日別アーカイブ: 2019年3月27日

給湯室とハラスメント  男性上司の知らない世界  後編

女の私でも面倒くさい。

前回のブログでは、男性上司の知らない世界をご紹介して参りました。実態を教えてくれた女性講師から次のようなコメントを頂き、考えさせられました。

女の私でもね、正直、面倒と思うこともありますよ。

グループや派閥に所属すること、群れをつくることで安心感を得られることも特徴なのかもしれません。しかしそれを面倒と思う女性も結構います。 まだ女性が一人で出張、一人で新幹線に乗っている状況が珍しい昭和の時代。お弁当と一緒にビールでも飲もうものなら驚いた目を遠慮なく向けてくるのは、観光旅行らしき女性の集団でした。可愛そうとでも思われていたのだろうと思います。最近はそのようなこともなくなりましたが、それでも(日本全国の様々な社風の組織にもよりますが)職場の中に一人でいる女性には冷ややかな目を向ける現状はゼロにはなっていないようです。

時代が変わっても職場での悩みのトップ3に必ず入っているのが「人間関係」です。そう考えると男性でも結構面倒な人もいるはずです。異性の部下を持ったとき「女性のことはよくわからないから対処が出来ない」では通らない時代になりました。時には想像もできない些細な事からハラスメントは始まります」とのことでした。

これまでお伝えしてきたことは、典型的なハラスメント研修の教科書には少なくとも書いていません。だからこそ色々な人の話を聴くことで、自分のなかに「こんなこともハラスメント問題のリスクになるのか!」といった小さなリスクの芽を知ることで、様々な事例を蓄えておくことは大切かもしれません。

さて、前編に続いて男性上司の知らない世界をご紹介して参ります。

 

「女の嫉妬の世界」

他人から見たらどうでもいいことでも、当人にとっては気になって仕方のないことはあるものです。人間である以上男女にかかわらず、多かれ少なかれ人を羨む気持ちはあるものでしょう。その感情を上手く使えば自分の研鑽に力を注ぎますが、努力もせずに妬みに変えてしまう残念な人もいることも事実です。

「同じレベルで嫉妬は起こる」

同僚、同じチーム、同期、同じような普通さ加減、そして同性。似た者同士の方が嫉妬を起こりやすくさせるようです。同じ仲間だと思っていたのに彼氏が出来た、結婚が決まった。同じようにやっているのにリーダーに抜擢された。同じような仕事をしているのにあの人だけ褒められる。本当に同じレベルというよりは同じと思い込んでいるだけのような気がすることもあります。ほんのちょっとした差に敏感に反応しているようです。 

「陥れて自分の評価を得たい人」

同僚が褒められたり評価を得られたりすることを大変嫌う人がいます。自分自身も評価を得られたいのであれば仕事で表現すれば良いのですが、嫌味やちょっとしたミスなど過去の事を掘り返し貶めようとする人がいます。本人が気づいていないだけで案外周りは解っているのですが… 

「出る杭を抜いて捨てる人」

自分の地位は確立出来ているのに立場が違う関係(例えば正社員と派遣社員、先輩後輩、リーダーとメンバーなど)の優秀な部分を認めない人がいます。他人の目の無い所でチクチク嫌味やいじわるをしたり、スムーズに運ばないように邪魔をしたりを繰り返し退職に追い込みます。人の居着きが悪い部署は何かしらあるものです。 

「面倒な仕事を押し付ける」

良い仕事をする、優秀と周りも上司も認めている人に対し、「あなたなら大丈夫よね」と無理難題や面倒な仕事を笑顔で押し付けます。「いつもありがとう。期待しているわ。」とのねぎらい(嫌味)の一言も忘れません。重箱の隅をつつく機会を伺っています。表面上だけでは解り難い厄介なケースです。

「お局様の世界」

勤務年数が長く「ベテラン」と言われる女性の中でも役職に見合わない支配力、または支配したい思いが明らかな人をこう呼んでいるケースが多いと思います。仕事の能力はさすがと思える部分を持つ人もいれば勤務年数に全く見合わない人もいるようです。 そして何より上司も敬遠している場合が多く見られるのではないでしょうか。

 

「自分の都合の良いように采配する」

 

自分の好き嫌いで事をすすめたり、自分の苦手な仕事ややりたくないことは若手に回し、思うように進まないと文句を言うような自己中心なやり方に周りは辟易しています。自分が気に入らなければ責め、責任転嫁も見られるのでそれ自体が嫌がらせになりますが、周りが気付いていても注意出来ません。こんな時こそ上司の力の見せどころなのですが…。一見上手く運んでいるように見える仕事でも周りは不満がイッパイの場合もあり要注意なのです。 

「上から目線」

ベテランだけあって仕事のことをよく理解していても後輩に教えるのが下手な人がいます。嫌味っぽく言ってみたり「これくらい知らないの?」と言ったり、恩着せがましく後に引きずるような態度で接します。こういった態度や発言でチームワークを乱し新人は耐えられずストレスが溜まり体調不調に追い込む事もあります。

「お局NO.2」

主導権を握っているように見えるお局様の味方をすることで自分の立場を守ろうとする人間もいます。お局様ほどのキャリアが無くても同一視を望み、偉そうに振舞い周りに気遣いを求めます。気にいらない人をわざと作り上げハラスメントの芽を増やしている可能性が考えられます。 

「お局様に仕立て上げる」

ベテランの先輩をわざとお局様に仕立て上げ、周りに吹聴し陥れることにより自分の立場が上がると考える勘違いする人がいることもあります。

男女の性差でハラスメントを考えることはもうやめにしませんか?

一般的なハラスメント研修の教科書を見るとセクハラの事例紹介は、なぜか「男性から女性」へのセクハラの事例が真っ先に紹介されています。確かに過去の事例においてはこのパターンが圧倒的に多く、今もなお相談窓口に寄せられるために、女性が声をあげにくい状況だからこそまずは優先順からすれば「男性から女性」へのハラスメント問題を取り上げることは重要だと思います。

一方で、次のような実話があります。出張先のホテルで就業後、女性上司から用があると自分の部屋に招いた女性部下に対して、上司はしばらくすると静かに部屋に鍵をかけ、いつのまにか酔いもまわっているその上司は「私の部屋に呼ばれたってことは意味がわかるよね」と、その女性部下に関係を突然迫ったのです・・・・

部下は一瞬に蒼ざめ「意味分かりません!」と無我夢中で逃げたという話です。真っ黒なセクハラであり、懲戒案件です。この話は、同じような状況で、男性同士の事例もあるのです。今後、どのような状況や言葉が起因してハラスメントが生まれてくるのかも正直分かりません。性差を超えた想像もできないセクハラも生まれていることを伝えてはいかがでしょうか?

例えば、先に例を上げた「お局様の話」ですが、読者の方も「このブログがセクハラか?」と感じた人もいるかもしれません。本ブログでは古くから使われてきた「お局」という言葉を意図的に選んで用いていますが、意図的に誰かを非難攻撃する考えも全くありませんが、そのように感じる人もいるということです。

なぜ、このような説明をするかと言うと、「お局様」といったら「セクハラと相談窓口に訴えられた」、「ベテランさん」といったら「セクハラと言われた」、「出来る人」といったら「セクハラと言われた」一体、何と言ったらいいのか?と悩む上司もいました。ベテランという言葉に嫌悪感を持つ人もいるのです。

これからは「〇〇さんと名前で呼ばれたらいかがですか?」と私は伝えましたが、仕事が出来る人を言い表す昔からあった便利な言葉自体が相手によってはNGワードになり、使いふるされた古典的な褒め方のボキャブラリーも変えていかなければならない状況になりました。反対に、同じ言葉を言われても何とも思わない人もいることもこれまた事実なのです。

繰り返しになりますが、どのような状況や言動をもってセクハラと人が感じ「セクハラです!」とコトバにするか分からない時代におけるハラスメント研修において、「NGワード集」や「べからず集」で通り一遍の説明で終わらせることはやめにして、さらに、性差でハラスメントを語ることが難しい時代になっていることも伝えることも重要です。

大事なことは、何がセクハラと言われるかわからない時代だからこそ、会社としてセクハラ問題の組織的な対応方法、どのように自社としてハラスメントのグレーゾーン問題も含めて、真っ黒なセクハラはスピード感をもって厳正に罰すること、絶対にハラスメントを許さないという組織対応の必要性を認識を新たに強くしていくタイミングなのかもしれません。これは今、パワハラも同じことがいえるのです。

藤山晴久

ハラスメント研修企画会議
http://www.harassment.tokyo/#modal-options

◆注目!企業研修プログラム
「今夜つきあうとは、どういうつきあいですか?」
働く女性のための セクハラにNO!といえるスマート対応法
うっかり余計な一言に、上司は顔 真っ赤っ赤
http://www.harassment.tokyo/program/index15.html
◆セミナー情報
2019年4月17日
パワハラ・セクハラグレーゾーン判断力向上セミナー
管理職のモヤモヤが3時間でスッキリ!
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ハラスメント研修の企画のご相談はこちらへ
https://www.impression-ilc.jp/contact/

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を実施してきた。