日別アーカイブ: 2024年5月25日

怒ったら上司の負け!!!これが令和の部下指導。「監督が怒ってはいけない大会がやってきた」を読んで考えた。

 今回はそろそろ、新入社員が現場にやってくる時期にぴったりな1冊の本をご紹介したいと思います。
「『監督が怒ってはいけない大会をやってきた』益子直美他著(方丈社)」
本書を通じて、大人の組織でもパワハラを招かないように怒らずに叱る方法、部下とのかかわり方について考えていきたいと思います。

はじめに、本の袖から引用させていただき、著者の「一般社団法人 監督が怒ってはいけない大会」をご紹介します。


2015年1月に、福岡県宗像市で開催された「第1回 益子直美カップ 小学生バレーボール大会」をきっかけに、子供たちが「バレーが楽しい」と思ってもらいたいというメンバーの想いから「監督が怒ってはいけない」というルールを発案し「一般社団法人 監督が起こってはいけない大会」という組織が、3つの理念を掲げ、発足されました。


1 参加する子供たちが最大限に楽しむこと
2 監督(監督・コーチ・保護者)が怒らないこと
3 子供たちも監督もチャレンジすること
3つの理念をベースとして、バレーボールに限らず、今、様々なスポーツ団体から注目されています。

具体的にどのような取り組みをしているか、職場の上司にも参考になるヒントが沢山ある素晴らしい1冊です。

怒鳴る指導が止まらないコートの舞台裏


 拝読してまず驚いたいたことは、2015年の話であるとしても、バレーボールのジュニアチームの子供たちが、当時、監督に怒鳴られ、平手打ちをされ、泣きながらプレーをしているという事実。昭和の頃からいまだに変わらず、体罰がバレーボールの指導の「当たり前」ということ。これを何とか変えられないか、10年かけてこの活動が不要になる、つまり現場から怒る理不尽な指導がなくなることを真剣に著者は考えていた現実です。

ベテラン世代の「上司」と「監督」の言い分

 特に印象的な点は、監督たちの否定的な声が、50代、60代、70代の上司の言い分と非常に似ていること。

監督の声
「怒らないなら、勝てない」
「怒らないことは、指導ではない」
「子供が甘えてつけあがる」
「チームとして成立しなくなる」
「怒らないなら、勝てなくてもいいんだね」
「初めから勝利を諦めるんだな」
これが10年たってもなくならない、とのこと。


一方、上司も負けずに次のように言います。


上司の言い分
「俺は怒られてきたから、いま成功している」
「経営者で成功している人は、みな、怒られることに耐えてきた」
「怒られない奴は、成長しない。」
「一番怒られた奴が結果、出世した。だから感謝しかない」
非常に似ていますね。

「スポーツマンシップ」と「リーダーシップ」の共通項


協会の方針としては、「スポーツを楽しむこと」が第一です。
誤解があってはいけないのですが、怒ることは否定せず、怒ってもいいときは、以下の4つの場合と限定しているのです。


1 ルールやマナーを守れなかったとき
2 取り組む態度、姿勢が悪かったとき
3 いじめや悪口を言ったとき
4 危ないことをしたとき

このような、スポーツマンシップに外れた行為をしたときは、「プレーの中のミスに対する感情的な叱責だけ」を禁じているとのこと。これを仕事に置き換えると「部下の仕事のミスに対する感情的な叱責」と全く同じです。また、スポーツマンシップについて次のように定義しています。「人との接し方やふるまいに思いやりがあり、誰かの為に自ら動けるスポーツマン」。素晴らしい表現です。私も全く同感です。相手を一人の人間として尊重している考え方が根底にあると感じました。

 高校野球の全国大会で代表の選手が「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と試合することを誓います」とお約束のフレーズがあります。
この正々とは、私なりに解釈するならば、ルールやマナーを守る、堂々とは一点の曇りなく胸を張って試合をし、真摯にそしてフェアに取り組むことと伝えています。まさに、コンプライアンスの本質そのものなのです。

あなたは、誰かのために自ら動けますか?

「誰かのために自ら動ける」私が一番気に入ったこのフレーズ。
日本の職場では、この誰か困っている人のために、自ら動ける人が多くない印象です。言葉をオブラートに包まずに言えば、他人事、つまり傍観者でいる方が面倒なことに巻き込まれずにいられるので、安心なのです。
チームで仕事することが大事と口先ではいいながら、実際は助けない。言い換え得れば、同じ「職場という名のコート」のなかで年度の目標を達成するという試合を共に戦っていても、実は、仲間がピンチでも、ミスをしそうなときに誰もフォローしない、試合が終わっても声をかけない、無視と同じです。
 このような言動は、コートのなかでも、職場のなかでも同じことが起こりえると私は断言します。ましてや、スポーツと比べたら、職場は就業規則など様々なルールもありますので、従うべきことは多く、ペナルティーの厳しさは言うまでもありません。
 スポーツマンシップを発揮することと、リーダーシップを発揮することは、その姿が誰かを励まし、勇気づけることです。チームのメンバーにいい影響力を波及させ、結果的に強いチームを作る点においては、何ら変わりません。

職場でも取り入れたい、怒っている人を自覚させる方法


この大会は、旧態依然とした指導者にはバツが悪いイベントのようです。何故ならば、普段と違う姿(怒らない自分を見せる)を子供たちや保護者に見せるために、居心地が悪いようなのですが、とてもユニークな取り組みを大会中にしています。
実際に、つい声を荒げた指導者には「バッテンマスク」を進呈することで、怒りを無自覚に指導に使っている監督に気づきを与える取り組みをしています。会社でもコンプライアンスウイークくらいは同じことをやっても面白いと思いませんか?
ユニークさを受け入れてくれるコンプライアンス部の皆さん、担当取締役の皆さん、「バッテンマスク」はパワハラ行為者の問題の根にある「無自覚」を職場の全員で考えるヒントになるのではないでしょうか?

「怒らなくても勝てる」

 本書でも指摘していますが、大事なことは「理不尽」に怒らなくても勝って強いチームを作ることが可能であると言っているにもかかわらず、「怒らない」=「勝てない」とバイアスに完全に囚われている監督が多いようです。このバイアスのなかにも監督自身も若い頃から無意識に植え付けられた監督像、つまり「監督はこうあるべき」という強い価値観が刷り込まれ、プレッシャーとなってのしかかり、ときには押しつぶされそうになるとありますが、これは、上司も同じです。
  特に上司は、偉くなるほど誰も指摘はしてくれず、利益のプレッシャーも当然にありますが、残念ですが、プレッシャーのない仕事は存在しません。経営である以上、数字の責任を負っているのです。部下育成や仕事も課題も山積みで悩みも多いのですが、以外と誰にも相談できずに人知れず一人で悩んでいる人が多いのです。

要改善な監督とパワハラ上司の共通項
-ミスの理由を聞くこと

「ボールを拾わなかった子に、『なんでいかないんだ!』と怒鳴る監督がいますが、「なんで」と言われても、その時はよくわからないものです。でも理由は絶対にあり、丁寧に聞いてあげると必ず出てきます」とあります。
職場に置き換えます。「なんで、こんな仕事しか出来ないんだ!」「なぜ、ダメなんだ」なぜなぜ分析が大好きな上司と重なって読んでいる自分がいました。子供を指導するのも、部下を指導するの根本は同じであることを改めて痛感しました。
「『なんでミスをした』と言われると『できない自分』だけが刷り込まれていく」このフレーズは、全国の日本の管理職に声を大にして伝えたい言葉です。
これ以上は、是非、ご著書を読んで頂きたく、とにかく全国の管理職に読んで欲しい、あなたの部下指導を変えるヒントが沢山詰まった至極の一冊です。

子供たちと部下を伸ばす至極の言葉


本書では、子どもたち一人一人を見ていることの大切さを伝え、
「絶対に、チャンスをあげるからね」と声をかけることの大切さを説いています。上司の皆さん、部下に、今は難しくても「絶対にいつか活躍できるチャンス」与えていますか?

今年も新入社員が入ってきました。


上司、先輩の皆さん


新入社員にどうぞ、入社早々、怒らずに、まずは、よく見て、チャンスを与えて成長させてください。マネジメントの役割は、「部下育成」です。人が育つには時間がかかります。上司の皆さんも時間がかかったのと同じです。ただし、手間暇のかけ方が、昔とは180度異なっているのです。
20年後、30年後の未来の会社のリーダーは、あなたの部下です。一緒に未来のリーダーをサポートしていきましょう。
その上司の姿を、部下は必ず見てます。

ハラスメント研修企画会議 主宰

株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。立教大学経済学部卒。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を企画してきた。