求められる安全配慮義務は、30年前には考える機会がほぼないに等しかった、これまでにないテーマです。もう他人事ではありません。人間は、皆平等に死に向かって生きているのは厳然とした事実で、若手リーダーのあなた自身も平等に訪れる事実な訳ですから、知っておいて損をすることはありません。

「自分には分からない他者を理解する力」がこれからのリーダーには益々求められてきます。

前回に続き、「認知症の取り扱い説明書」著 平松類先生(SB新書)を引用しつつ、年上部下をマネジメントする上で、若手リーダーに知って欲しいポイントをいくつか整理して共有したいと思います。

スマホがなぜ不便極まりないのか?

画面の文字が小さくて読みにくいこと、年を重ねると指か乾燥してタッチパネルへの反応が遅いことが挙げられます。

「便利」とは若手からの視点で高齢者になると「不便な商品」となるとのこと。この事実を知らないと、「新しい方が安全だし、便利だから」という一点張りで強く勧めるのです。一方、ペンを使うタブレット端末は人気のようです。

ファイナルファンタジーを楽しむ方もいるとのこと、驚きですね。部下が上手にスマホが使えないからといって嘆かないでください。

高齢者にがま口ユーザーが多いのは、趣味の問題ではない

65歳以上になると、手先の感覚は若い人の半分となり、また持つ力が30%減少するそうです。レジの後ろの人を待たせて、小銭を取り出すのに時間がかかる光景はために見ますが、イライラせずに「手元の感覚が弱いのか、大変だな」と落ち着いた気持ちでみることが大切とのこと。

いまこの文章を読んで笑っている20代のリーダーのあなたも、いずれ同じ動作で部下に笑われるときがくるでしょう。所詮みんな老いるのです。どうぞ、寛容力を高めたいものです。特に仕事の内容によっては年上部下への配慮もあなたには求められます。

記憶力の低下が怒りっぽさを誘発する

認知症によくみられる代表的な行為は「怒り」です。認知症によって今起こっていることが認識できなくなると、「自分に悪いことをされている」「悪意を向けられている」と勘違いして、怒ってしまいます。感情のコントロールも難しくなるために、収拾がつかなくなります。

 記憶力は認知症でも低下するそうですが、年を重ねることでも低下しやすいとのこと。怒った感情は年をとっても比較的残りやすく、その恨みはしぶとく残りそうです。6.9%の人は暴力を振るうなどの攻撃性を持つと筆者は提示しています。特に鬱の傾向があると、通常の3.3倍に跳ね上がるのは驚きです。すぐに切れたり、暴力を振るうといったパワハラ行為は職場では大迷惑ですが、その引き金として記憶力の低下が一因であることを知っておくと向き合い方も自ずと変わってくるでしょう。

人は死ぬまで性に関心が衰えない

 セクハラ問題の観点からお伝えしたいのですが、高齢者でも性的なことに興味があることを知っておくことは大事と著者は伝えています。年齢を重ねると性的なことに興味がないという想い込は捨ててください。リーダーとしては、どの世代でもセクハラ問題は起きるのだと認識して欲しいものです。

「なぜ、高齢の女性は、髪を青や紫にそめる人が多いのか?」

これは私も以前から気になっていたことですが、聞きづらいことでした。実は白髪はよく見ると黄色みががっているそうで、茶色で染めるとあまりきれいな色にならないために、黄色の補色である青や系統の近い紫を入れることで、髪をきれいに見せるという効果を出しているという点は、納得が出来ました。

ちなみに私の母親もしっかりと紫に髪を染めていました。

認知症には、まだわからないことが多く、しっかりとしたエビデンスを持つ論文が検索することが困難とのこと。

もっとご紹介したいところですが、是非、この書籍を手に取りじっくりと読んでみ  てください。視野が広がります。

 「多様性」という言葉はキレイですが、実際に多様性をすべて知ることは難しいことです。少しづつ自分の知らない他者を理解する、そんな機会を持ち続けたいものです。反対に知識がないことで、年上部下の言動にイライラして怒鳴ったりと、リーダー自身がパワハラをするリスクだってあるのですから。自戒の念をこめて筆をおきます。

ハラスメント研修企画会議 主宰

株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を企画してきた。