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パワハラが、認知症のリスクになる!?私たちが〝ポジティブな言葉〟を選ぶべき理由

パワハラはよくない。ポジティブな言葉が大事。そんなことは誰も頭ではわかっています。また「ポジティブ」かよ、そう思った方もいるかもしれません。

暴言や批判的な言葉を浴びせられた人は、心身に大きなダメージを受けることも、あなたもお分りでしょう。しかし、それだけではないのです。

パワハラは、被害者以外の人にとっても悪影響があります。実は、加害者本人にとっても健康上のリスクが大きいのです。今回は、それを裏付ける興味深い研究結果を2つ紹介します。

パワハラ加害者に共通する「ある態度」

ハラスメントの相談を受けていると、パワハラの加害側とされる人の言動には、ある共通点が見られます。

  • 部下を見下す
  • 相手の努力を評価しない
  • 会話が常に否定から始まる
  • 信頼よりも疑いが先に立つ
  • 皮肉や攻撃がコミュニケーションの軸になっている

多くが「誰も信用できない」「今の若いヤツには、どうせできるはずがない」と相手を信用しない人。「だからダメなんだ」「お前は何もわかっていない」などと否定から入る人。あなたの職場にも思い当たる方が実際にいるかもしれません。

【研究①】パワハラをする人は、認知症リスクが約3倍に

フィンランドで、ある研究が行われました。平均年齢71歳の高齢者を対象に「どれほど他者を信用できるか」を調べ、8年以上健康状態を追跡したのです。

「人は利己的だ」「誰かを信頼するのは危険だ」というような態度を、研究者は「シニカル不信(cynical distrust)」と呼びます。

調査の結果、シニカル不信が最も強いグループの人たちは、そうでない人と比べて認知症の発症リスクが約3倍になることがわかりました。

この「不信」は、パワハラ言動そのものである

ここで注目すべきは、この「シニカル不信」という態度が、まさにパワハラ加害者に見られる特徴と重なるということです。

「部下を信用しない」「相手の努力を評価しない」「否定から入る」——これらはすべて、他者への不信から生まれる言動です。つまり、パワハラ言動の根底にある「不信」が、将来の認知症リスクを高めているのです。

なぜ「不信」が認知症につながるのか

その理由は3つあります。

慢性的なストレス状態になる

批判や不信は、脳を戦闘モードにします。コルチゾール(ストレスホルモン)の過剰分泌が、記憶を司る海馬を萎縮させるのです。

孤立しやすい

批判や攻撃ばかりする人の周りからは、人が離れていきます。その結果、人との会話や交流が減り、認知症リスクが高まります。

思考が硬直化する

否定ばかりしていると、脳は柔軟性を失い、新しい考えを受け入れず、変化に対応できなくなります。

相手を信用せず、否定から入る。あたかもパワハラの引き金になるような、そういった言動を続けていると、将来認知症になるリスクが高まってしまうのです。

【研究②】「我慢すればいい」は本当に間違いだった

脳科学が教えてくれたパワハラ言動が脳に残す痕跡

2つ目の研究は、オランダ・ユトレヒト大学の「人は侮辱的な言葉に慣れるのか」を実証したものです。科学が、パワハラ言動の影響を解き明かしたとも読み取れるのです。

この研究では、侮辱的な言葉を提示されたとき、私たちの脳がどのような反応をするかを調べています。具体的には、参加者に3種類の文を9回ずつ提示し、声に出して読んでもらいました。

  • 1種類目は、「〇〇はバカだ」などの侮辱の言葉
  • 2種類目は、「〇〇は天使だ」などのほめ言葉
  • 3種類目は、「〇〇は学生だ」といった中立的な言葉

侮辱の言葉は、わずか0.2秒で脳を直撃する

結果は、驚くべきものでした。

侮辱の言葉が出てきた瞬間、脳はわずか約0.2秒後に、強烈な注意反応を示したのです。言葉は、直接脳に0.2秒という反射領域で届くのです。この反応は中立的な言葉よりも強く、ほめ言葉に比べると圧倒的に強いものでした。

この速さでは、身体が避ける間もないし、構える心の余裕もない。不意打ち以外の何物でもない。ハラスメント研修などで「言葉の暴力」を軽視してはいけない大きな根拠になると私は思います。

言い換えると、「たった0.2秒で届く侮辱に、人は慣れるのか?」という問いに対する1つの明確な答えでしょう。

慣れない。脳が、慣れさせてくれないのです。

だからこそ、私たちは言葉を慎重に使う必要があり、パワハラ言動が蔓延する組織は、ただちに健全性を失っていくのです。

何度繰り返されても、脳は侮辱の言葉に反応し続ける

そして、この反応は9回繰り返しても弱まることはありませんでした。つまり、ネガティブな言葉は、何度繰り返されても慣れることはないのです。

例えば、「バカ」「最低」「クズ」などの言葉は、脳にとって「危険語」として処理され、反射的に注意を引きつけてしまうのです。

脳の構造上、人は「バカ」「最低」「クズ」などの言葉に、”慣れる”ことはないんです。

衝撃の事実:侮辱の言葉は「誰宛か」に関係なく脳にダメージを与える

さらに注目したいのは、侮辱の言葉が「自分に向けられたものか」「他人に向けられたものか」に関わらず、脳波にはほぼ同じ反応が現れたということです。

つまり、脳は、「主語」に関係なく、侮辱の言葉自体に強く反応するのです。

脳科学が解明!職場の誰かのパワハラ言動は働く全員の脳を蝕む

この研究からわかることは、侮辱の言葉は、それをぶつけられた人だけでなく、周りにいる人たちにも悪影響を与えるということです。

たとえば、「上司が部下を怒鳴っているのを聞いている」だけ、「同僚が誰かを強く否定している場にいる」だけでも、嫌な気持ちになるだけではなく、脳にダメージを受けてしまうのです。

侮辱が「自分宛」か「他人宛」かは、脳への反応にほぼ関係ないのです。


「関係ないから」は、もう通用しない

よく職場で、仲がいいことを理由に「バカ、デブ、クソ」とまるで中学生のようにふざけている大人が職場にいます。周囲からみたら、その幼稚な言動に呆れかえるならまだしも、その言動の一つ、ひとつの言葉が、誰の脳に影響を与えているか考えたことはあるでしょうか?

「誰にも迷惑をかけている訳ではないから、関係ない」この言い訳はもう通用しないのです。

この実験から分かるように、「第三者だから傷つかない」という、一般的な前提を完全に否定しています。私たちは、他人への暴言であっても、大なり小なり、脳レベルでは自動的にショックを受けていることを、もっと多くの人は知るべきです。

だから、こそ、職場でのパワハラを本気で撲滅しないと、職場のメンバーの身体に悪影響が出るのです。だから「関係性が大事」と言われるのは理由があり、単なるスローガンではないのです。

そこまで説明しても分からないような幼稚な大人がいる事実と、この実験結果の真実、つまり、**「侮辱は、聞いているだけの第三者にも影響を与えるという事実」**を私たちは、真剣に受け止めなければなりません。

つまり、職場でのパワハラ発言が「第三者の人」のメンタルやパフォーマンスを下げる理由が、脳科学的に説明できる。

「昔は普通だった」も、脳科学の前では無意味

また、定番の「昔はこれくらい普通だった」「厳しい言葉で育てるのが愛なんだ」といった、昭和的な考え方は、脳の反応レベルでは成立しない。

パワハラ言動はどの時代、どの職場風土でも、脳にとって強制的な”危険刺激”でしかないのである。

侮辱する本人の脳も、ダメージを受けている

さらに、侮辱の言葉を発している本人の脳にもダメージを与えるのです。他人を侮辱することで、自分が侮辱されているのと同じ悪影響を受けてしまうのです。

また、ネガティブ思考の人は、ポジティブ思考の人に比べて寿命が平均10年ほど短いという研究もあります。

自分自身のためにも、ポジティブな言葉を選ぼう

だからこそ、私たちはもっとポジティブな言葉を選ぶことが大事ではないでしょうか。

それは、パワハラを防止することが、周囲の人のためになるだけでなく、「健康経営」を会社が本気で謳うならば、自分自身と仲間の健康につながることも知って欲しいと思ったのです。

パワハラは、職場だけではなく、自分の脳も壊すかもしれない。

周りの大切な誰かのために。

批判より信頼を、

攻撃より対話を

少しずつでいい。

その小さな変化が、脳の未来を変えていく。

今日のあなたの言葉が、未来のあなたの脳と、明るい組織の未来をつくる。

そう、ココロのなかで願いながら、今日も講義にでるのです。

参考文献

• Van Berkum, J. J. A., Smit, M., & De Meulder, H. (2022).
Do People Get Used to Insulting Language? Frontiers in Communication, 7, 910023.

• Neuvonen, E., Rusanen, M., Solomon, A., Ngandu, T., Laatikainen, T., Soininen, H., & Tolppanen, A.-M. (2014).
Late-life cynical distrust, risk of incident dementia, and mortality in a population-based cohort.
DeSteno, D., et al. (2014). The Grateful Don’t Cheat: Gratitude as a Fount of Virtue. Psychological Science.

参考図書

『THANKFULNESS 感謝脳』(樺沢紫苑・田代政貴 著/飛鳥新社)

※本稿は、上記の海外学術論文を一次資料として参照し、その知見をもとに筆者の視点で再構成したものである。

なお、ポジティブの言葉の効果や日常での実践方法については、一般向けの解説として上記書籍も参考になる。


不正は、ルールでは止まらない。 「ありがとう」が人の判断を変える理由 -組織の不正を防ぐのは、ルールより「ありがとう」だった

「これくらいならバレないだろう」
「忙しいし、面倒な作業を省いてもいいか」
「評価に関わるから、少しくらい盛っても…」

こうした”小さな不正”が積み重なると、組織の信頼は簡単に失われます。

どうやって人の誠実さを支え、倫理観を育てられるのか。これは長年のテーマであり、経営者にとって、「どうすれば不正を防げるのか」「どうすればエンゲージメントが高まるのか」大きな経営課題のひとつです。

多くの企業が選ぶ対策は、こうです。
・ルールを厳しくする
・監視を強める
・罰則を明確にする

どれも、不正を防ぐために必要な対策です。ただ、それだけでは人の行動が変わらないのもまた現実です。

感謝の気持ちは、不正行為を減らす

そんなとき、ある心理学の論文に出合いました。

アメリカ・ノースイースタン大学のDavid DeStenoらのチームが発表した論文「The Grateful Don’t Cheat: Gratitude as a Fount of Virtue」。

論文のタイトルを直訳すると、「感謝する人はズルをしない」。

その名の通り、驚くほどシンプルで、しかし深い示唆を持っています。

これまでは、感謝というと、助けてもらったらお返しをする、人間関係が円滑になる、といった「返礼行動」の文脈で語られることが多かったと思います。

ところがこの研究では、感謝にはもう一つ重要な働きがあると示されています。

それが、誘惑に負けにくくなる(自己コントロールが高まる) という点です。

不正というのは、多くの場合「悪意」も当然ですが、本当は間違っていると分かっているのに、誘惑に負けてつい手を出したり、自己の利益に流されることから起こることも多いものです。

「これくらい、バレないだろう」

「今回だけならいいか」

「自分だけが損をしている気がする」

そう思ったとき、不正を踏みとどまれるかどうか。その自己コントロール力に、感謝の感情が関わっているのです。
もう少し具体的に見ていきましょう。

実験から見えた、はっきりとした差

研究では、大学生を対象に「ズルをしようと思えばできる状況」を意図的につくりました。

「10分で終わる楽な課題」と、「45分かかる難しい課題」を用意して、どちらをやるかは仮想のコイン投げ装置で「ランダムに決まる」と説明しました。

実は、この装置は必ず45分の課題が出るように細工されています。つまり、短い課題を選んだ人は「ズルをした」ということがわかるのです。

結果は、驚くほど明確でした。

感謝の感情を喚起された人たちの不正率は2% と、ほとんどの人が不正をしなかったのです。

一方で、幸福の気持ちを喚起された人たちの不正率は16%。中立のグループの不正率は、17% でした。

「感謝」も「幸福」もポジティブな感情ですが、幸福感では不正は減りませんでした。これは、私にとって非常に興味深いポイントでした。

匿名の環境でも、感謝は効いていた

さらに研究チームは、オンライン上の匿名環境でも同様の実験を行っています。

顔も名前も分からない、誰にも見られていない状況でも、「感謝」を感じていた人たちは、不正をしにくいことがわかりました。

不正をしないのは、監視されているからではなかったのです。

また、どちらの実験でも、感謝の度合いが高い人ほど、正直に振る舞う確率が高くなることもわかりました。

なぜ感謝が、不正を遠ざけるのか

研究者たちは、感謝が「道徳規範を思い出させる」というトップダウン型の制御ではなく、「価値判断そのものを変える」ボトムアップ型の働きをしている、と説明しています。

感謝を感じている人は、「自分には居場所がある」「自分は支えられている」という意識を持ちます。

すると、「ズルをして得をする」という短絡的なメリットが魅力的に見えなくなり、長期的で倫理的な選択をしやすくなるのです。
これは、ルールで縛るのとはまったく違うアプローチといえますね。

不正が起きやすい組織の空気とは

研究からわかることは、「感謝が根づいた組織では、倫理が自然と底上げされる」 ということです。
不正が起きやすい組織には、共通する空気があります。

・余裕がない
・孤独感がある
・不信感がある
・自己肯定感が低い

こうした状態では、人はどうしても「ズルをして得をしよう」という短期的な判断に流されてしまいがちです。

一方で、お互いに感謝する文化がある組織では次のようなことが起こります。

・人間関係が安定する
・自己コントロールが保たれる
・正直であることのコストが下がる

このような状況で、人は長期的で倫理的な判断をすることができるようになるのです。

つまり、「感謝」→「自己コントロール向上」→「不正が心理的に魅力を失う」 という流れが起きているのです。

これは、罰則や注意喚起のような”外からの監視”ではなく、「本人の内側で価値判断が変わっている」 という点で、ビジネス現場でも非常に重要な意味を持ちます。

つまり、感謝は、”価値判断そのもの”を変える。
・不正のメリットが小さく見える
・正直に振る舞うことが自然に感じられる
・短期的利益より長期的な関係維持の価値が際立つ

という”内的な変化”が起こるのです。
これは、罰則や監視のような「コントロール型アプローチ」とは根本的に異なります。

罰則:「やったらダメだ」
監視:「見られている」
感謝:「ズルする必要がない」

この違いは非常に大きい。

管理や統制ではなく、個人の内部にある”倫理のエンジン”を回す感情。それがどうやら、感謝なんです。

「感謝しよう」のスローガンでは効果は薄い

では、感謝の文化はどのようにつくればいいのでしょうか。

感謝は、制度やスローガンで強制すると、たいてい形骸化します。

「感謝カードを書きなさい」
「『ありがとう』の言葉を言いましょう」

これだけで、感謝の文化が自然に育つとは思えません。

制度やスローガンをつくることよりも大事なのは、一人ひとり(特に管理職の人)が言葉と行動で示すこと だと私は思います。

・上司自身が感謝を(想って)口にする
・上司が部下に具体的な感謝を伝える「習慣」をつくる
・結果だけでなく、過程や姿勢を評価する
・相談や失敗が許される空気をつくる(あえて、心理的安全とか言わない(笑))

ただし、注意点があります。
感謝は”させる”ものではなく、”育つ”もの。

・感謝カードのノルマ化している会社
・感謝表彰の乱発
・感謝を強制する文化

これらは感謝が「業務」となり、全くの逆効果になることは言うまでもありません。

ポイントは、「自然に感謝を感じやすい組織構造」を設計すること。

しかしながら、言うは易く、行うは難し。
時間はかかるかもしれませんが、このような「静かな行動変容」が、お互いに感謝し合う文化をつくっていくのです。

感謝は、最もコストの低い「不正予防策」

組織の不正を防ぐには、もちろんコンプライアンス教育や監査は欠かせません。ただ、それにはコストも手間もかかります。

一方、感謝することは、ほとんどコストがかかりません。それでいて、人の価値判断そのものに作用します。

不正を防ぐだけでなく、組織への帰属意識を高め、離職率を下げる効果があることもわかっています。

組織に感謝の風土をつくることが、これからの倫理施策のスタンダードになっていくと私は思います。

そのためにできることは、まずは、小さなことにも「ありがとう」と感謝することです。

そのときに、ここだけは押さえて欲しいのですが、”ありがとう”ではなく”何にありがとうなのか”を必ず添えることです。

このことで、この「具体性がプラスの感情を生み出す」ことを知っておいてください。

感謝こそが、強い組織をつくる。

感謝は、人を誠実にします。誠実な人は、誘惑に負けにくいため、結果的に不正行為は確実に減少傾向に。

ポジティブな感情の中でも、幸福と感謝はまったく違う働きをします。

幸福:気分が良くなる
感謝:価値判断が変わる(行動が変わる)

この違いを理解したうえで、私たちは組織に「感謝が生まれる仕組み」を浸透させる必要があるのかもしれません。

それは、単なる優しさや道徳ではありません。

組織の信頼性を守り、コンプライアンス意識を高め、長期的に健全な文化をつくるための”科学的な方法”です。

あなたの会社では、今日、誰に感謝を伝えられますか?
その一言が、組織のコンプライアンス意識を高める最初の一歩になるかもしれません。

参考文献(Research)
DeSteno, D., et al. (2014). The Grateful Don’t Cheat: Gratitude as a Fount of Virtue. Psychological Science.
参考図書(Further Reading)

『THANKFULNESS 感謝脳』(樺沢紫苑・田代政貴 著/飛鳥新社)
※本稿は、上記の海外学術論文を一次資料として参照し、その知見をもとに筆者の視点で再構成したものである。
なお、「感謝」の効果や日常での実践方法については、一般向けの解説として上記書籍も参考になる。


「企業風土」が新語・流行語に選ばれた今ハラスメントを生まない組織の“空気づくりとは?東京ステーションホテルに学ぶ、企業風土のつくり方

2025年12月1日、「新語・流行語大賞」が発表されました。

大賞は「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」。

賛否両論あったようですが、私が注目したのは、そこではありません。「企業風土」という言葉が、新語・流行語に取り上げられるくらい関心が高い言葉のひとつとして、ノミネートされていたことに驚いたのです。

なぜ今、「企業風土」なのか

企業風土とは、要するに組織に漂う”空気”のことです。
価値観、考え方、暗黙のルール——目に見えないけれど、確実に人の心と行動を左右するもの。
2025年も(というか、ずっと)、不祥事やハラスメントのニュースが絶えませんでした。
働き方改革、ジェンダー問題、ハラスメント。昔なら「まあそういうもんだよね」で済まされていたことが、今は、職場の枠を飛び越えて、社会全体の問題として注目されています。
つまり、社会全体が「組織の空気を変えなきゃヤバい」という段階に入っている。
だから「企業風土」が流行語になった。そういうことだと、私は勝手に解釈しています。
企業風土とは、組織の土壌です。
職場で日々、どのような意思決定がなされ、どんなコミュニケーションが生まれるのか。そこで働く人たちが毎日どんな想いで働いているのか。
それらすべてを形づくる、目に見えないけれども、組織の空気をつくるものが、企業風土でしょう。

ハラスメントが起きやすい組織の共通点

ハラスメントが起きやすい組織とは、どんな職場でしょうか。
この問いを投げかけると、多くの方が「コミュニケーション不足」を真っ先に挙げます。
たしかにそれも一因です。しかし、厚生労働省の調査(令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」)を見ると、もっと根本にある要因が見えてきます。
ハラスメントを受けた方に、所属する職場の風土を問う質問では、以下のような職場風土が挙げられています。

1 人手不足
2 従業員の年代に偏りがある
3 上司と部下のコミュニケーションが少ない
4 残業が多い/休暇を取りづらい
5 女性管理職比率が低い
6 失敗が許されない
7 ハラスメント防止規定が未整備
8 他部署や外部との交流が少ない
9 業績が低調
10 男性ばかりの職場

この結果から、はっきりと言えることがあります。
ハラスメントを防ぐためには、「働きやすさ」という土壌づくりが欠かせない。
残業が多く、休めず、人手が足りず、日々ギリギリの中で働いていれば、組織の空気はどうしてもギスギスします。
心に余裕がなければ、丁寧なコミュニケーションなどできるはずがありません。
私が企業研修で現場を訪れると、「ハラスメント対策の前に、この労働環境をどうにかしてほしい」という本音をよく耳にします。
ハラスメント問題には、労働環境の問題も起因しており、社員個々の意識改革と同時に、本気で組織が変わらなければ、人の意識は変わりません。

東京ステーションホテルに学ぶ、組織の空気と企業風土のつくり方

では、具体的にどうすれば「よい企業風土」は育まれるのか。

そのヒントを教えてくれるのが、『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』という本でした。

東京ステーションホテルは、110年の歴史を持つ小規模ながらファンの多い名門ホテルです。

一般的なホテルのリピーター率は10~30%。でも、このホテルは平均約40%。多い月は60%を超えるそうです。

なぜか?

私は、スタッフ一人ひとりの高いホスピタリティを生む企業風土にあると思います。

本書では、ホテルで働く11人のスタッフの声が紹介されています。そこには、「よい企業風土ってどう育まれるのか」を知るヒントが詰まっていました。
昔から、CSやホスピタリティの観点から、外資系ホテルやアミューズメントパークの舞台裏を取り上げた本は沢山ありました。しかし、日系のホテルで、しかも東京駅の中にあるという非常に特殊なホテルを取り上げている点が大変気になったのです。
読み進めるうちに、働きやすい職場をつくるためのヒントがエピソードとともにちりばめられており、是非、このブログの読者の皆さんにも読んで欲しくなり、いくつか大切だと思うエピソードをご紹介させてください。
そして、それらのエピソードは大きく2つに分けられることに気づきました。

「理念」と「環境」——この両輪があってこそ、企業風土は育まれるのです。

【理念編】組織の「核」をつくる

まず「北極星」を決める

東京ステーションホテルがある東京駅丸の内駅舎は、2003年に重要文化財に指定され、2007年から5年間かけて大規模な保存・復原工事が行われました。
工事中は休業。再開業する際に、総支配人の藤崎斉氏が開業メンバーと一緒に決めたのが、「北極星」となるビジョンです。

「この先の100年も、東京の中心で輝き続け、語り継がれるホテルであろう。
先人たちの積み重ねと、このヘリテージに感謝して」
迷ったときに立ち戻れる”言葉”をチームでつくる。
これこそが、企業風土の「核」になるんです。

「江戸城を造ったのは誰ですか」

ホテルの再開業にあたり、総支配人の藤崎斉氏は、工事に携わった数百人の職人さんたちにも、それぞれの思いを書いてもらうことにしました。

なぜか?

彼らもまた、このホテルの歴史をつくる当事者だからです。この建物に関わったすべての人の思いを、形として残したかった。
ところが、最初は反応がなかったそうです。
職人さんたちは黙々と仕事をする方が多く、「自分たちの思いなんて」と遠慮していたのかもしれません。
そこで藤崎氏は、ある朝礼でこう語りかけました。
「江戸城を造ったのは、太田道灌でも徳川家康でもない。数多くの大工さんたちです。
東京駅をつくっているのは、あなたたちです」

この言葉に、職人さんたちの空気が変わったといいます。
歴史に名を残すのは、指示を出した殿様でも将軍でもない。この手で石を積み、木を削り、実際に形をつくった職人たちこそが、真の作り手なんだ——そう認められたとき、職人さんたちは初めて「自分もこの歴史の一部なんだ」と実感できたのでしょう。
自分の仕事が歴史の一部になる——そのことに気づくと、人は誇りを持って働けるようになります。
組織の空気が変わる瞬間とは、こういう”意味づけ”が生まれたときなんだと思います。

このとき、職人さんたちが書いたメッセージの一部は、今もホームページで公開されています。

ぬいぐるみのためのオレンジジュース

もうひとつ印象的だったのが、結婚式のエピソード。
新婦が「昔からずっと一緒にいるから」と、ぬいぐるみを席に置きたいと依頼したとき。
スタッフはぬいぐるみの前にオレンジジュースをそっとサーブしたのです。
誰かに言われたわけじゃありません。マニュアルにも載っていません。
「ぬいぐるみは家族の一員です」——その一言を受け取ったスタッフが、自分で考えて、行動した。

私はここに、企業風土の本質を見ます。
“自分で考えて動ける”人が育つ土壌。これは、命令やルールでは絶対に生まれません。

“Our Promise”という行動指針

同ホテルには、マニュアルとは別に「Our Promise」という行動指針があり、研修でもよく話し合うそうです。
ポイントは、「正解を教える」のではなく、「自分はどう行動するべきか」を自分で考える機会をつくること。

これ、ハラスメント対策でもまったく同じなんですよね。
ルールをつくって終わりでは、ハラスメント体質の風土は変わりません。
社員一人ひとりが「自分ごと」として捉え、能動的に動ける環境をつくれるかどうか。
言い換えると、周囲にパワハラをする人がいたときに、傍観者にならず、「自分だったらどう行動するべきか」をいざ、という時に備えて平時から考えておくこと。しかも、1人で考えるのではなく、仲間と共有しておくことが大切です。

【環境編】理念を支える働きやすさ

しかし、どんなに美しい理念があっても、それを実践できる「環境」がなければ絵に描いた餅です。
東京ステーションホテルが素晴らしいのは、理念を支える「働きやすい環境」が徹底的に整備されている点です。

仕事への敬意を、形にする

同ホテルでは、清掃スタッフを敬意を込めて「アテンダント」と呼びます。
中には、定年まで勤め、その後もシニア雇用で活躍するベテランスタッフもいるそうです。
ハウスキーピングは時間との戦いになりがちですが、同ホテルではシーツの交換だけを担当するスタッフを配置することで、アテンダントが丁寧に清掃できる仕組みを整えています。

また、作業ワゴンを廊下に置かないというルールをあえて設けています。重要文化財である駅舎の雰囲気を壊さないためです。効率より、価値を優先する。その判断が、スタッフの誇りをさらに高めているのだと感じました。

働く環境そのものへの投資

本書を読んで驚いたのは、バックヤードまで美しく整えられているという点です。
「水平・直角・並行・垂直」という原則を徹底し、スタッフ食堂には絵画が飾られ、エスプレッソマシンは使い放題。従業員食堂の入口には、宿泊客からのグッドコメントがずらりと貼られているそうです。

制服はすべてセミオーダー。チームワークを重視するあまり、「仲良くできない料理人は採用しない」と明言しているほどです。
こうした環境づくりは、一見すると「コストがかかる」と思われるかもしれません。

しかし、私がハラスメント研修で多くの企業を見てきた経験から言えるのは、働く環境への投資こそが、最も効果的なハラスメント防止策だということです。
余裕のない職場では、どんなに研修を重ねても、人の心は変わりません。

逆に、「自分は大切にされている」と実感できる環境があれば、人は自然と他者を大切にするようになります。

詳しいエピソードは、ぜひ本書を読んでいただきたいのですが、東京ステーションホテルの取り組みから学べることは、どの組織にも応用可能だと思います。

企業風土は「理念」と「環境」の両輪でつくられる

東京ステーションホテルの事例から見えてくるのは、企業風土は「理念」だけでも「環境」だけでもつくれないということです。
「北極星」のようなビジョンがあっても、人手不足で余裕がなければ、スタッフは自発的に動けません。
逆に、どんなに労働環境が整っていても、「何のために働くのか」という意味づけがなければ、人は誇りを持てません。

理念が「心」なら、環境は「体」。

両方が健全であってこそ、人は気持ちよく働き、自発的に動き、組織の空気は良くなっていくのです。
人手不足、長時間労働、休めない環境――こうした土壌を放置したまま、「コミュニケーションを大切にしましょう」というスローガンを掲げても、現場には響きません。

まずは、働きやすい環境をつくること。

そして、働く意味を共有すること。

企業風土とは、一人ひとりの小さな選択と行動の積み重ねでつくられるもの、そしてその積み重ねこそが、ハラスメントのない、働きやすい職場をつくることにつながることだと、読後、改めて感じました。

『東京ステーションホテル 100年先のおもてなしへ』(上阪徹著、河出書房新書)、みなさんもぜひ読んでみてください。

https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309254968/

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を実施してきた。立教大学経済学部卒。

「牛乳買ってきて」「資料作っといて」で 伝わると思ってる人たち 。 家庭の「もやもや」は、職場で「も」起きている

 先日、愛媛県企画振興部 男女参画課が発行している「これからの家事シェアスタイルブック」という冊子を目にする機会がありました。この冊子では、夫婦で家事を「分担」するのではなく「シェア」するためのヒントが掲載されています。
今回、なぜこの冊子を取り上げたのか?
紹介されている家庭の「もやもや」が、職場の上司と部下の関係にそっくりだからです。

家庭では
「期待した通りのことをしてくれない」
「せっかくやったのに、ダメ出しをされる」
「言われなくてもわかるだろう、と言われる」

職場では
「指示した通りにやってくれない」
「部下の仕事に何度もやり直しをさせる」
「これくらい察しろよ、と思ってしまう」

似ていますよね(笑)
こうした行き違いの多くは「言葉によるコミュニケーション不足」が原因です。そして、職場でこれが続くと、パワハラにつながったり、部下のモチベーションを下げたりする危険性があります。
家庭でのコミュニケーションに悩んでいる方は、ぜひこのスタイルブックを読んでみてください。職場でのパワハラ防止や部下育成にも応用できるヒントがたくさん詰まっています。

シャンプー補充してくれてる人、知ってますか?

気づいた人だけが負担を抱える構造

「名もなき家事」という言葉を聞いたことがありますか。
「掃除」「洗濯」「調理」などのいわゆる「名のある家事」ではないけれど、日々の生活に必要不可欠な細かい家事のことです。
「ポストから郵便物を取り出して分ける」 「トイレットペーパーがなくなったら取り換える」 「洗剤を詰め替える」
一つひとつの作業はそれほど時間も手間もかからないけれど、積み重なると1日でも膨大な量になります。
「そういえば、なくなりかけていたシャンプーがいつの間にか補充されている」
と思っている人は、誰がやってくれたのかを想像してみてください。詰替え用のシャンプーを買ってきて、空になった容器を洗って乾かし、こぼさないように補充するのは、意外と手間のかかる作業です。

職場にもある「名もなき仕事」—似ていますよね

「名もなき仕事」は、職場にもあります。
「コピー用紙を補充する」 「会議室のセッティングをする」 「電話をとる」 「議事録を作成する」
こういう仕事は、「気づいた人」がいつの間にかやってくれていたり、「若手社員など」がやるという暗黙のルールがある職場もいまだにあるようです。
家庭でも職場でも、構図は同じです。何が問題かというと、気づかないうちに特定の人が「名もなき仕事」に忙殺されてしまったり、「どうして私ばかり…」と不満を抱えたりすることです。
部下育成の観点からも、これは問題です。若手や特定の人だけに雑務が集中すると、本来やるべき成長につながる仕事に時間を使えなくなってしまいます。

リストアップして「見える化」する

愛媛県の『これからの家事シェアスタイルブック』では、「名もなき家事」への対策が紹介されています。
一つひとつの作業をリストアップして、現状、誰がやっているのか、これからは誰がやるのかを明確にするというものです。
実際にリストにしてみると、「毎日、こんなにたくさんの作業をやっているのか」と驚かされるはずです。

「察しろ」 「言わなくてもわかる」って、テレパシーではない

非言語コミュニケーションへの過信

「名もなき家事」や「名もなき仕事」を引き受けているのは、いわゆる「よく気がつく人」です。
家庭でも職場でも、言われる前に求められていることを察して行動できる、「非言語コミュニケーション」が得意な人は、「気がきく」「機転がいい」と評価され、頼りにされているのではないでしょうか。
私たちの社会では、「非言語コミュニケーション」が重視されがちです。
「以心伝心」や「阿吽の呼吸」は、ポジティブな意味で使われますし、大切な人とは「言葉にしなくてもわかり合える」「目と目で通じ合える」関係でありたいと思っている人は多いのではないでしょうか。
しかし、非言語コミュニケーションは誤解を生み、トラブルの元になります。
家庭では: 「それくらい言わなくてもわかるでしょ」
職場では: 「これくらい察しろよ」
という行き違いの多くが、言葉を使ってわかりやすく伝えていないことが原因で起こります。
特に職場では、これがパワハラにつながる危険性があります。

建設現場で炊き込みご飯を買ったら、めちゃくちゃ怒られた話

私が学生の頃の苦い思い出をご紹介します。
学生の頃、ビルの建設現場でアルバイトをしていたことがあります。
ある日、現場監督に呼ばれた私は、現金を渡されてこう言われました。
「弁当買ってこい、10人分、うまいのをな!」
まだスマホのない時代です。私は、知らない街を汗だくになって歩き回って、お弁当屋さんを探しました。ようやく見つけたお店でから揚げ弁当や幕の内弁当を選んでいると、お店の人が「今日は、炊き込みご飯がおいしいよ」と声をかけてくれたので、半分は炊き込みご飯にしました。
お昼休み、お弁当を配り終わったところへ怒号が浴びせられました。
「おい!なんで白飯じゃねえんだよ、それくらい言われなくてもわかるだろう、ふざけるな!」
当時19歳だった私は泣きそうな気持をこらえながら、自分の分のお弁当をかき込みました。ドキドキして味はわかりませんでした。午後の仕事が始まる前に、また現場監督が近づいてきたときは「もうダメだ、帰ろう」と思いましたが、現場監督が次のように一言。

「うめえじゃねえか、炊き込みご飯」

その言葉に、ホッとしたことを今でも、ありありと思い出します。
今となってはノスタルジックな思い出です。しかし、指示もしないで「言われなくてもわかるだろう」とダメ出しをする行為は、今ならパワハラと捉えかねません。
職場には、さまざまな人が集まっています。世代も違えば、それぞれに持っているバックグラウンドも違います。「以心伝心」や「暗黙のルール」は通用しません。
わかりやすい言葉を使い、言葉だけでは伝わりにくい場合は写真や動画を使って、相手に誤解のないように伝える必要があるときも。
これは、パワハラを防ぐためだけでなく、部下を適切に育成するためにも不可欠なことです。

家庭も職場もうまくいく5つの「伝え方」 5つのコツ

ここからは、この冊子で紹介されている事例をもとに、家庭でも職場でもうまくいくコミュニケーションのコツをご紹介します。それぞれが、パワハラ防止と部下育成にどう役立つかも解説します。

1.牛乳買ってきて」で揉める理由
—指示は、わかりやすく具体的に

【家庭の事例】 「買い物を頼んだら、想定外のものを買ってくる。」
これは、冊子に載っている事例です。

「牛乳買ってきて」と頼んだら、夫が普段家で飲んでいるのと違う銘柄の牛乳を買ってくるといったケースですね。妻にしてみれば、「いつも飲んでいるんだから、わざわざ言わなくてもわかるはず」と思うでしょうし、夫にしてみれば、「銘柄を指定してくれないとわからないよ」と言いたくなりますよね。
冊子に載っているアドバイスは、「買い物の内容を具体的に伝える」というもの。牛乳なら銘柄を指定したり、「特濃とか低脂肪とかではないもの。1ℓ230円以内で」と価格帯を伝えたりします。
「説明が難しいときは、写真を送るのも効果的」で、頼まれた側に対しては、指定のものがないときは相談するといい、とアドバイスをしています。
指示する側は、「わざわざ説明しなくても、これくらいわかるだろう」という目論見は捨てましょう。
「資料作っといて」ではなく、 「明日の会議用に、A4で3ページ以内、先月の売上データをグラフにまとめて、15時までに」というように、具体的に伝えることが大切です。
曖昧な指示で失敗させておいて「なんでできないんだ」と叱責するのは、典型的なパワハラの構図です。具体的な指示は、この構図を防ぎます。
明確な指示は、部下が何を期待されているかを理解し、自信を持って取り組める環境を作ります。成功体験を積み重ねることが、成長につながります。

2. 「あなたが洗うと二度手間だ」なんて言われたら落ち込む

—仕事を任せたら「ダメ出し」はしない
【家庭の事例】 冊子には、こんな事例も載っています。せっかく食器を洗ったのに、パートナーに「二度手間だ」などと言われたら、「だったらもうやらないよ」とやる気を失ってしまいますよね。
冊子には、食器の洗い方について「双方が納得できる着地点を共有する」というアドバイスが紹介されています。
確かに、家事に「正解」はなく、「どこまできれいにしたいか」という基準は人によって異なります。「洗剤を使うか使わないか」「布巾で拭くか、自然乾燥か」などの手順をすり合わせ、お互いの着地点を共有することで、行き違いを防ぐことができます。
職場でも同じです。 「任せると決めたら、ダメ出しはしない」ということが重要です。
職場で上司に「任せるよ」と言われて取り組んでいる仕事に、途中であれこれ口を出されたり、あとからダメ出しをされたりしたら、やる気が失せてしまいますよね。
ある人が、上司に任された仕事を仕上げて提出したら、何度もダメ出しをされて、上司が気に入るものができるまでやり直しをさせられたそうです。
「これでは、上司に答え合わせをされているようなもの」と彼はこぼしていました。
任せておきながら執拗にダメ出しを繰り返す行為は、精神的な攻撃としてパワハラと認定される可能性があります。事前に基準をすり合わせることで、これを防げます。
任せられた仕事を自分の判断で進められることは、部下の自律性と責任感を育てます。失敗から学ぶ機会も、成長には不可欠です。

3. 「作ってと言うから作っているのに、あれこれ文句を言われる」
—ネガティブなフィードバックこそ 「その場で、短く」


【家庭の事例】 料理を作ってもらっておきながら文句を言うなんて、とんでもないと思いますが、まだまだこういう夫がいるとのこと。しかも、多くの場合は悪気はなく、「もっと料理がうまくなるように、オレが言ってやらないと」と使命感を抱いていたりするようで・・・・
冊子では、「『どうしたらおいしくなるか』提案してもらう」というアドバイスが紹介されています。
確かに、家庭でも職場でも、よりよいものを作るためにはフィードバックは必要です。ただし、相手に「文句」や「ダメ出し」と受け取られてしまっては意味がありません。
ネガティブなフィードバックは、「その場で短く」伝えるのがポイントです。時間がたってからくどくどと言われても、心に響きませんよね。注意やダメ出しは、つい話が長くなりがちですが、できるだけ短く伝え、引きずらないようにしましょう。
ネガティブなフィードバックをした後は、その場で「おつかれさま」「がんばったね」とフォローすることも大切です。
長時間の叱責や、過去の失敗を蒸し返すような行為は、パワハラになり得ます。「その場で、短く」は、これを防ぐ鉄則です。
タイムリーなフィードバックは、部下が何を改善すべきかを明確に理解し、次に活かすことができます。フォローの言葉は、心理的安全性を保ちます。

4. 食器を洗っても 「ありがとう」がない!? 汚れがあれば 「ちゃんと洗って!」  —まず、してくれたことに感謝する

【家庭でも職場でも】 ポジティブなフィードバックは、その場でこまめにすると効果的です。
簡単なことのようですが、「気軽にほめること」が苦手な上司は意外と多いです。「機会があったらほめてやろう」などと思っているうちに忘れてしまって、気づくとダメ出しばかりしている…という人、いますよね。
家庭でも、パートナーが洗濯物をたたんでくれたときに「ありがとう」と言えず、汚れが落ちていないときだけ「ちゃんと洗って」と言ってしまう…似ていませんか。
「助かったよ」 「いいアイディアだね」 「がんばっているね」
など、思いついたらその場で伝えるのがいちばんです。「今度、ゆっくりほめてやろう」と思っていると、たいてい忘れます。
ポジティブなコミュニケーションが日常的にあることで、職場の雰囲気が良くなり、パワハラが起きにくい環境になります。
こまめな承認は、部下のモチベーションを高め、「もっと頑張ろう」という意欲を引き出します。承認欲求が満たされることは、成長の大きな原動力です。

5. 「今日どうだった?」と聞いておきながら、自分の話ばかりしてしまう人
—自分が話し過ぎず、相手に話してもらう


【家庭でも職場でも】 たとえば、せっかく定期的にone on oneで話す機会を作っているのに、自分のことばかり話してしまう上司は意外と多いです。できるだけ相手に話させるように心がけましょう。
家庭でも、「今日どうだった?」と聞いておきながら、自分の話ばかりしてしまうことはありませんか。相手の話をじっくり聞く姿勢が、コミュニケーションを深めます。
一方的に話し続ける、相手の話を遮るといった行為も、精神的な圧迫になり得ます。傾聴の姿勢は、対等な関係性を示します。
自分の考えを言語化する機会は、部下の思考力を鍛えます。また、上司に話を聞いてもらえたという経験は、信頼関係を築き、部下の心理的安全性を高めます。

おわりに
「以心伝心」は言葉があってこそ—職場も家庭も、言葉で築く良い関係

とはいえ、実際には「言葉にしなくても伝わる」ことはあります。
普段からよく会話をしている夫婦なら、「今週末は、彼女(彼)は家でゆっくり過ごしたいかもしれないな」と相手の気持ちを察することができる場合もあります。職場でも、いつもよく話し合いをしている上司と部下なら、「上司はA案よりB案を推しているな」という意向を予測できることもあるでしょう。
「以心伝心」は、普段から言葉によるコミュニケーションを多くとっているからこそ成立します。
テレパシーではないのですから、普段からろくに会話をしていない相手の気持ちがわかるはずがありません。
こうして考えてみると、家庭でも職場でも、仕事をシェアする上で大切なのはやっぱり「言葉によるコミュニケーション」だということがわかります。言葉によるコミュニケーションを増やすことが、お互いの理解を深め、よい関係を築く第一歩です。
家庭でも職場でも、ご紹介したポイントを、ぜひみなさんも意識してみてください。
パワハラのない職場、何よりも円満な家庭のために


参考資料: 愛媛県企画振興部 男女参画課 発行「これからの家事シェアスタイルブック」 URL
https://www.pref.ehime.jp/page/97885.html

「100万回死んだねこ」で本を探したら、図書館員に笑われた話 ― その裏にある、職場の”あるある”問題

「すみません、『100万回死んだねこ』ってありますか?」
図書館のカウンターで、そう尋ねた利用者がいたそうです。
正しくは『100万回生きたねこ』。
でも、この”覚え違い”、めちゃくちゃわかりませんか?

福井県立図書館が記録した「覚え違いタイトル集」が最高すぎる

『100万回 死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県立図書館 編/講談社文庫)


この本、図書館カウンターで日々繰り広げられる”うろ覚えタイトル”との格闘を、愛情込めてまとめたものなんです。

他にも:
• 『おい桐島、お前部活やめるのか?』→ 正解:『桐島、部活やめるってよ』
• 『渋谷に朝帰り』→ 正解:『渋谷に里帰り』

どれも惜しい! けど、なんかわかる!(笑)

福井県立図書館の職員さんたちは、こうした覚え違いを「おもっしぇー!」
(福井弁で”おもしろい”)と笑いながら、丁寧に対応してきたそうです。

バカにするでもなく、見下すでもなく。ただ一緒に笑って、正解にたどり着く。
この姿勢、実は職場の人間関係にめちゃくちゃ必要なやつじゃないですか?

「思い込み」は、誰にでもある

タイトルの覚え違いも、仕事での勘違いも、根っこは同じ。

人は誰しも、自分では気づかない”思い込み”をしてしまう生き物なんです。

心理学では、これを「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」と呼びます。

「こうに決まってる」「普通はこうだ」――そんな無意識の決めつけが、人間関係のすれ違いや、ハラスメントの引き金になってしまうんです。

職場に潜む”思い込み”、あなたも言ってない?

たとえば、こんなセリフ。

• 「電話は若手が真っ先にとるべき」
• 「雑用や飲み会の幹事は、若手の仕事」
• 「子育て中の社員には、海外出張は任せられない」

悪気はないんです。それぞれに理由もある。

でも、この“決めつけ”が積み重なると、相手を傷つけたり、組織の活力を奪ったりするんですよね。

無意識の思い込み、4つのパターン


私の経験上、職場でトラブルを生む「思い込み」には、だいたい4つのパターンがあります

「普通はこうだ」「当たり前だ」 ― 価値観の決めつけ

「どうせできない」「無理だろう」 ― 能力への決めつけ

「そんなはずはない」 ― 解釈の決めつけ

「こうあるべき」 ― 理想の決めつけ

こうした決めつけが重なると、知らず知らずのうちに相手の可能性を狭めてしまうんです。

正解にたどり着くには、”対話”しかない

福井県立図書館の職員さんたちが素晴らしいのは、覚え違いを笑い飛ばすだけじゃなく、「丁寧な対話」を通じて正解を導き出していること。

「『100万回死んだねこ』という本ありますか?」と聞かれたら

「著者はわかりますか?」

「どこで知りましたか?」

「どんな内容でしたか?」

そうやって、少しずつ“本当に探している本”にたどり着く

これ、職場でも全く同じじゃないですか?

「子育て中の社員に海外出張は無理だろう」と決めつける前に、
「出張について、どう考えてる?」と聞いてみる。

すると

• 「今は難しいです」と答える人もいれば、
• 「家族の協力体制が整っているから問題ありません」と言う人もいる。

人の事情も考え方も、聞いてみなければわからないんです。

“思い込み”を責めるんじゃなくて、気づくこと

アンコンシャス・バイアスは、誰にでもあります。

それを”悪”と決めつけるんじゃなくて、
「自分の中にも思い込みがあるかもしれない」と気づくことが大切。

相手との対話の中で、自分の思い込みに気づき、
「あ、そう考える人もいるんだ」と受け止める。

その姿勢こそ、ハラスメントを減らし、職場の信頼関係を強くする第一歩だと思います。

“おもっしぇー”心を、職場にも

覚え違いを「おもっしぇー」と笑いながら、そこに人間の温かさを見いだす。

バカにしない。見下さない。一緒に笑って、正解を探す。

人は思い込みを持つ生き物。
だからこそ、笑いながら、学びながら、互いに理解し合う。

その積み重ねが、信頼と安心の職場文化をつくっていくんだと思います。


本書の最後には、こんな一文。

そして、今回ご紹介した本を探すときはぜひご注意を。
「『100万回死んだねこ』ありますか?」と聞くと、児童書コーナーに案内されるかもしれません。

私も気を付けたいと思います。

なぜ若手社員は上司への不満を「パワハラ」という言葉で訴えるのか? ―文化庁による調査が明かす、世代間の〝言葉ギャップ〟

「ちょっと注意しただけでパワハラ」は本当か?

「最近の若手は、少し厳しく言うとすぐ『パワハラですよ』と反論してくる」
こんな嘆きを、管理職の方々から頻繁に耳にします。一方で、若手社員は「上司の指導のしかたに問題がある」と感じている。この“感じ方の差”が、現場の摩擦を大きくしているのは間違いありません。このような溝は、なぜ生まれるのでしょうか。

文化庁が実施した、令和6年度「国語に関する世論調査」から、興味深い事実が浮かび上がってきました。若手が「パワハラ」という言葉を使う背景には、言葉に対する感覚そのものが世代によって大きく異なるという構造があったのです。

データが示す若手世代の言葉感覚

文化庁の調査では、「SNSの普及によって、社会で使われる文字や語句、また、社会における言葉の使い方に影響があると思いますか」という問いに、約9割の人が「影響があると思う」と答えています。

その中でも私が注目したのは、20代の人の言葉への意識です。
「誤解を招くような言葉がよく使われている」と答えた人は、全体で49.3%だったのに対して、20代では63.2%。また、「相手の立場を考えないやり取りがよく行われている」と答えた人は、全体で57.3%、20代では65.0%にのぼります。

「あなたがSNSを利用するとしたら、そこでのコミュニケーションの質を高めるために、あなたはどのような点に気を付けたいと思いますか」という問いへの回答にも、20代の意識の高さは表れています。

「誤解を招くような言葉を使わない」と答えた人が全体で67.3%だったのに対して、20代は74.4%。
「発信する前に十分に内容を吟味する」は、全体で62.9%、20代は67.1%。
「相手の立場に立ってやり取りする」は、全体で58.9%、20代は65.0%。

つまり、20代の若手世代は、言葉の「正確性」「吟味」「配慮」を極めて重視していることがわかります。

上司世代との決定的な認識ギャップ

さらに興味深いのは、世代によって「SNSの普及が、社会における言葉の使い方に及ぼす影響」の捉え方が異なることです。

例えば、60代、70代では76%以上の人が「短い言葉でのやり取りが増える」と回答していますが、若手世代は、既にSNSでの短文コミュニケーションに慣れています。20代以下の人の半数以上が「書くときも話し言葉のような言葉遣いが増える」と回答していることからもわかるように、カジュアルな言葉遣いは、既に標準になっています。

60代、70代の約50%は、「年齢や立場などを気にしない言葉遣いが増える」と回答していますが、20代はその半分の24.9%に過ぎません。上司世代には「礼儀がなっていない」と映る言葉遣いが、若手にとっては「フラット」で当たり前のコミュニケーションスタイルなのです。世代間に言葉に対する認識のギャップがあるのは、無理もないといえるでしょう。
「上司世代には若手の言葉遣いが礼儀を欠いているように見え、若手世代には上司の言葉が配慮に欠けているように見える――この認識のズレが、職場の誤解を生んでいます。」

「雑な指導」が許せない本当の理由

では、なぜ若手社員は、上司の指導を「パワハラ」と感じるのでしょうか。

今の20代の人たちは、学校教育やSNSの影響で『相手を尊重するコミュニケーション』を意識する機会が多い世代です。
この調査からもわかるように、SNSを利用する際は、「よく吟味して」、「誤解を招く言葉を避け」、「相手の立場を考える」ことを心がけています。

ところが、50代、60代の上司には「昔ながらの叱り方」をする人たちが少なくありません。若手社員にとって、上司の旧態依然の指導は次のように受け取れるのです。

説明不足で感情的な叱責 = 「十分に吟味されていない言葉」
一方的な決めつけ = 「誤解を招く言葉」
背景を聞かずに叱る = 「相手の立場を考えないやり取り」

これらはすべて、SNSで自分たちが「問題だ」と認識している言葉の使い方そのものです。

20代の会社員と話していると、彼らはよくこう言います。「上司から叱られたくないわけではありません」と。むしろ「成果のために必要な指摘は受けたい」。ただ、「叱られ慣れていないので、メンタル耐性が弱い」と自覚しつつ、「雑な指導」を受け入れることができないのです。

「パワハラですよ」は反発ではなく、訴え!?

上司の「昔ながらの叱り方」——大声で叱る、人前で叱るといった言動は、若手社員には、「攻撃的で配慮に欠ける、不適切なコミュニケーション」と映っているのではないでしょうか?
「パワハラですよ」という言葉は、単なる反発ではありません。「この指導は不適切です」という訴えなのです。

調査では、「SNSによるコミュニケーションの質を社会全体で高めていく上での課題」として、全体の62.7%が「人を傷つけたり挑発したりするような言葉がよく使われている」ことを挙げています。特に20代は74.4%、30代は73.0%にのぼります。ここから推測できることは、この世代の人たちは、SNSで自分たちが気をつけている言葉の配慮を、職場でも同じように求めていると私は思います。

若手社員は「叱られたくない」のではない

若手社員は「叱られたくない」のではなく、「雑に扱われたくない」のです。SNS時代を生きる若手世代にとって、「吟味」「配慮」「正確さ」は、言葉を使う上で当然の基準です。一方、上司世代では、「言いたいことを言う」「思ったことを伝える」ことが優先されてきました。

この基準の違いを理解せず、「最近の若者は打たれ弱い」「すぐパワハラと言う」と片付けてしまえば、溝は深まるばかりです。

指導者に求められる「アップデート」とは

では、「パワハラ」と訴えられないようにするには、どうすればいいのでしょうか。
答えは、「若手世代が自分たちに課している基準を、上司自身もクリアすること」です。

具体的には、次のことを実践します。

1.「発信する前に十分に吟味する」
叱る前にいったん立ち止まり、自分が感情的になっていないか確認します。AIに壁打ちしてから指導するのも有効です。

2.「誤解を招く言葉を使わない」
「ちゃんとやれ」「しっかりしろ」といった曖昧な表現を避け、具体的に何がどう問題なのかをわかりやすく伝えます。

3.「相手の立場に立ってやり取りする」
例えば部下がミスをしたときは、なぜそのミスが起きたのか、背景や事情を聞きます。「困る部下は、困っている部下」という視点を持ちましょう。

4.「存在を認めて、行動を正す」
「よく頑張っているね」と相手を認めた上で、「ここは変えていこう」と伝えます。人格ではなく行動にフォーカスし、次の具体行動を一緒に決める。

求められているのは、指導する側の「アップデート」です。言葉の基準が変わったことを認識し、若手世代が当たり前だと思っている配慮を、上司自身も実践する。それが、パワハラと言われない指導への第一歩なのです。

パワハラ上司は野菜不足!?

 最近、おもしろい本を読みました。内藤誼人さんの『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』という本です。スタンフォード、ハーバード、イェールといった大学の心理学研究をわかりやすくまとめた一冊で、人を理解するうえで、非常に参考になる内容です。

その中で、特に印象に残った研究があります。 それは、「キレやすいのは栄養不足が原因」というものです。

栄養が足りないと、人は攻撃的になる?

 イギリス・サリー大学の研究者ベルナルド・ゲッシュ氏が行なった実験があります。囚人231人を2つのグループに分け、半数には栄養バランスのとれたサプリメントを、もう半数には「サプリメント」と偽って、何の栄養もない錠剤を142日間飲んでもらいました。

すると驚くべきことに、栄養を補ったグループでは「暴力」や「命令への不服従」といった行動が35.1%減少したのです。一方、栄養を補わなかったグループでは、わずか6.7%しか減らなかったそうです。

つまり、きちんと栄養をとることで、人の気持ちは穏やかになるということ。 逆に、栄養が不足していると、イライラしたり、攻撃的になったりする可能性があるということです。

「パワハラ上司」が生まれる理由は食生活の乱れ!?

  私たちの会社でも、ハラスメント研修を行う中で、「なぜ人は他人にきつく当たってしまうのか」という根本的なテーマをよく話します。 もちろん、その方の性格も関係しますが、一方で、「食生活の乱れ」が潜んでいるかもしれません。

 「なんだか最近イライラするな」と感じたとき、あなたはどうしていますか? 原因を部下や職場のせいにする前に、まずは「自分の栄養状態を見直す」ことも大切です。ビタミンやミネラルを含む野菜や果物をしっかり摂ることで、思考が穏やかになり、人への対応に余裕が生まれるようなんです。

イライラしている人ほど、野菜を食べない

  書籍によると、おもしろいことに、コーネル大学とリーズ大学の研究では、ストレスが多い人ほど野菜やフルーツの摂取量が少ないという結果も出ています。
つまり、イライラしているときほど、つい甘いものや脂っこい食事に手を伸ばしてしまう。けれど、それがまた心を不安定にして、イライラしやすくなる。まさに悪循環です。

「じゃあ、何を食べればいいの?」

 栄養に関する情報はたくさんありますが、研究で効果が確認されているのは、ビタミンやミネラルなどの栄養素です。特に以下のような食材を意識して摂ることがおすすめです。
 

◎ 緑黄色野菜 ほうれん草、ブロッコリー、にんじんなど。ビタミンB群やマグネシウムが豊富で、神経の働きを整えてくれます。

◎ 果物 バナナ、りんご、ベリー類など。ビタミンCやカリウムが、ストレス対策に役立ちます。
◎ ナッツ類 アーモンドやくるみ。マグネシウムや良質な脂質が心を落ち着かせます。
◎ 青魚 サバ、イワシなど。オメガ3脂肪酸が脳の健康をサポートします。

忙しい人でもできる工夫 「毎日バランスよく料理するのは難しい…」という方も多いでしょう。

そんなときは、
• コンビニのサラダやカット野菜を活用する

• 果物は、なるべくそのまま食べる
 (スムージーよりも糖質が少ない)

• ランチに定食を選んで、小鉢を一品増やす

といった小さな工夫から始めてみてください。

栄養は「人間関係の土台」

 人間関係のトラブルやハラスメントの背景には、心理的・社会的要因だけでなく、身体的な要因も疑ってみてはいかがでしょう?「心と体はつながっている」という言葉は、まさにその通りですから。

社員のメンタルケアを考えるうえでも、食事や睡眠、運動といった「生活習慣の土台」を整えることは、非常に重要です。

もし、あなたの周りに、いつもピリピリしている上司や同僚がいたら、、、、
もしかしたら、「野菜が足りない」のかもしれません。

ピリピリしても、いなくても、健康の為に、あなたも 明日から試してみませんか?


世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100 総合法制出版 著 内藤 誼人 

2021年9月21日出版 是非、お読みください!!

自分で自分にパワハラする人たち

あなたの中に「ブラック上司」はいませんか?

「なんでこんなこともできないんだ?」
「またミスした…本当に使えないな」
「もっと頑張らないと。こんなんじゃ甘えてる」

誰かに責められているわけではない。なのに、脳内で繰り返されるこの暴言。
まるでブラック上司のように、自分自身を追い詰めてしまう。

そんな「自分責めの習慣」に、心当たりはないでしょうか。
私はこれを、「自己パワハラ」と呼んでいます。

自己パワハラが生み出す「負のスパイラル」

自分を責め続けると、やがてこう思い始めます。

「自分は嫌われる存在だ」
「好きになってもらえるはずがない」
「自分には価値がない」

この思考パターンは、職場での振る舞いにも影響します。過度に遠慮する、意見を言えない、評価を素直に受け取れない。結果として、本来のパフォーマンスが発揮できなくなるのです。

冷静に考えてほしい、この事実

少し過激な言い方をします。

あなたが亡くなって一年も経てば、ほとんどの人間関係は忘れ去られるでしょう。職場での評価も、あの日のミスも、すべて記憶から消えていきます。
そして、あなたの頭の中で繰り返されている自己批判の声も、あなたが死を迎えた瞬間、削除されたデータのように完全に消去されます。

だからこそ、今考えるべきは「自分にパワハラする思考を、どう手放すか」ではないでしょうか。限られた人生を、自分を責めることに使うわけにはいきません。

自己パワハラの「損益計算書」


冷静に分析してみましょう。
自分にパワハラしても

• 給料は上がらない
• 評価が良くなるわけでもない
• スキルが向上するわけでもない
• むしろ、メンタルが削られパフォーマンスは下がる

さらに言えば、自分を責めている人は、他人からも避けられやすくなります。

なぜなら、自己否定の強い人は、無意識に周囲にもネガティブな空気を広げてしまうからです。「この人といると疲れる」と思われてしまうのです。

結論はシンプルです。自己パワハラは、百害あって一利なし。

Well-beingを削る「内なる攻撃」

「Well-being(ウェルビーイング)」という言葉をご存知でしょうか。

これは単なる健康ではなく、身体的・精神的・社会的に満たされている状態を指します。今、多くの企業や経営者が注目している概念です。

しかし、いくら会社が働き方改革を進めても、あなた自身が「責めグセ」から抜け出せなければ、真のWell-beingは手に入りません。

自己パワハラの強い人には、こんな特徴が見られます:

• 成果を出しても、満足できない
• 人の目や評価に敏感すぎて疲弊する
• 小さな失敗に過剰に落ち込む
• 褒められても、素直に受け取れない

これらはすべて、内側からWell-beingを削る「見えない攻撃」の影響です。

では、どうすれば自己パワハラをやめられるのか?
答えはシンプルです。「自分に優しくする」「自分を責めない」こと。

しかし、ここで多くの人が直面する壁があります。

自分を変えようとすると、周囲が邪魔をしてくるのです。

「そんな甘いこと言ってるから成長しないんだ」
「自分に優しくする?それって逃げじゃないのか」
特に日本の職場では、まだまだ「厳しさこそ美徳」という価値観が根強く残っています。

だからこそ、自分を変える前に、周囲からの「反論」をかわす技術を身につける必要があるのです。

反論に巻き込まれないための「3つの視点」

視点1:「正しさ」で戦わない

よくある反応:
「それは時代遅れですよ」
「今は自己肯定が当たり前の時代です」


推奨する返し方:
「そういう考え方もありますよね」
「最近は違うアプローチで成果を出す人も増えてきていますね」

“自分が正しい”を主張するのではなく、”多様な価値観がある”と示す。これが対話を続けるコツです。

視点2:相手の不安を理解する

「厳しく育てられてきた」「苦労して乗り越えてきた」
そんな背景を持つ相手にとって、「優しくする・甘やかす」という考えは、自分の努力を否定されているように感じられるのです。

推奨する返し方:
「○○さんのように、厳しい環境を乗り越えてこられた経験には説得力があります」
「だからこそ、私は今、自分なりのやり方を試してみたいと思っています」
一度、相手の過去を認める。すると、こちらの意見も通りやすくなります。

視点3:距離を保つことも「戦略」

すべての人と分かり合う必要はありません。
価値観がどうしても合わない相手には、戦わず・屈せず・巻き込まれずのスタンスで、心理的距離を保つことが重要です。

推奨する返し方:
「ありがとうございます、参考にします」
「私は少し違うやり方を試してみたいと思っています」
これは「受け入れるふり」ではなく、自分のWell-beingを守る知恵です。

ケース別・実践的な対話例

ケース1:「そんな甘い考えじゃ通用しない」と言われたら

「たしかに、甘えと紙一重になることもあるかもしれません。ただ、感情を整えることで集中力や成果が上がった実感があるんです」

ケース2:「俺の若い頃はもっと厳しかった」と言われたら
「そういう環境で成果を出してこられたんですね。今はまた違うやり方で力を引き出す方法もあって、私も模索しているところです」

ケース3:否定ばかりしてくる先輩に巻き込まれたくないとき
「ありがとうございます。少し整理して考えてみたいので、また改めてご相談させてください」

言い返さずに使える「かわし言葉」集

【否定されたとき】
→「そういう考えもありますよね」

【強く指摘されたとき】
→「なるほど、少し違う視点かもしれません」

【自分の立場を守りたいとき】
→「私も今、自分なりのやり方を試しています」

【会話を終わらせたいとき】
→「ありがとうございます、考えてみますね」

ぶつからなくていい、ずらせばいい

「自分を責めないで生きるなんて、甘えじゃないか」
「周囲が厳しいのに、自分だけ楽になっていいのか」

そんなふうに感じることもあるかもしれません。

でも、今はこう考えています。

ぶつからずに”ずらす”という選択こそ、自分を守る知性。

自分のWell-beingを整えることは、結果的に他人へのやさしさにもつながります。メンタルが安定している人の方が、良いパフォーマンスを発揮でき、チームにも貢献できるのですから。

「甘やかし」ではなく「回復力」

「自分を甘やかしていいのか」
「こんな自分を肯定してもいいのか」
そう迷う気持ちもあるでしょう。

しかし、自分に優しくするということは、「回復力(レジリエンス)」を育てることに他なりません。

厳しさ一辺倒で乗り越える時代は、終わりを迎えています。

どうか今日、自分にこう声をかけてみてください。
「よくやってる」
「今の自分も、悪くない」
「今日は、もう十分」

あなたへの問いかけ

今日一日を振り返って、自分にかけた言葉を思い出してみてください。
それは、信頼する部下や同僚にもかけるような言葉でしたか?
もしそれが厳しすぎるものだったなら、明日は少しだけ優しい言葉に変えてみませんか。

「頑張ってるよ」でも、「お疲れさま」でも、「今日もよくやった」でも構いません。
どうか、あなた自身があなたのいちばんの味方でありますように。

#自分で自分にパワハラする人たち

「カンニングを叱られた高校生に何が起きたのか?  職場にも通じる『指導の落とし穴』」

「指導死」という言葉を知っていますか?

学校などで教員による不適切な指導をきっかけに、子どもが命を絶つこと——それを「指導死」と呼びそうです。重いテーマですが、この問題は企業におけるハラスメント対策と同じ構造を持っています。だからこそ、取り上げたいと思います。

1年前、大阪の有名進学校で起きたこと

2025年5月、読売テレビが衝撃的な特集を放送しました。
「繰り返される〝指導死〟『卑怯者です』カンニングの指導後に息子は命を絶った…両親の叫びと現役教員の本音 生徒指導はどうあるべきか?」
取り上げられたのは、1年前に大阪の有名進学校で起きた事例です。定期テストでカンニングが発覚した男子高校生が、学校での指導直後に自ら命を絶ったのです。
両親によると、教員に促されて彼は「卑怯者です」と言わされたそうです。さらに、全科目0点、8日間の自宅謹慎、写経80巻などの処分が言い渡されました。
遺書にはこう綴られていました。
「死ぬという恐怖よりも、このまま周りから学校内から『卑怯者』と思われながら生きていく方が怖くなってきました」

「予測は困難だった」で済まされるのか

学校側が設置した第三者委員会は、「『卑怯者』という表現など、指導には問題がある」と指摘しました。しかし「自殺の原因とは認定できない」と結論付けています。
両親は「不適切な指導が原因で息子は自死した」として学校側を提訴。裁判は双方の主張が対立したまま、1年が過ぎています。
学校側の主張は、「同様の指導を受けた生徒が自死したことはなく、予測は困難だった」というものです。
わが子を亡くした両親が、それでも「指導は必要」だと声を振り絞る姿に胸が痛みます。両親が問いかけているのは、「指導のあり方」なのです。

「指導死」の疑い、過去33年間で97件

専門家らによる調査によると、「指導死」の疑いがある事例は1989年〜2022年で97件に上ります。
この事態を受け、文部科学省は2022年に生徒指導の手引き「生徒指導提要」を12年ぶりに改訂。「教職員による不適切な指導が、不登校や自殺のきっかけになる場合もある」ことが初めて明記されました。

教員たちの本音——アンケートから見えた「指導への不安」

教育現場では「適切な指導」のあり方をどう捉えているのか。番組取材班は関西の公立・私立高校5校の教員にアンケート調査を実施しました。一部をご紹介します。

回答者:27人(20代〜50代、教職員歴4年〜37年、男性24人・女性3人)

まず、「生徒指導で大切にしていること」「難しいと思うこと」について聞きました。


「起きた事案だけで判断せず、その行為に至った経緯や生育環境、最近の様子など、背景を把握したうえで必要な指導を行うよう心がけている」(50代男性)
「ルールとマナーを守ること。まじめに頑張っている生徒がおろそかにならないこと。世の中や学校のルールよりも、個性というわがままを押し通す大人が増えたこと」(50代男性)
「生徒が将来、社会で生きていくことができる力を身につけさせることを大切にしている。時代の変化もあり、社会や学校、生徒、保護者との関係をうまくつないでいくことに難しさを感じる」(30代男性)
「生徒、教師、保護者など関係するすべての人間が納得できる指導を心がけています。それぞれの立場や思いがあり、思うようにはならないこともある点が難しいです」(50代女性)


これらの回答からわかるのは、教員たちが生徒指導に大きな難しさを感じているということです。
特に目立つのが、「不安」「心配」という言葉です。それだけ自分の指導に自信が持てないということでしょう。

これは学校だけの問題ではない

そして、これは学校だけで起きている問題ではありません。企業でも、部下への指導に悩む上司と同じ構図です。


「強めに指導した後、次の日学校にちゃんと来てくれるか、真っすぐ家に帰るか不安になる」(40代男性)
大切なのは、その日のうちにフォローをすることです。
学校でも会社でも、指導することは必要です。しかし、叱りっぱなしにするのは指導ではありません。また、「強めの指導」とはどの程度を指すのか、という問題もあります。
ある知人の息子さんが通う公立中学校では、生徒を叱ると教員から親にその日のうちに電話がかかってきて、「こういう理由で息子さんを叱りました」と説明があるそうです。


「生徒の顔色や保護者の顔色を気にしながら指導をしないといけない時代」(30代男性)
このように回答している教員もいますが、相手の気持ちを想像し、フォローすることは、本来いつの時代でも必要なことです。


「本当にこのルールは必要なのか、それを守らせることはその子の将来に役立つことになるのだろうかと考えることはあります」(40代男性)
ルールそのものへの迷いを感じている教員もいます。
学校にも会社にも、使われていないルールがたくさんあるのではないでしょうか。誰も守っていないルールに意味はありません。ルールブックは、単なる「紙」です。

学校にも会社にもまん延する「指導したら損?」という空気

「指導死」という言葉が使われることで、指導そのものがしにくくなると感じている教員もいます。


「正直、学校現場には『指導したら損』という雰囲気もあります。生徒や保護者に強く追及され、頑張る人ほどつらい思いをしています。そのような言葉が広がれば、その空気が助長される気もします」(30代男性)
「生徒の命は大切です。そう思っていない教師はいないと思います。指導する中で生徒たちが『指導死』という言葉を盾にすることで、指導がやりにくくなったり、若い先生たちがやる気をなくしてしまったりすることを心配しています」(40代女性)
「指導することは教師の大切な仕事だと私は考える。この言葉が独り歩きし、指導=悪という印象になると、教師は指導しなくなる」(50代男性)


「指導したら損」という空気は、企業にもまん延しています。
「ヘタに指導をするとパワハラと言われる。だったら指導をしないほうがいい」と考える上司が増えています。しかし、指導そのものを放棄するのは、「適切な指導とは何か」という議論からの逃げでしかありません。

それでも「適切な指導」を考える人たちがいる

もちろん、中には「適切な指導」について真剣に考えている教員もいます。


「多くの教員が経験のないことだけに、日常の指導の先に『死』があることに認識が足りない」(40代男性)
「死に追い込んでしまうようなものは指導とは呼べないと感じます」(30代男性)
「大人の言葉ですごく傷つき命を落としてしまう子がいるのは非常に悲しいことで、あってはならないと思います。指導する側はそんな気はなくても死を選んでしまうことを頭に入れて指導していく必要があると思います」(30代女性)


指導者が自覚すべきこと

学校でも会社でも、教員や上司による「指導」や何気ない一言が、生徒や部下の心を深く傷つける場合があります。
パワハラは、被害者をメンタル疾患に追い込み、最悪、命を奪います。
不適切な指導が人の命を奪うことがあるというリスク。そして、自分が発する部下に向ける「コトバ」をより丁寧に選ぶことは、ますます、指導者側は自覚していなければいけない- あらためてご紹介した出来事から私はそう思います。

『男同士だから』が最も危ない! 学校も職場も同じ。性的いじめ、セクハラを生む『ノリ』の正体。

セクハラ研修の現場で見えてきた「盲点」


近年、セクハラ対策の研修依頼が急増しています。かつては「男性から女性へ」というイメージが強かったセクハラですが、実態は違います。女性から男性、男性から男性、女性から女性——性別を問わず、あらゆる組み合わせでセクハラは発生しています。
特に見過ごされがちなのが、男性から男性への性的いじめ・セクハラです。「同性だから」「ふざけているだけ」という言い訳のもと、深刻な被害が隠されているのです。

NHKが報じた衝撃の実態—閉鎖空間で起きた性的いじめ

2025年7月、NHKで放送された「ザ・ライフ 閉ざされた世界で~男性と性的いじめ~」(NHK福岡放送局制作)は、この問題の深刻さを浮き彫りにしました。
番組が取り上げたのは、東海大学付属福岡高校の男子剣道部で6年前に起きた事件です。当時高校1年生だった男子生徒が、部室で性的いじめの被害を受けました。畳に粘着テープで貼り付けられ、10人ほどの生徒が見ている前で上級生に下着を下ろされ、わいせつな行為を受けたのです。さらにその様子がSNSでさらされるという、極めて陰湿な事件でした。

「悪ふざけ」がエスカレートする構造

男性から男性への性的いじめには、いくつかの特徴があります。
• 集団で行われるケースが多い
• 閉鎖的な空間(部室、寮、男性だけの職場など)で発生
• 「男子校ノリ」「体育会系ノリ」の延長として始まる
• 悪ふざけが次第にエスカレートしていく
番組で取り上げられたケースも、剣道部の部室という閉鎖空間で起きました。被害生徒は剣道をやりたくて推薦で入学し、寮生活を送っていました。逃げ場のない環境だったのです。

加害者に自覚がない恐ろしさ

男性同士のいじめは、「ふざけているつもりだった」「みんなも面白がっていると思った」と軽く捉えられがちです。その結果、加害者側に「いじめをしている」という自覚が生まれにくいのです。
周囲の人間も、その場のノリで笑って見ていたり、見て見ぬふりをしたりします。それが、いじめをさらに助長させます。
「ふざけているつもりだった」「そんなつもりはなかった」
この加害者の言い訳、職場のセクハラ加害者とまったく同じではないでしょうか。

被害者の心に残る、消えない傷

加害者にとってはノリでやっている悪ふざけの延長でも、被害者にとってはまったく違います。性的いじめは、被害者の心を深く傷つけ、トラウマとして残り、命に関わることすらあります。
実際、剣道部で性的いじめを受けた少年は、その後自ら命を絶ってしまいました。彼は上級生からの厳しい指導やいじめについては親に打ち明けていましたが、性的いじめを受けていたことは誰にも話せなかったのです。

「遊びの顔をした性加害」という本質

なぜ男性の集団で性的いじめが起こりやすいのか。番組には、「男性性」と性的いじめの関係に着目して執筆活動をしている清田隆之さんが登場しました。
清田さんがヒアリングしたところ、多くの男性が性的いじめやそれにつながる経験をしているそうです。清田さん自身も中高6年間を男子校で過ごし、男子生徒同士がノリで体を触ったり、服を脱がせたりする光景を目にしてきました。
清田さんは、このような行為を「遊びの顔をした性加害」と表現します。その背景には、「多くの男性が、特有のノリに縛られている」ことがあるといいます。
だから、悪ふざけの延長として行われる性的いじめに対して「嫌だ」と言えない。見ている人たちも「それはおかしい」と声を上げることができないのです。

学生時代だけの問題ではない

男性同士の性的嫌がらせ行為を「仲間内のノリ」として軽く見る傾向は、学生時代だけではありません。社会人の職場でも「男子校ノリ」「体育会系ノリ」は確実に存在します。
学生時代に形成された「ノリに従う文化」が、そのまま職場に持ち込まれているのです。

希望の光—男子校が始めた「男性性」を問う授業

番組で印象的だったのは、京都市にある中高一貫の男子校、洛星高校の取り組みです。同校では5年ほど前から「男らしさについて考える授業」を取り入れています。
授業の一環として、男子同士のノリで起こる性暴力を想定したワークショップが行われています。そのシチュエーションは以下のようなものです。


【ワークショップのシナリオ】
体育の授業後、更衣室で着替えている男子生徒A君を、男子生徒B君がスマホで撮影するふりをして、冗談めかして「LINEでばらまく」と言います。A君の表情は曇っています。
「その場にいるあなたはどうするか」
生徒一人ひとりがこの問いに向き合い、話し合います。


これは、性的いじめやハラスメントにつながる行為を目にしたとき、どう行動するかを学ぶ取り組みです。
居合わせた人が行為者に注意したり、外部の人に協力を求めたりすることで、いじめやハラスメントを回避できることは頭ではわかっています。大切なのは、実際に行動に移すこと。こうしたワークショップは海外の大学や企業で取り入れられ、効果を上げています。

洛星高校は京都大学などの難関大学に多くの学生を送り出している進学校です。将来社会に出て活躍する若者たちが、早い段階で「男性性」と向き合い、性的いじめやハラスメントを回避する方法を学ぶ——この取り組みには大きな意味があります。
大人も見習うべきではないでしょうか。

「正論が通る空気」をどう作るか

たった1人が声を上げるだけでは、ハラスメントを止めることは難しいのが現実です。
しかし、その場にいる全員が「それはおかしい」「やめたほうがいい」と正論を息を吸って吐くように、当然かのごとく言える環境があれば、空気は変わります。
学校でも会社でも、その場のノリに流されたり、同調圧力に屈したりすることなく、「正論」を言える雰囲気を作ることが、性的いじめやハラスメントをなくすことにつながります。

そのために必要なのは「アップデート」

正論がまかり通る教室や職場の空気を作るには、一人ひとりの問題意識のアップデートが必要なのです。
• 「男同士だから大丈夫」という思い込みを疑う
• 傍観者にならず、声を上げる方法
• 組織として「正論が通る文化」を育てる 他
そのアップデートの方法を、当社の研修でご紹介します。