「すみません、『100万回死んだねこ』ってありますか?」
図書館のカウンターで、そう尋ねた利用者がいたそうです。
正しくは『100万回生きたねこ』。
でも、この”覚え違い”、めちゃくちゃわかりませんか?
福井県立図書館が記録した「覚え違いタイトル集」が最高すぎる
『100万回 死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県立図書館 編/講談社文庫)
この本、図書館カウンターで日々繰り広げられる”うろ覚えタイトル”との格闘を、愛情込めてまとめたものなんです。
他にも:
• 『おい桐島、お前部活やめるのか?』→ 正解:『桐島、部活やめるってよ』
• 『渋谷に朝帰り』→ 正解:『渋谷に里帰り』
どれも惜しい! けど、なんかわかる!(笑)
福井県立図書館の職員さんたちは、こうした覚え違いを「おもっしぇー!」
(福井弁で”おもしろい”)と笑いながら、丁寧に対応してきたそうです。
バカにするでもなく、見下すでもなく。ただ一緒に笑って、正解にたどり着く。
この姿勢、実は職場の人間関係にめちゃくちゃ必要なやつじゃないですか?
「思い込み」は、誰にでもある
タイトルの覚え違いも、仕事での勘違いも、根っこは同じ。
人は誰しも、自分では気づかない”思い込み”をしてしまう生き物なんです。
心理学では、これを「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」と呼びます。
「こうに決まってる」「普通はこうだ」――そんな無意識の決めつけが、人間関係のすれ違いや、ハラスメントの引き金になってしまうんです。
職場に潜む”思い込み”、あなたも言ってない?
たとえば、こんなセリフ。
• 「電話は若手が真っ先にとるべき」
• 「雑用や飲み会の幹事は、若手の仕事」
• 「子育て中の社員には、海外出張は任せられない」
悪気はないんです。それぞれに理由もある。
でも、この“決めつけ”が積み重なると、相手を傷つけたり、組織の活力を奪ったりするんですよね。
無意識の思い込み、4つのパターン
私の経験上、職場でトラブルを生む「思い込み」には、だいたい4つのパターンがあります
「普通はこうだ」「当たり前だ」 ― 価値観の決めつけ
「どうせできない」「無理だろう」 ― 能力への決めつけ
「そんなはずはない」 ― 解釈の決めつけ
「こうあるべき」 ― 理想の決めつけ
こうした決めつけが重なると、知らず知らずのうちに相手の可能性を狭めてしまうんです。
正解にたどり着くには、”対話”しかない
福井県立図書館の職員さんたちが素晴らしいのは、覚え違いを笑い飛ばすだけじゃなく、「丁寧な対話」を通じて正解を導き出していること。
「『100万回死んだねこ』という本ありますか?」と聞かれたら
「著者はわかりますか?」
「どこで知りましたか?」
「どんな内容でしたか?」
そうやって、少しずつ“本当に探している本”にたどり着く。
これ、職場でも全く同じじゃないですか?
「子育て中の社員に海外出張は無理だろう」と決めつける前に、
「出張について、どう考えてる?」と聞いてみる。
すると
• 「今は難しいです」と答える人もいれば、
• 「家族の協力体制が整っているから問題ありません」と言う人もいる。
人の事情も考え方も、聞いてみなければわからないんです。
“思い込み”を責めるんじゃなくて、気づくこと
アンコンシャス・バイアスは、誰にでもあります。
それを”悪”と決めつけるんじゃなくて、
「自分の中にも思い込みがあるかもしれない」と気づくことが大切。
相手との対話の中で、自分の思い込みに気づき、
「あ、そう考える人もいるんだ」と受け止める。
その姿勢こそ、ハラスメントを減らし、職場の信頼関係を強くする第一歩だと思います。
“おもっしぇー”心を、職場にも
覚え違いを「おもっしぇー」と笑いながら、そこに人間の温かさを見いだす。
バカにしない。見下さない。一緒に笑って、正解を探す。
人は思い込みを持つ生き物。
だからこそ、笑いながら、学びながら、互いに理解し合う。
その積み重ねが、信頼と安心の職場文化をつくっていくんだと思います。
本書の最後には、こんな一文。
そして、今回ご紹介した本を探すときはぜひご注意を。
「『100万回死んだねこ』ありますか?」と聞くと、児童書コーナーに案内されるかもしれません。
私も気を付けたいと思います。