なぜ、上司の指示は「占い」みたいになるのか?

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占いの言葉は、なぜ自分に当たっているように感じるのか

占い師に占ってもらうと、こんな言葉を耳にします。

「流れは悪くないですね」
「動くと運気が開けます」
「これからチャンスが来ますよ」

聞いていると前向きな気持ちになります。
ただ、よく考えるとかなり抽象的です。

「流れがいい」と言われても、何をすればいいのかは曖昧な表現がある。
「チャンスが来る」と言われても、具体的な行動は示されていない。

それでも、多くの人は「当たっている」と感じます。

なぜでしょうか。

占いの言葉が当たっているように感じるのは、
多くの場合、言葉がとても抽象的な側面があると私は思います。

「変化の年です」
「流れが来ています」
「動くと運気が開けます」

こうした言葉は、どんな状況にも当てはめることができます。

転職を考えている人には転職のチャンスに聞こえる。
恋愛中の人には恋愛の進展に聞こえる。
何もなければ「これから起きる出来事」にもできます。

つまり、聞いた人が意味を補ってその意味を自分で完成させる言葉なのです。

タロット占いも同じです。

カードが出たとしても、それ自体が答えではありません。
カードの意味をどう読み解くかは、占い師の解釈に委ねられています。

カードはヒント。
意味を完成させるのは人間です。

職場にも、占いみたいな指示がある

実は、職場にも似たことが起きています。

職場には、占いみたいな指示があります。

「方向性はいいと思う」
「もう少し詰めてみて」
「一回整理してみて」
「その方向で進めて」

言っている意味は、なんとなく分かる。
でも、何をすればいいのかは、はっきりしない。

そんな経験、ありませんか。

「もう少し詰めてみて」の正体

例えば、こんな場面です。

上司
「方向性はいいね。もう少し詰めてみて」

部下
(何を詰めればいいんだろう……)

資料を増やす。
説明を足す。
データを追加する。

そして再び上司のところへ持っていくと、こう言われます。

「うん、悪くないけど、もう少し詰めてみて」

……さっきも同じことを言われた気がします。

結局、部下は自分で考えるしかありません。

何を直せばいいのか。
どこまでやればいいのか。
どの程度が完成なのか。

つまり、上司の言葉を解釈して動くしかないのです。

実は、部下が占いを解読している

ここで気づくことがあります。

上司が占いをしているわけではありません。

部下が、上司の言葉を占いのように読み解いているのです。

「もう少し詰めてみて」と言われれば、
部下は自分なりに意味を考えます。

資料を増やすのか。
データを追加するのか。
説明を整理するのか。

どれも正解になり得ます。

もし結果が良ければ、
「だから言っただろう」となる。

もし結果が悪ければ、
「やり方が違う」となる。

言葉が抽象的であるほど、後から意味を調整できます。

なぜ上司の言葉は占いみたいになるのか

では、なぜこういう言葉が職場で生まれるのでしょうか。

一つは、仕事の複雑さです。

仕事には必ずしも正解が一つあるわけではありません。
状況も変わるし、結果も予測しきれない。

だから「細かく説明するより、方向だけ示す」というコミュニケーションが生まれます。

もう一つは、組織文化。

かつての日本の職場には「察する文化」がありました。

上司がすべてを説明するわけではない。
部下は上司の意図を読み取りながら動く。

いわゆる「以心伝心」や「背中を見て学べ」という世界です。

さらに、日本語そのものも影響しています。

日本語には、状態を表す言葉が多くあります。

「ちゃんと」
「しっかり」
「いい感じに」
「もう少し」

どれも意味は分かるのに、具体的な行動は書かれていません。

こうした言葉は、方向は示しますが、行動は示しません。

だから受け手は、自分で意味を補うことになります。

そこに圧力が加わると、問題になる。

ただし、ここに圧力が加わると、話は少し変わってきます。

「なぜ俺が言っている方向に動かないんだ」
「なぜお前はその通りに行動しないんだ」
「なんで分からないんだ」

抽象的な指示なのに、従わないことを責められる。

こうなると、受け手は強いプレッシャーを感じます。
そして時には、パワハラのような問題が起きることもあります。

もし占い師がこう言ったら

ここで少し想像してみてください。

もし占い師がこう言い始めたらどうでしょう。

「なぜ私が言った通りに動かないんですか」
「なぜ運気が良くなることを信じないんですか」
「だからあなたはうまくいかないんです」

少しおかしいですよね。

占いはあくまでアドバイスのはずです。
それなのに、信じないことを責められたり、圧力をかけられたりしたら、違和感があります。

しかも、占いの場合はお金を払っています。
それなのに、なぜ圧力まで受けなければいけないのか。

それでは本末転倒です。

占いは未来を当てるもの、指示は人を動かすもの

もちろん、すべての抽象的な言葉が悪いわけではありません。
仕事には、あえて余白を残すことが必要な場面もあります。

ただ、少なくとも一つ言えることがあります。

占いは未来を当てるものです。
しかし仕事の指示は、未来を当てるためのものではありません。

人を動かすためのものです。

もし部下が迷っているとしたら、それは努力が足りないのではなく、
もしかすると指示が「占い」になっているのかもしれません。

ちなみに

誤解のないように言っておくと、私は占いが嫌いではありません。
むしろ、占いは面白いと思っています。

ただ、上司の指示が占いみたいになると、正直困ります。
あなたの部下が、曖昧な言葉に不満が鬱積して、静かに気持ちが
離れていくことの方が心配だからなのです。
あらためて、言葉を大切にしたいものです。

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この記事を書いた人

藤山 晴久

ハラスメント研修企画会議 主宰

株式会社インプレッション・ラーニング  代表取締役、産業カウンセラー。アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修企画営業部門のマネージャーとして一部上場企業を中心にコンプライアンス、ハラスメント研修等を企画。2009年株式会社インプレッション・ラーニングを設立。起業後、企業研修プランナーとして「ハラスメントの悩みから解放されたい」「自分の指導に自信を持ちたい」「部下との関係性をよくしたい」……といったハラスメントにおびえながら部下指導に悩む管理職に年間200件のセクハラ、パワハラ研修を企画し、研修を提供。会社員時代の研修コンテンツでは決して企画することが出来なかった 「グレーゾーン問題」に特化したハラスメント研修を日本で一早く企画し実施。 起業後10年間で約2,000件、約30万人以上に研修を企画してきた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。このブログでは、社会・組織・個人という三つの視点から、

ハラスメントの背景や構造について考えています。
職場には、「わかっているはず」という思い込みや、
言葉にしなくても伝わるはずだという空気があります。
しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。

このブログでは、そんな職場にある“見えにくいズレ”をほどきながら、
よりよい対話と関係を生み出すヒントを発信していきます。
職場の「わかっているはず」を、言葉に変える。

そんな思いで、このブログを書いています。

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