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見えているつもりが、一番見えていない ― 上司は知らない。部下が本当に思っていること。精神科医の本から見えた、いまのマネジメントの盲点

先日、精神科医のさわさんが書かれた『子どもが本当に思っていること』(日本実業出版社)という本を読みました。

さわさんのクリニックには、学校に行けなくなった子どもを持つ親や、リストカットを繰り返す若い人など、さまざまな悩みを抱えた方が相談に訪れます。

著者ご自身も、母親との関係に悩み、離婚後はシングルマザーとして二人のお子さんを育ててこられました。長女の不登校に悩んだ時期もあったといいます。

この本を読んで、私は「これは親子関係の話であると同時に、職場の上司と部下の関係そのものだ」と感じたのです。

「失敗させない」ことが、必ずしも正解ではない

親は、「子どもに失敗させたくない」と思うあまり、交友関係に口を出したり、先回りしてレールを敷いたりしてしまいがちです。

しかし、親の役目は、子どもを失敗から遠ざけることではなく、「失敗をどう乗り越えるか」を支えることです。
これは、職場でもまったく同じです。部下が失敗しないように、細かく指示を出し、先回りして手を出す。私が部下に目をかけなければ、と。背景にはメサイアコンプレックス、つまり「自分が救わなければ」という過剰な使命感もあるのかもしれません。

そもそも、失敗とは何でしょうか。期待していた通りの結果が出なかったら、それは本当に「失敗」なのでしょうか。
受験に落ちたとき、親が「失敗だった」と決めつければ失敗になります。しかし、「ここまで努力した経験は必ず次に生きる」と捉えれば、それは単なる通過点です。

仕事でも同じです。
部下がミスをしたとき、

上司が
「いい経験をしたね」
「よくチャレンジした」

そう受け止められれば、それは失敗ではなく、成長の材料になります。

自分の価値観を、無自覚に押しつけていないか

さわさんは、娘さんが小さい頃、公文、ピアノ、バレエと、習い事でスケジュールを埋め尽くしていたそうです。それは、ご自身が子どもの頃に親にしてもらってきたことでした。親は、自分が育てられた価値観を、無意識のうちに子どもに重ねてしまいます。

上司も同じです。自分が受け継いできた価値観を「当たり前」と思い、部下にもそれを求めてしまう。その価値観が、今の時代や、その部下に本当に合っているかどうかを考えていなければ、それはただの押しつけになってしまいます。

「こうあるべきだ」と思ったときこそ、その価値観はどこから来たのか。今、目の前にいる相手に本当に必要なものは何か。一度、立ち止まって考えてみる必要があるのではないでしょうか。

「期待」は、ときに呪縛になる

さわさんは、子どもの頃、母親から

「あなたはもっとできるはず」

「もっとがんばりなさい」

と言われていたそうです。そのたびに、「がんばれない自分はダメなんだ」と自分を責めるようになりました。

母親は、「医師になりたかった」という自分の果たせなかった夢を、子どもに託していたのです。親の期待は、善意であっても、子どもにとっては重い呪縛になります。

上司と部下の関係も同じです。上司の理想を部下に背負わせるのではなく、本人がどうしたいのか、どうなりたいのか。そこに耳を傾けることが、今のマネジメントには求められています。

「期待」ではなく、「応援」を伝える

だからといって、「期待していない」と言えばいいわけではありません。大切なのは、「期待」ではなく「応援」です。

さわさんがアメリカに住んでいた頃、

“I’m proud of you.”

という言葉をよく耳にしたそうです。結果ではなく、努力や存在そのものを認める言葉。日本語にすると少し照れくさいですが、上司が部下に”I’m proud of you.”と自然に伝えられるといいのではないでしょうか。さんざん、あなたの職場でも、「相手を尊重しましょう」、「人権を大切に」と言われているわけですから。

上司は、自分の「夢」を語れているか

本書にも書かれていますが、人生に正解はありません。自分で選んだ道を、自分で正解にしていくしかないのです。

だからこそ、部下が上司に求めているのは、「こうあるべき」「こうあってほしい」という期待や押しつけではありません。「この人は、どんな思いで、この会社で働いているのか」それを知りたいのです。

研修で「あなたの夢は何ですか?」と聞くと、答えに詰まる管理職が少なくありません。

「頑張って部長になれればいいかな」

「部下と会社の成長が夢」

与えられた仕事を全うすることに慣れてしまい、会社での役割と本来の自分との区別がつかない人や、主語が自分ではなく、会社(他人)なのです。

「休みがホントに欲しいこと・・・・」

「NISAをやってみたい・・・・」

「しばらく、墓参り行けてないので・・・」

これは「夢」ではなく、「TO DOリスト」か、「日常の願望リスト」…
叶えたい夢を、語れない人が多い会社が実在するのです。

部下が、上司の何を知りたがっているか、ご存じでしょうか?
この上司は、この会社で何を(夢)叶えたいと思っているのか?

部下は知りたがっているんです。

「話しかけづらい上司。仕事で何が嬉しいのか?」

「残業ばかり。仕事のためだけに生きている!?」

夢を語れない上司がいる会社から、部下は去っていく
夢を語れない上司がいる会社から、部下は静かに去っていきます。
数字に追われるばかりのマネジメントがなされていては、現場の社員が憂鬱な顔になっても当然。

そんな上司のそんな姿を見ると、部下もあなたの子どもも、夢をなくしてしまう。
働くこと自体の魅力が薄れて、食べていければそれでいい、という価値観がまかり通ってしまう。
そんな会社の不都合に苛立ちを感じ、つまらないと感じる人は、退職していくか、海外に出ていってしまうかもしれません。

大きな声では言えませんが、離職のきっかけは、上司だったのです。

20代の社員は、上司の姿に10年後、20年後の自分を重ねています。だからこそ、上司は自分の言葉で、自分の夢や価値観を語ってほしいと私は思っています。

今、部下が上司に本当に思っていることです。

是非、本書を手に取ってください。

参考文献:『子どもが本当に思っていること』(精神科医さわ著、日本実業出版社)

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
年間約200件の研修を企画・実施し、これまで約30万人以上が受講。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
このブログでは、社会・組織・個人という三つの視点から、
ハラスメントの背景や構造について考えています。
職場には、「わかっているはず」という思い込みや、
言葉にしなくても伝わるはずだという空気があります。
しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。
このブログでは、そんな職場にある“見えにくいズレ”をほどきながら、

よりよい対話と関係を生み出すヒントを発信していきます。
職場の「わかっているはず」を、言葉に変える。
そんな思いで、このブログを書いています。

#上司
#マネジメント
#管理職

その断り方、優しさになっていますか ― 「断れないと悩む社員に教えたい 京都流「NO」の伝え方」

「NO」が言えない本当の理由

職場で、冗談のつもりで言われた一言にモヤッとする。
「これもお願い」「あれもついでに」と雑用を押しつけられる。
そんな経験、ありますよね。

でも、相手に対してはっきり「それは嫌です」「やめてください」と言うのは、簡単 ではありません。人間関係がこじれるかもしれない。職場の空気が悪くなるかもしれない。
そう考えて我慢してしまうのは、あなたが弱いからではないのです。

「NO」を受け入れられない人たちの存在

研修の現場で、私がいつも感じている課題があります。
多くの企業でアサーティブコミュニケーション、つまり「自分の意思をはっきり伝えましょう」という教育が行われています。確かに大切なことです。しかし、それだけでは不十分なケースがあるのです。

なぜなら、相手の「NO」を理解できない人が、一定数存在するからです。
実際に研修後、こんな声を聞くことがあります。

「やめてくださいと言ったら、『俺の言うことが聞けないのか』と言われた」
「『生意気だよ』『もう二度とお前に仕事ふらない』と捨てセリフを吐かれた」

相手が境界線を示しても、それを受け入れられない。
「やめて欲しい」という気持ちよりも、「俺の気持ち」を優先する。
相手が「NO」と伝えているのに、それを無視して、自分の思い通りにしようと押し切ってくる。

こうした言動こそが、職場にハラスメントを浸透させているのです。
もしかすると私たちは、伝え方を学ぶ前に、まず「相手は自分の所有物ではない」という当たり前の境界線を、痛みを伴ってでも再認識するプロセスが必要なのかもしれません。

いきなり「NO」と言うのは、ハードルが高い

  研修をしていると、「断り方がわからない」「角が立たない伝え方を知りたい」という相談をよくいただきます。アサーティブコミュニケーションを学んでも、いきなり正面から「NO」と伝えるのは、やはりハードルが高いという声も多いのです。
そんな方に向けて、今回ご紹介したい一冊があります。『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(中野信子著、日経BP)という本です。

  この本では、京都の人ならではの「NOの伝え方」が紹介されています。京都の人は、真正面から「NO」と言いません。たとえ相手にはっきり伝わらなくても、わかる人にはわかる言い方で、距離を取るのだそうです。これは、長く日本の都として敵も味方も受け入れてきた土地だからこそ育まれた知恵なのでしょう。
京都流のコミュニケーションは、職場でも十分に参考になります。
 ただし、そのまま使うというよりも、是非あなたなりに味付けをして、より伝えやすい言葉に変えてみてください。

京都人の「NO」の伝え方 7つのケースから

本書に掲載されている事例から、京都人の「NO」の伝え方を紹介しましょう。

ケース1:それほど親しくない相手から無理な依頼をされたとき。

京都流の返しは、 「いえ、うれしいですけど、ちょっと。もっと合っている方を探しましょうか」
正面から断らなくても、「私は引き受けるつもりはありませんよ」というメッセージが伝わります。

ケース2:パシリのような扱いをされたとき。

「かえって遅なりますえ」 「今からでしたら、明日になりますえ」
急に、無理な仕事を振られそうな場面で、これは使えそうですね。

ケース3:教える義理のない情報を求められたとき。

「それは教えられません!」と突っぱねるのではなく、 「そんなややこしいこと、よう知りませんわ」 「聞いたこと、あらしまへんなあ」
と、あえてとぼける。これも、角を立てずに距離を取る技です。

ケース4:忙しいのに、訪問客がなかなか帰ってくれないとき。

「長いこと付き合わせてすみません。お忙しいのにありがとう」
こう言われると、相手も自然と腰を上げます。ちなみに、京都人は客に帰ってほしいときはぶぶづけ(お茶漬け)を出す、という話を聞きますが、実際にはそんなことはしないそうです。

ケース5:侮辱されたり、ハラスメントを受けたときの秀逸な返し方

私が「なるほど!」と思ったのが、 「私にはいいですけど、ほかの人に同じこと言ったら事件ですよ」
という返し方です。

「私はいいですけど」と一歩引いた姿勢を見せつつ、「事件ですよ」と、冗談では済まされないことを容赦なく伝えています。こう言われたら、「それ、ハラスメントですよ」と指摘されるより、相手に強烈な違和感を残すのではないでしょうか。
ハラスメントをする人ほど、自分の発言を自覚していないものです。答えたくない失礼な質問をされたときは、 「今、~(相手の発言)とおっしゃいました?」
と聞き返すのも有効だそうです。

ケース6:「奥さんとうまくいっていないんだよね」などと言われたとき。

「言いにくおしたら、私から奥さまに言うたげまひょか?」
口調は柔らかいですが、「あなたがつけ入る隙はないですよ」と一線を引いています。
縁を切りたいと思っても、職場の人間関係は、簡単に切れるものではありません。特に相手が上司や取引先であればなおさらです。だからこそ、「優しいけれど隙を見せない」対応が必要になります。

ケース7:名前を間違えられたとき。

「〇〇さん(間違えられた名前)は、今、外出していると思いますよ」
これもいいですね。相手の間違いを指摘しつつ、場の空気は壊しません。小さな笑いを起こす効果もあります。私も藤田さん、藤本さん、とさんざん間違えられてきましたので、最近は何とも思いませんが(笑)

京都人の基本にある三つの型

本書では、京都人のコミュニケーションの基本として、 「挨拶」「クギを刺す」「断る」という3つのパターンが紹介されています。

たとえば挨拶の 「どこお行きやすの?」
これは行き先を聞いているわけではありません。「私は敵ではありませんよ」というサインを送っているのです。こう聞かれたら、正直に行き先を答える必要はありません。「ちょっとそこまで」と返せばOKです。

次に、クギの刺し方。浅知恵を披露する人に 「よう知ったはりますなあ」 「よう勉強したはりますなあ」 と言うのは、一見ほめているようですが、そうではありません。クギを刺されたことに相手が気づかないケースもありそうですが、「気づかなければ、それはそれでいい」というのが京都の人のスタンスのようです。

断るときによく使われるフレーズが、 「考えておきます」
基本的に、京都では「考えときます」は「NO」の意思表示。たとえば習い事などをやめるときも、「やめます」とは言わず、「しばらくお休みします」と伝えます。

職場にも必要な「沓脱石(くつぬぎいし)」の距離感

京都人のプライベートゾーンについてのエピソードも印象的です。
京都の町屋には、玄関に沓脱石という踏み台のような石があります。近所の人が訪ねてきても、家には上がらず、ここに足を置いて玄関先に腰かけて話をします。靴を脱いで家に上がるときは、相応の手土産が必要。手土産を持っていないときは、「どうぞ」と言われても断るのがマナーです。

京都人の「他人との距離感」は、職場でも参考になるのではないでしょうか。同じ職場で働く人とは毎日顔を合わせる間柄ですが、だからといってプライベートに踏み込んでいいわけではありません。靴を脱いで家に上がりこむような距離感ではなく、沓脱石で話すくらいの関係性でつき合うのがちょうどいい。その感覚を持つことは、ハラスメントを防ぐことにもつながると私は思っています。

大人の対応は、必ず周囲が見ている

 「相手を傷つけずに、でもしっかり線は引く」というのは、なかなか高度な技ですが、職場で実践すれば、きっと一目置かれると思います。
職場では、当事者だけでなく、周りの人の目があります。京都流の伝え方では本人には伝わらなくても、周囲の人たちはそのやりとりをちゃんと見聞きしています。あえて衝突を避け、言いにくいことをやんわり伝える。こうした対応をしていれば、「あの人は大人だな」「一枚上手だな」と周囲に人から評価されるはずです。また、こういう返し方もあるんだと、周囲も学ぶはずです。

是非、本書を読んで、職場の中で活かしてみてください。

伝え方も大事。そして、人間関係に線を引く、境界線を引くことの重要性を、我慢をせずに、今こそ全員が認識し、守らなければならない。
本書を読んで、私は強くそう感じたのです。

参考文献:『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(中野信子著、日経BP)

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
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最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
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#管理職
#マネジメント
#ハラスメント

ルールだけでは、人は正しくならない ― 不正は、ルールでは止まらない。「ありがとう」が人の判断を変える理由

「これくらいならバレないだろう」
「忙しいし、面倒な作業を省いてもいいか」
「評価に関わるから、少しくらい盛っても…」

こうした”小さな不正”が積み重なると、組織の信頼は簡単に失われます。

どうやって人の誠実さを支え、倫理観を育てられるのか。これは長年のテーマであり、経営者にとって、「どうすれば不正を防げるのか」「どうすればエンゲージメントが高まるのか」大きな経営課題のひとつです。

多くの企業が選ぶ対策は、こうです。
・ルールを厳しくする
・監視を強める
・罰則を明確にする

どれも、不正を防ぐために必要な対策です。ただ、それだけでは人の行動が変わらないのもまた現実です。

感謝の気持ちは、不正行為を減らす

そんなとき、ある心理学の論文に出合いました。

アメリカ・ノースイースタン大学のDavid DeStenoらのチームが発表した論文「The Grateful Don’t Cheat: Gratitude as a Fount of Virtue」。

論文のタイトルを直訳すると、「感謝する人はズルをしない」。

その名の通り、驚くほどシンプルで、しかし深い示唆を持っています。

これまでは、感謝というと、助けてもらったらお返しをする、人間関係が円滑になる、といった「返礼行動」の文脈で語られることが多かったと思います。

ところがこの研究では、感謝にはもう一つ重要な働きがあると示されています。

それが、誘惑に負けにくくなる(自己コントロールが高まる) という点です。

不正というのは、多くの場合「悪意」も当然ですが、本当は間違っていると分かっているのに、誘惑に負けてつい手を出したり、自己の利益に流されることから起こることも多いものです。

「これくらい、バレないだろう」

「今回だけならいいか」

「自分だけが損をしている気がする」

そう思ったとき、不正を踏みとどまれるかどうか。その自己コントロール力に、感謝の感情が関わっているのです。
もう少し具体的に見ていきましょう。

実験から見えた、はっきりとした差

研究では、大学生を対象に「ズルをしようと思えばできる状況」を意図的につくりました。

「10分で終わる楽な課題」と、「45分かかる難しい課題」を用意して、どちらをやるかは仮想のコイン投げ装置で「ランダムに決まる」と説明しました。

実は、この装置は必ず45分の課題が出るように細工されています。つまり、短い課題を選んだ人は「ズルをした」ということがわかるのです。

結果は、驚くほど明確でした。

感謝の感情を喚起された人たちの不正率は2% と、ほとんどの人が不正をしなかったのです。

一方で、幸福の気持ちを喚起された人たちの不正率は16%。中立のグループの不正率は、17% でした。

「感謝」も「幸福」もポジティブな感情ですが、幸福感では不正は減りませんでした。これは、私にとって非常に興味深いポイントでした。

匿名の環境でも、感謝は効いていた

さらに研究チームは、オンライン上の匿名環境でも同様の実験を行っています。

顔も名前も分からない、誰にも見られていない状況でも、「感謝」を感じていた人たちは、不正をしにくいことがわかりました。

不正をしないのは、監視されているからではなかったのです。

また、どちらの実験でも、感謝の度合いが高い人ほど、正直に振る舞う確率が高くなることもわかりました。

なぜ感謝が、不正を遠ざけるのか

研究者たちは、感謝が「道徳規範を思い出させる」というトップダウン型の制御ではなく、「価値判断そのものを変える」ボトムアップ型の働きをしている、と説明しています。

感謝を感じている人は、「自分には居場所がある」「自分は支えられている」という意識を持ちます。

すると、「ズルをして得をする」という短絡的なメリットが魅力的に見えなくなり、長期的で倫理的な選択をしやすくなるのです。
これは、ルールで縛るのとはまったく違うアプローチといえますね。

不正が起きやすい組織の空気とは

研究からわかることは、「感謝が根づいた組織では、倫理が自然と底上げされる」 ということです。
不正が起きやすい組織には、共通する空気があります。

・余裕がない
・孤独感がある
・不信感がある
・自己肯定感が低い

こうした状態では、人はどうしても「ズルをして得をしよう」という短期的な判断に流されてしまいがちです。

一方で、お互いに感謝する文化がある組織では次のようなことが起こります。

・人間関係が安定する
・自己コントロールが保たれる
・正直であることのコストが下がる

このような状況で、人は長期的で倫理的な判断をすることができるようになるのです。

つまり、「感謝」→「自己コントロール向上」→「不正が心理的に魅力を失う」 という流れが起きているのです。

これは、罰則や注意喚起のような”外からの監視”ではなく、「本人の内側で価値判断が変わっている」 という点で、ビジネス現場でも非常に重要な意味を持ちます。

つまり、感謝は、”価値判断そのもの”を変える。
・不正のメリットが小さく見える
・正直に振る舞うことが自然に感じられる
・短期的利益より長期的な関係維持の価値が際立つ

という”内的な変化”が起こるのです。
これは、罰則や監視のような「コントロール型アプローチ」とは根本的に異なります。

罰則:「やったらダメだ」
監視:「見られている」
感謝:「ズルする必要がない」

この違いは非常に大きい。

管理や統制ではなく、個人の内部にある”倫理のエンジン”を回す感情。それがどうやら、感謝なんです。

「感謝しよう」のスローガンでは効果は薄い

では、感謝の文化はどのようにつくればいいのでしょうか。

感謝は、制度やスローガンで強制すると、たいてい形骸化します。

「感謝カードを書きなさい」
「『ありがとう』の言葉を言いましょう」

これだけで、感謝の文化が自然に育つとは思えません。

制度やスローガンをつくることよりも大事なのは、一人ひとり(特に管理職の人)が言葉と行動で示すこと だと私は思います。

・上司自身が感謝を(想って)口にする
・上司が部下に具体的な感謝を伝える「習慣」をつくる
・結果だけでなく、過程や姿勢を評価する
・相談や失敗が許される空気をつくる(あえて、心理的安全とか言わない(笑))

ただし、注意点があります。
感謝は”させる”ものではなく、”育つ”もの。

・感謝カードのノルマ化している会社
・感謝表彰の乱発
・感謝を強制する文化

これらは感謝が「業務」となり、全くの逆効果になることは言うまでもありません。

ポイントは、「自然に感謝を感じやすい組織構造」を設計すること。

しかしながら、言うは易く、行うは難し。
時間はかかるかもしれませんが、このような「静かな行動変容」が、お互いに感謝し合う文化をつくっていくのです。

感謝は、最もコストの低い「不正予防策」

組織の不正を防ぐには、もちろんコンプライアンス教育や監査は欠かせません。ただ、それにはコストも手間もかかります。

一方、感謝することは、ほとんどコストがかかりません。それでいて、人の価値判断そのものに作用します。

不正を防ぐだけでなく、組織への帰属意識を高め、離職率を下げる効果があることもわかっています。

組織に感謝の風土をつくることが、これからの倫理施策のスタンダードになっていくと私は思います。

そのためにできることは、まずは、小さなことにも「ありがとう」と感謝することです。

そのときに、ここだけは押さえて欲しいのですが、”ありがとう”ではなく”何にありがとうなのか”を必ず添えることです。

このことで、この「具体性がプラスの感情を生み出す」ことを知っておいてください。

感謝こそが、強い組織をつくる。

感謝は、人を誠実にします。誠実な人は、誘惑に負けにくいため、結果的に不正行為は確実に減少傾向に。

ポジティブな感情の中でも、幸福と感謝はまったく違う働きをします。

幸福:気分が良くなる
感謝:価値判断が変わる(行動が変わる)

この違いを理解したうえで、私たちは組織に「感謝が生まれる仕組み」を浸透させる必要があるのかもしれません。

それは、単なる優しさや道徳ではありません。

組織の信頼性を守り、コンプライアンス意識を高め、長期的に健全な文化をつくるための”科学的な方法”です。

あなたの会社では、今日、誰に感謝を伝えられますか?
その一言が、組織のコンプライアンス意識を高める最初の一歩になるかもしれません。

参考文献(Research)
DeSteno, D., et al. (2014). The Grateful Don’t Cheat: Gratitude as a Fount of Virtue. Psychological Science.
参考図書(Further Reading)

『THANKFULNESS 感謝脳』(樺沢紫苑・田代政貴 著/飛鳥新社)
※本稿は、上記の海外学術論文を一次資料として参照し、その知見をもとに筆者の視点で再構成したものである。
なお、「感謝」の効果や日常での実践方法については、一般向けの解説として上記書籍も参考になる。

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
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最後までお読みいただきありがとうございました。

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そんな思いで、このブログを書いています。

#管理職
#マネジメント
#ハラスメント

察してくれる前提が、すべてを壊す ― 「牛乳買ってきて」「資料作っといて」で伝わると思ってる人たち。家庭の「もやもや」は、職場で「も」起きてい

 先日、愛媛県企画振興部 男女参画課が発行している「これからの家事シェアスタイルブック」という冊子を目にする機会がありました。この冊子では、夫婦で家事を「分担」するのではなく「シェア」するためのヒントが掲載されています。
今回、なぜこの冊子を取り上げたのか?
紹介されている家庭の「もやもや」が、職場の上司と部下の関係にそっくりだからです。

家庭では
「期待した通りのことをしてくれない」
「せっかくやったのに、ダメ出しをされる」
「言われなくてもわかるだろう、と言われる」

職場では
「指示した通りにやってくれない」
「部下の仕事に何度もやり直しをさせる」
「これくらい察しろよ、と思ってしまう」

似ていますよね(笑)
こうした行き違いの多くは「言葉によるコミュニケーション不足」が原因です。そして、職場でこれが続くと、パワハラにつながったり、部下のモチベーションを下げたりする危険性があります。
家庭でのコミュニケーションに悩んでいる方は、ぜひこのスタイルブックを読んでみてください。職場でのパワハラ防止や部下育成にも応用できるヒントがたくさん詰まっています。

シャンプー補充してくれてる人、知ってますか?

気づいた人だけが負担を抱える構造

「名もなき家事」という言葉を聞いたことがありますか。
「掃除」「洗濯」「調理」などのいわゆる「名のある家事」ではないけれど、日々の生活に必要不可欠な細かい家事のことです。
「ポストから郵便物を取り出して分ける」 「トイレットペーパーがなくなったら取り換える」 「洗剤を詰め替える」
一つひとつの作業はそれほど時間も手間もかからないけれど、積み重なると1日でも膨大な量になります。
「そういえば、なくなりかけていたシャンプーがいつの間にか補充されている」
と思っている人は、誰がやってくれたのかを想像してみてください。詰替え用のシャンプーを買ってきて、空になった容器を洗って乾かし、こぼさないように補充するのは、意外と手間のかかる作業です。

職場にもある「名もなき仕事」—似ていますよね

「名もなき仕事」は、職場にもあります。
「コピー用紙を補充する」 「会議室のセッティングをする」 「電話をとる」 「議事録を作成する」
こういう仕事は、「気づいた人」がいつの間にかやってくれていたり、「若手社員など」がやるという暗黙のルールがある職場もいまだにあるようです。
家庭でも職場でも、構図は同じです。何が問題かというと、気づかないうちに特定の人が「名もなき仕事」に忙殺されてしまったり、「どうして私ばかり…」と不満を抱えたりすることです。
部下育成の観点からも、これは問題です。若手や特定の人だけに雑務が集中すると、本来やるべき成長につながる仕事に時間を使えなくなってしまいます。

リストアップして「見える化」する

愛媛県の『これからの家事シェアスタイルブック』では、「名もなき家事」への対策が紹介されています。
一つひとつの作業をリストアップして、現状、誰がやっているのか、これからは誰がやるのかを明確にするというものです。
実際にリストにしてみると、「毎日、こんなにたくさんの作業をやっているのか」と驚かされるはずです。

「察しろ」 「言わなくてもわかる」って、テレパシーではない

非言語コミュニケーションへの過信

「名もなき家事」や「名もなき仕事」を引き受けているのは、いわゆる「よく気がつく人」です。
家庭でも職場でも、言われる前に求められていることを察して行動できる、「非言語コミュニケーション」が得意な人は、「気がきく」「機転がいい」と評価され、頼りにされているのではないでしょうか。
私たちの社会では、「非言語コミュニケーション」が重視されがちです。
「以心伝心」や「阿吽の呼吸」は、ポジティブな意味で使われますし、大切な人とは「言葉にしなくてもわかり合える」「目と目で通じ合える」関係でありたいと思っている人は多いのではないでしょうか。
しかし、非言語コミュニケーションは誤解を生み、トラブルの元になります。
家庭では: 「それくらい言わなくてもわかるでしょ」
職場では: 「これくらい察しろよ」
という行き違いの多くが、言葉を使ってわかりやすく伝えていないことが原因で起こります。
特に職場では、これがパワハラにつながる危険性があります。

建設現場で炊き込みご飯を買ったら、めちゃくちゃ怒られた話

私が学生の頃の苦い思い出をご紹介します。
学生の頃、ビルの建設現場でアルバイトをしていたことがあります。
ある日、現場監督に呼ばれた私は、現金を渡されてこう言われました。
「弁当買ってこい、10人分、うまいのをな!」
まだスマホのない時代です。私は、知らない街を汗だくになって歩き回って、お弁当屋さんを探しました。ようやく見つけたお店でから揚げ弁当や幕の内弁当を選んでいると、お店の人が「今日は、炊き込みご飯がおいしいよ」と声をかけてくれたので、半分は炊き込みご飯にしました。
お昼休み、お弁当を配り終わったところへ怒号が浴びせられました。
「おい!なんで白飯じゃねえんだよ、それくらい言われなくてもわかるだろう、ふざけるな!」
当時19歳だった私は泣きそうな気持をこらえながら、自分の分のお弁当をかき込みました。ドキドキして味はわかりませんでした。午後の仕事が始まる前に、また現場監督が近づいてきたときは「もうダメだ、帰ろう」と思いましたが、現場監督が次のように一言。

「うめえじゃねえか、炊き込みご飯」

その言葉に、ホッとしたことを今でも、ありありと思い出します。
今となってはノスタルジックな思い出です。しかし、指示もしないで「言われなくてもわかるだろう」とダメ出しをする行為は、今ならパワハラと捉えかねません。
職場には、さまざまな人が集まっています。世代も違えば、それぞれに持っているバックグラウンドも違います。「以心伝心」や「暗黙のルール」は通用しません。
わかりやすい言葉を使い、言葉だけでは伝わりにくい場合は写真や動画を使って、相手に誤解のないように伝える必要があるときも。
これは、パワハラを防ぐためだけでなく、部下を適切に育成するためにも不可欠なことです。

家庭も職場もうまくいく5つの「伝え方」 5つのコツ

ここからは、この冊子で紹介されている事例をもとに、家庭でも職場でもうまくいくコミュニケーションのコツをご紹介します。それぞれが、パワハラ防止と部下育成にどう役立つかも解説します。

1.牛乳買ってきて」で揉める理由
—指示は、わかりやすく具体的に

【家庭の事例】 「買い物を頼んだら、想定外のものを買ってくる。」
これは、冊子に載っている事例です。

「牛乳買ってきて」と頼んだら、夫が普段家で飲んでいるのと違う銘柄の牛乳を買ってくるといったケースですね。妻にしてみれば、「いつも飲んでいるんだから、わざわざ言わなくてもわかるはず」と思うでしょうし、夫にしてみれば、「銘柄を指定してくれないとわからないよ」と言いたくなりますよね。
冊子に載っているアドバイスは、「買い物の内容を具体的に伝える」というもの。牛乳なら銘柄を指定したり、「特濃とか低脂肪とかではないもの。1ℓ230円以内で」と価格帯を伝えたりします。
「説明が難しいときは、写真を送るのも効果的」で、頼まれた側に対しては、指定のものがないときは相談するといい、とアドバイスをしています。
指示する側は、「わざわざ説明しなくても、これくらいわかるだろう」という目論見は捨てましょう。
「資料作っといて」ではなく、 「明日の会議用に、A4で3ページ以内、先月の売上データをグラフにまとめて、15時までに」というように、具体的に伝えることが大切です。
曖昧な指示で失敗させておいて「なんでできないんだ」と叱責するのは、典型的なパワハラの構図です。具体的な指示は、この構図を防ぎます。
明確な指示は、部下が何を期待されているかを理解し、自信を持って取り組める環境を作ります。成功体験を積み重ねることが、成長につながります。

2. 「あなたが洗うと二度手間だ」なんて言われたら落ち込む

—仕事を任せたら「ダメ出し」はしない
【家庭の事例】 冊子には、こんな事例も載っています。せっかく食器を洗ったのに、パートナーに「二度手間だ」などと言われたら、「だったらもうやらないよ」とやる気を失ってしまいますよね。
冊子には、食器の洗い方について「双方が納得できる着地点を共有する」というアドバイスが紹介されています。
確かに、家事に「正解」はなく、「どこまできれいにしたいか」という基準は人によって異なります。「洗剤を使うか使わないか」「布巾で拭くか、自然乾燥か」などの手順をすり合わせ、お互いの着地点を共有することで、行き違いを防ぐことができます。
職場でも同じです。 「任せると決めたら、ダメ出しはしない」ということが重要です。
職場で上司に「任せるよ」と言われて取り組んでいる仕事に、途中であれこれ口を出されたり、あとからダメ出しをされたりしたら、やる気が失せてしまいますよね。
ある人が、上司に任された仕事を仕上げて提出したら、何度もダメ出しをされて、上司が気に入るものができるまでやり直しをさせられたそうです。
「これでは、上司に答え合わせをされているようなもの」と彼はこぼしていました。
任せておきながら執拗にダメ出しを繰り返す行為は、精神的な攻撃としてパワハラと認定される可能性があります。事前に基準をすり合わせることで、これを防げます。
任せられた仕事を自分の判断で進められることは、部下の自律性と責任感を育てます。失敗から学ぶ機会も、成長には不可欠です。

3. 「作ってと言うから作っているのに、あれこれ文句を言われる」
—ネガティブなフィードバックこそ 「その場で、短く」


【家庭の事例】 料理を作ってもらっておきながら文句を言うなんて、とんでもないと思いますが、まだまだこういう夫がいるとのこと。しかも、多くの場合は悪気はなく、「もっと料理がうまくなるように、オレが言ってやらないと」と使命感を抱いていたりするようで・・・・
冊子では、「『どうしたらおいしくなるか』提案してもらう」というアドバイスが紹介されています。
確かに、家庭でも職場でも、よりよいものを作るためにはフィードバックは必要です。ただし、相手に「文句」や「ダメ出し」と受け取られてしまっては意味がありません。
ネガティブなフィードバックは、「その場で短く」伝えるのがポイントです。時間がたってからくどくどと言われても、心に響きませんよね。注意やダメ出しは、つい話が長くなりがちですが、できるだけ短く伝え、引きずらないようにしましょう。
ネガティブなフィードバックをした後は、その場で「おつかれさま」「がんばったね」とフォローすることも大切です。
長時間の叱責や、過去の失敗を蒸し返すような行為は、パワハラになり得ます。「その場で、短く」は、これを防ぐ鉄則です。
タイムリーなフィードバックは、部下が何を改善すべきかを明確に理解し、次に活かすことができます。フォローの言葉は、心理的安全性を保ちます。

4. 食器を洗っても 「ありがとう」がない!? 汚れがあれば 「ちゃんと洗って!」  —まず、してくれたことに感謝する

【家庭でも職場でも】 ポジティブなフィードバックは、その場でこまめにすると効果的です。
簡単なことのようですが、「気軽にほめること」が苦手な上司は意外と多いです。「機会があったらほめてやろう」などと思っているうちに忘れてしまって、気づくとダメ出しばかりしている…という人、いますよね。
家庭でも、パートナーが洗濯物をたたんでくれたときに「ありがとう」と言えず、汚れが落ちていないときだけ「ちゃんと洗って」と言ってしまう…似ていませんか。
「助かったよ」 「いいアイディアだね」 「がんばっているね」
など、思いついたらその場で伝えるのがいちばんです。「今度、ゆっくりほめてやろう」と思っていると、たいてい忘れます。
ポジティブなコミュニケーションが日常的にあることで、職場の雰囲気が良くなり、パワハラが起きにくい環境になります。
こまめな承認は、部下のモチベーションを高め、「もっと頑張ろう」という意欲を引き出します。承認欲求が満たされることは、成長の大きな原動力です。

5. 「今日どうだった?」と聞いておきながら、自分の話ばかりしてしまう人
—自分が話し過ぎず、相手に話してもらう


【家庭でも職場でも】 たとえば、せっかく定期的にone on oneで話す機会を作っているのに、自分のことばかり話してしまう上司は意外と多いです。できるだけ相手に話させるように心がけましょう。
家庭でも、「今日どうだった?」と聞いておきながら、自分の話ばかりしてしまうことはありませんか。相手の話をじっくり聞く姿勢が、コミュニケーションを深めます。
一方的に話し続ける、相手の話を遮るといった行為も、精神的な圧迫になり得ます。傾聴の姿勢は、対等な関係性を示します。
自分の考えを言語化する機会は、部下の思考力を鍛えます。また、上司に話を聞いてもらえたという経験は、信頼関係を築き、部下の心理的安全性を高めます。

おわりに
「以心伝心」は言葉があってこそ—職場も家庭も、言葉で築く良い関係

とはいえ、実際には「言葉にしなくても伝わる」ことはあります。
普段からよく会話をしている夫婦なら、「今週末は、彼女(彼)は家でゆっくり過ごしたいかもしれないな」と相手の気持ちを察することができる場合もあります。職場でも、いつもよく話し合いをしている上司と部下なら、「上司はA案よりB案を推しているな」という意向を予測できることもあるでしょう。
「以心伝心」は、普段から言葉によるコミュニケーションを多くとっているからこそ成立します。
テレパシーではないのですから、普段からろくに会話をしていない相手の気持ちがわかるはずがありません。
こうして考えてみると、家庭でも職場でも、仕事をシェアする上で大切なのはやっぱり「言葉によるコミュニケーション」だということがわかります。言葉によるコミュニケーションを増やすことが、お互いの理解を深め、よい関係を築く第一歩です。
家庭でも職場でも、ご紹介したポイントを、ぜひみなさんも意識してみてください。
パワハラのない職場、何よりも円満な家庭のために


参考資料: 愛媛県企画振興部 男女参画課 発行「これからの家事シェアスタイルブック」 URL
https://www.pref.ehime.jp/page/97885.html

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
年間約200件の研修を企画・実施し、これまで約30万人以上が受講。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
このブログでは、社会・組織・個人という三つの視点から、
ハラスメントの背景や構造について考えています。
職場には、「わかっているはず」という思い込みや、
言葉にしなくても伝わるはずだという空気があります。
しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。
このブログでは、そんな職場にある“見えにくいズレ”をほどきながら、

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そんな思いで、このブログを書いています。

#管理職
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その間違い、笑うか拾うか ― 「100万回死んだねこ」で本を探したら、図書館員に笑われた話 ― その裏にある、職場の””あるある””問題

「すみません、『100万回死んだねこ』ってありますか?」
図書館のカウンターで、そう尋ねた利用者がいたそうです。
正しくは『100万回生きたねこ』。
でも、この”覚え違い”、めちゃくちゃわかりませんか?

福井県立図書館が記録した「覚え違いタイトル集」が最高すぎる

『100万回 死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県立図書館 編/講談社文庫)


この本、図書館カウンターで日々繰り広げられる”うろ覚えタイトル”との格闘を、愛情込めてまとめたものなんです。

他にも:
• 『おい桐島、お前部活やめるのか?』→ 正解:『桐島、部活やめるってよ』
• 『渋谷に朝帰り』→ 正解:『渋谷に里帰り』

どれも惜しい! けど、なんかわかる!(笑)

福井県立図書館の職員さんたちは、こうした覚え違いを「おもっしぇー!」
(福井弁で”おもしろい”)と笑いながら、丁寧に対応してきたそうです。

バカにするでもなく、見下すでもなく。ただ一緒に笑って、正解にたどり着く。
この姿勢、実は職場の人間関係にめちゃくちゃ必要なやつじゃないですか?

「思い込み」は、誰にでもある

タイトルの覚え違いも、仕事での勘違いも、根っこは同じ。

人は誰しも、自分では気づかない”思い込み”をしてしまう生き物なんです。

心理学では、これを「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」と呼びます。

「こうに決まってる」「普通はこうだ」――そんな無意識の決めつけが、人間関係のすれ違いや、ハラスメントの引き金になってしまうんです。

職場に潜む”思い込み”、あなたも言ってない?

たとえば、こんなセリフ。

• 「電話は若手が真っ先にとるべき」
• 「雑用や飲み会の幹事は、若手の仕事」
• 「子育て中の社員には、海外出張は任せられない」

悪気はないんです。それぞれに理由もある。

でも、この“決めつけ”が積み重なると、相手を傷つけたり、組織の活力を奪ったりするんですよね。

無意識の思い込み、4つのパターン


私の経験上、職場でトラブルを生む「思い込み」には、だいたい4つのパターンがあります

「普通はこうだ」「当たり前だ」 ― 価値観の決めつけ

「どうせできない」「無理だろう」 ― 能力への決めつけ

「そんなはずはない」 ― 解釈の決めつけ

「こうあるべき」 ― 理想の決めつけ

こうした決めつけが重なると、知らず知らずのうちに相手の可能性を狭めてしまうんです。

正解にたどり着くには、”対話”しかない

福井県立図書館の職員さんたちが素晴らしいのは、覚え違いを笑い飛ばすだけじゃなく、「丁寧な対話」を通じて正解を導き出していること。

「『100万回死んだねこ』という本ありますか?」と聞かれたら

「著者はわかりますか?」

「どこで知りましたか?」

「どんな内容でしたか?」

そうやって、少しずつ“本当に探している本”にたどり着く

これ、職場でも全く同じじゃないですか?

「子育て中の社員に海外出張は無理だろう」と決めつける前に、
「出張について、どう考えてる?」と聞いてみる。

すると

• 「今は難しいです」と答える人もいれば、
• 「家族の協力体制が整っているから問題ありません」と言う人もいる。

人の事情も考え方も、聞いてみなければわからないんです。

“思い込み”を責めるんじゃなくて、気づくこと

アンコンシャス・バイアスは、誰にでもあります。

それを”悪”と決めつけるんじゃなくて、
「自分の中にも思い込みがあるかもしれない」と気づくことが大切。

相手との対話の中で、自分の思い込みに気づき、
「あ、そう考える人もいるんだ」と受け止める。

その姿勢こそ、ハラスメントを減らし、職場の信頼関係を強くする第一歩だと思います。

“おもっしぇー”心を、職場にも

覚え違いを「おもっしぇー」と笑いながら、そこに人間の温かさを見いだす。

バカにしない。見下さない。一緒に笑って、正解を探す。

人は思い込みを持つ生き物。
だからこそ、笑いながら、学びながら、互いに理解し合う。

その積み重ねが、信頼と安心の職場文化をつくっていくんだと思います。


本書の最後には、こんな一文。

そして、今回ご紹介した本を探すときはぜひご注意を。
「『100万回死んだねこ』ありますか?」と聞くと、児童書コーナーに案内されるかもしれません。

私も気を付けたいと思います。

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怒りの原因は、部下じゃなく栄養かもしれない ― パワハラ上司は野菜不足!?

 最近、おもしろい本を読みました。内藤誼人さんの『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』という本です。スタンフォード、ハーバード、イェールといった大学の心理学研究をわかりやすくまとめた一冊で、人を理解するうえで、非常に参考になる内容です。

その中で、特に印象に残った研究があります。 それは、「キレやすいのは栄養不足が原因」というものです。

栄養が足りないと、人は攻撃的になる?

 イギリス・サリー大学の研究者ベルナルド・ゲッシュ氏が行なった実験があります。囚人231人を2つのグループに分け、半数には栄養バランスのとれたサプリメントを、もう半数には「サプリメント」と偽って、何の栄養もない錠剤を142日間飲んでもらいました。

すると驚くべきことに、栄養を補ったグループでは「暴力」や「命令への不服従」といった行動が35.1%減少したのです。一方、栄養を補わなかったグループでは、わずか6.7%しか減らなかったそうです。

つまり、きちんと栄養をとることで、人の気持ちは穏やかになるということ。 逆に、栄養が不足していると、イライラしたり、攻撃的になったりする可能性があるということです。

「パワハラ上司」が生まれる理由は食生活の乱れ!?

  私たちの会社でも、ハラスメント研修を行う中で、「なぜ人は他人にきつく当たってしまうのか」という根本的なテーマをよく話します。 もちろん、その方の性格も関係しますが、一方で、「食生活の乱れ」が潜んでいるかもしれません。

 「なんだか最近イライラするな」と感じたとき、あなたはどうしていますか? 原因を部下や職場のせいにする前に、まずは「自分の栄養状態を見直す」ことも大切です。ビタミンやミネラルを含む野菜や果物をしっかり摂ることで、思考が穏やかになり、人への対応に余裕が生まれるようなんです。

イライラしている人ほど、野菜を食べない

  書籍によると、おもしろいことに、コーネル大学とリーズ大学の研究では、ストレスが多い人ほど野菜やフルーツの摂取量が少ないという結果も出ています。
つまり、イライラしているときほど、つい甘いものや脂っこい食事に手を伸ばしてしまう。けれど、それがまた心を不安定にして、イライラしやすくなる。まさに悪循環です。

「じゃあ、何を食べればいいの?」

 栄養に関する情報はたくさんありますが、研究で効果が確認されているのは、ビタミンやミネラルなどの栄養素です。特に以下のような食材を意識して摂ることがおすすめです。
 

◎ 緑黄色野菜 ほうれん草、ブロッコリー、にんじんなど。ビタミンB群やマグネシウムが豊富で、神経の働きを整えてくれます。

◎ 果物 バナナ、りんご、ベリー類など。ビタミンCやカリウムが、ストレス対策に役立ちます。
◎ ナッツ類 アーモンドやくるみ。マグネシウムや良質な脂質が心を落ち着かせます。
◎ 青魚 サバ、イワシなど。オメガ3脂肪酸が脳の健康をサポートします。

忙しい人でもできる工夫 「毎日バランスよく料理するのは難しい…」という方も多いでしょう。

そんなときは、
• コンビニのサラダやカット野菜を活用する

• 果物は、なるべくそのまま食べる
 (スムージーよりも糖質が少ない)

• ランチに定食を選んで、小鉢を一品増やす

といった小さな工夫から始めてみてください。

栄養は「人間関係の土台」

 人間関係のトラブルやハラスメントの背景には、心理的・社会的要因だけでなく、身体的な要因も疑ってみてはいかがでしょう?「心と体はつながっている」という言葉は、まさにその通りですから。

社員のメンタルケアを考えるうえでも、食事や睡眠、運動といった「生活習慣の土台」を整えることは、非常に重要です。

もし、あなたの周りに、いつもピリピリしている上司や同僚がいたら、、、、
もしかしたら、「野菜が足りない」のかもしれません。

ピリピリしても、いなくても、健康の為に、あなたも 明日から試してみませんか?


世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100 総合法制出版 著 内藤 誼人 

2021年9月21日出版 是非、お読みください!!

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藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
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#上司
#マネジメント
#パワハラ

正しくても、人は壊れる ― 「カンニングを叱られた高校生に何が起きたのか? 職場にも通じる『指導の落とし穴』」

「指導死」という言葉を知っていますか?

学校などで教員による不適切な指導をきっかけに、子どもが命を絶つこと——それを「指導死」と呼びそうです。重いテーマですが、この問題は企業におけるハラスメント対策と同じ構造を持っています。だからこそ、取り上げたいと思います。

1年前、大阪の有名進学校で起きたこと

2025年5月、読売テレビが衝撃的な特集を放送しました。
「繰り返される〝指導死〟『卑怯者です』カンニングの指導後に息子は命を絶った…両親の叫びと現役教員の本音 生徒指導はどうあるべきか?」
取り上げられたのは、1年前に大阪の有名進学校で起きた事例です。定期テストでカンニングが発覚した男子高校生が、学校での指導直後に自ら命を絶ったのです。
両親によると、教員に促されて彼は「卑怯者です」と言わされたそうです。さらに、全科目0点、8日間の自宅謹慎、写経80巻などの処分が言い渡されました。
遺書にはこう綴られていました。
「死ぬという恐怖よりも、このまま周りから学校内から『卑怯者』と思われながら生きていく方が怖くなってきました」

「予測は困難だった」で済まされるのか

学校側が設置した第三者委員会は、「『卑怯者』という表現など、指導には問題がある」と指摘しました。しかし「自殺の原因とは認定できない」と結論付けています。
両親は「不適切な指導が原因で息子は自死した」として学校側を提訴。裁判は双方の主張が対立したまま、1年が過ぎています。
学校側の主張は、「同様の指導を受けた生徒が自死したことはなく、予測は困難だった」というものです。
わが子を亡くした両親が、それでも「指導は必要」だと声を振り絞る姿に胸が痛みます。両親が問いかけているのは、「指導のあり方」なのです。

「指導死」の疑い、過去33年間で97件

専門家らによる調査によると、「指導死」の疑いがある事例は1989年〜2022年で97件に上ります。
この事態を受け、文部科学省は2022年に生徒指導の手引き「生徒指導提要」を12年ぶりに改訂。「教職員による不適切な指導が、不登校や自殺のきっかけになる場合もある」ことが初めて明記されました。

教員たちの本音——アンケートから見えた「指導への不安」

教育現場では「適切な指導」のあり方をどう捉えているのか。番組取材班は関西の公立・私立高校5校の教員にアンケート調査を実施しました。一部をご紹介します。

回答者:27人(20代〜50代、教職員歴4年〜37年、男性24人・女性3人)

まず、「生徒指導で大切にしていること」「難しいと思うこと」について聞きました。


「起きた事案だけで判断せず、その行為に至った経緯や生育環境、最近の様子など、背景を把握したうえで必要な指導を行うよう心がけている」(50代男性)
「ルールとマナーを守ること。まじめに頑張っている生徒がおろそかにならないこと。世の中や学校のルールよりも、個性というわがままを押し通す大人が増えたこと」(50代男性)
「生徒が将来、社会で生きていくことができる力を身につけさせることを大切にしている。時代の変化もあり、社会や学校、生徒、保護者との関係をうまくつないでいくことに難しさを感じる」(30代男性)
「生徒、教師、保護者など関係するすべての人間が納得できる指導を心がけています。それぞれの立場や思いがあり、思うようにはならないこともある点が難しいです」(50代女性)


これらの回答からわかるのは、教員たちが生徒指導に大きな難しさを感じているということです。
特に目立つのが、「不安」「心配」という言葉です。それだけ自分の指導に自信が持てないということでしょう。

これは学校だけの問題ではない

そして、これは学校だけで起きている問題ではありません。企業でも、部下への指導に悩む上司と同じ構図です。


「強めに指導した後、次の日学校にちゃんと来てくれるか、真っすぐ家に帰るか不安になる」(40代男性)
大切なのは、その日のうちにフォローをすることです。
学校でも会社でも、指導することは必要です。しかし、叱りっぱなしにするのは指導ではありません。また、「強めの指導」とはどの程度を指すのか、という問題もあります。
ある知人の息子さんが通う公立中学校では、生徒を叱ると教員から親にその日のうちに電話がかかってきて、「こういう理由で息子さんを叱りました」と説明があるそうです。


「生徒の顔色や保護者の顔色を気にしながら指導をしないといけない時代」(30代男性)
このように回答している教員もいますが、相手の気持ちを想像し、フォローすることは、本来いつの時代でも必要なことです。


「本当にこのルールは必要なのか、それを守らせることはその子の将来に役立つことになるのだろうかと考えることはあります」(40代男性)
ルールそのものへの迷いを感じている教員もいます。
学校にも会社にも、使われていないルールがたくさんあるのではないでしょうか。誰も守っていないルールに意味はありません。ルールブックは、単なる「紙」です。

学校にも会社にもまん延する「指導したら損?」という空気

「指導死」という言葉が使われることで、指導そのものがしにくくなると感じている教員もいます。


「正直、学校現場には『指導したら損』という雰囲気もあります。生徒や保護者に強く追及され、頑張る人ほどつらい思いをしています。そのような言葉が広がれば、その空気が助長される気もします」(30代男性)
「生徒の命は大切です。そう思っていない教師はいないと思います。指導する中で生徒たちが『指導死』という言葉を盾にすることで、指導がやりにくくなったり、若い先生たちがやる気をなくしてしまったりすることを心配しています」(40代女性)
「指導することは教師の大切な仕事だと私は考える。この言葉が独り歩きし、指導=悪という印象になると、教師は指導しなくなる」(50代男性)


「指導したら損」という空気は、企業にもまん延しています。
「ヘタに指導をするとパワハラと言われる。だったら指導をしないほうがいい」と考える上司が増えています。しかし、指導そのものを放棄するのは、「適切な指導とは何か」という議論からの逃げでしかありません。

それでも「適切な指導」を考える人たちがいる

もちろん、中には「適切な指導」について真剣に考えている教員もいます。


「多くの教員が経験のないことだけに、日常の指導の先に『死』があることに認識が足りない」(40代男性)
「死に追い込んでしまうようなものは指導とは呼べないと感じます」(30代男性)
「大人の言葉ですごく傷つき命を落としてしまう子がいるのは非常に悲しいことで、あってはならないと思います。指導する側はそんな気はなくても死を選んでしまうことを頭に入れて指導していく必要があると思います」(30代女性)


指導者が自覚すべきこと

学校でも会社でも、教員や上司による「指導」や何気ない一言が、生徒や部下の心を深く傷つける場合があります。
パワハラは、被害者をメンタル疾患に追い込み、最悪、命を奪います。
不適切な指導が人の命を奪うことがあるというリスク。そして、自分が発する部下に向ける「コトバ」をより丁寧に選ぶことは、ますます、指導者側は自覚していなければいけない- あらためてご紹介した出来事から私はそう思います。

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
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ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
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言葉にしなくても伝わるはずだという空気があります。
しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。
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よりよい対話と関係を生み出すヒントを発信していきます。
職場の「わかっているはず」を、言葉に変える。
そんな思いで、このブログを書いています。

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そのノリ、誰かは笑えていない ― 「男同士だから」が最も危ない!学校も職場も同じ。性的いじめ、セクハラを生む「ノリ」の正体。

セクハラ研修の現場で見えてきた「盲点」


近年、セクハラ対策の研修依頼が急増しています。かつては「男性から女性へ」というイメージが強かったセクハラですが、実態は違います。女性から男性、男性から男性、女性から女性——性別を問わず、あらゆる組み合わせでセクハラは発生しています。
特に見過ごされがちなのが、男性から男性への性的いじめ・セクハラです。「同性だから」「ふざけているだけ」という言い訳のもと、深刻な被害が隠されているのです。

NHKが報じた衝撃の実態—閉鎖空間で起きた性的いじめ

2025年7月、NHKで放送された「ザ・ライフ 閉ざされた世界で~男性と性的いじめ~」(NHK福岡放送局制作)は、この問題の深刻さを浮き彫りにしました。
番組が取り上げたのは、東海大学付属福岡高校の男子剣道部で6年前に起きた事件です。当時高校1年生だった男子生徒が、部室で性的いじめの被害を受けました。畳に粘着テープで貼り付けられ、10人ほどの生徒が見ている前で上級生に下着を下ろされ、わいせつな行為を受けたのです。さらにその様子がSNSでさらされるという、極めて陰湿な事件でした。

「悪ふざけ」がエスカレートする構造

男性から男性への性的いじめには、いくつかの特徴があります。
• 集団で行われるケースが多い
• 閉鎖的な空間(部室、寮、男性だけの職場など)で発生
• 「男子校ノリ」「体育会系ノリ」の延長として始まる
• 悪ふざけが次第にエスカレートしていく
番組で取り上げられたケースも、剣道部の部室という閉鎖空間で起きました。被害生徒は剣道をやりたくて推薦で入学し、寮生活を送っていました。逃げ場のない環境だったのです。

加害者に自覚がない恐ろしさ

男性同士のいじめは、「ふざけているつもりだった」「みんなも面白がっていると思った」と軽く捉えられがちです。その結果、加害者側に「いじめをしている」という自覚が生まれにくいのです。
周囲の人間も、その場のノリで笑って見ていたり、見て見ぬふりをしたりします。それが、いじめをさらに助長させます。
「ふざけているつもりだった」「そんなつもりはなかった」
この加害者の言い訳、職場のセクハラ加害者とまったく同じではないでしょうか。

被害者の心に残る、消えない傷

加害者にとってはノリでやっている悪ふざけの延長でも、被害者にとってはまったく違います。性的いじめは、被害者の心を深く傷つけ、トラウマとして残り、命に関わることすらあります。
実際、剣道部で性的いじめを受けた少年は、その後自ら命を絶ってしまいました。彼は上級生からの厳しい指導やいじめについては親に打ち明けていましたが、性的いじめを受けていたことは誰にも話せなかったのです。

「遊びの顔をした性加害」という本質

なぜ男性の集団で性的いじめが起こりやすいのか。番組には、「男性性」と性的いじめの関係に着目して執筆活動をしている清田隆之さんが登場しました。
清田さんがヒアリングしたところ、多くの男性が性的いじめやそれにつながる経験をしているそうです。清田さん自身も中高6年間を男子校で過ごし、男子生徒同士がノリで体を触ったり、服を脱がせたりする光景を目にしてきました。
清田さんは、このような行為を「遊びの顔をした性加害」と表現します。その背景には、「多くの男性が、特有のノリに縛られている」ことがあるといいます。
だから、悪ふざけの延長として行われる性的いじめに対して「嫌だ」と言えない。見ている人たちも「それはおかしい」と声を上げることができないのです。

学生時代だけの問題ではない

男性同士の性的嫌がらせ行為を「仲間内のノリ」として軽く見る傾向は、学生時代だけではありません。社会人の職場でも「男子校ノリ」「体育会系ノリ」は確実に存在します。
学生時代に形成された「ノリに従う文化」が、そのまま職場に持ち込まれているのです。

希望の光—男子校が始めた「男性性」を問う授業

番組で印象的だったのは、京都市にある中高一貫の男子校、洛星高校の取り組みです。同校では5年ほど前から「男らしさについて考える授業」を取り入れています。
授業の一環として、男子同士のノリで起こる性暴力を想定したワークショップが行われています。そのシチュエーションは以下のようなものです。


【ワークショップのシナリオ】
体育の授業後、更衣室で着替えている男子生徒A君を、男子生徒B君がスマホで撮影するふりをして、冗談めかして「LINEでばらまく」と言います。A君の表情は曇っています。
「その場にいるあなたはどうするか」
生徒一人ひとりがこの問いに向き合い、話し合います。


これは、性的いじめやハラスメントにつながる行為を目にしたとき、どう行動するかを学ぶ取り組みです。
居合わせた人が行為者に注意したり、外部の人に協力を求めたりすることで、いじめやハラスメントを回避できることは頭ではわかっています。大切なのは、実際に行動に移すこと。こうしたワークショップは海外の大学や企業で取り入れられ、効果を上げています。

洛星高校は京都大学などの難関大学に多くの学生を送り出している進学校です。将来社会に出て活躍する若者たちが、早い段階で「男性性」と向き合い、性的いじめやハラスメントを回避する方法を学ぶ——この取り組みには大きな意味があります。
大人も見習うべきではないでしょうか。

「正論が通る空気」をどう作るか

たった1人が声を上げるだけでは、ハラスメントを止めることは難しいのが現実です。
しかし、その場にいる全員が「それはおかしい」「やめたほうがいい」と正論を息を吸って吐くように、当然かのごとく言える環境があれば、空気は変わります。
学校でも会社でも、その場のノリに流されたり、同調圧力に屈したりすることなく、「正論」を言える雰囲気を作ることが、性的いじめやハラスメントをなくすことにつながります。

そのために必要なのは「アップデート」

正論がまかり通る教室や職場の空気を作るには、一人ひとりの問題意識のアップデートが必要なのです。
• 「男同士だから大丈夫」という思い込みを疑う
• 傍観者にならず、声を上げる方法
• 組織として「正論が通る文化」を育てる 他
そのアップデートの方法を、当社の研修でご紹介します。

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
年間約200件の研修を企画・実施し、これまで約30万人以上が受講。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
このブログでは、社会・組織・個人という三つの視点から、
ハラスメントの背景や構造について考えています。
職場には、「わかっているはず」という思い込みや、
言葉にしなくても伝わるはずだという空気があります。
しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。
このブログでは、そんな職場にある“見えにくいズレ”をほどきながら、

よりよい対話と関係を生み出すヒントを発信していきます。
職場の「わかっているはず」を、言葉に変える。
そんな思いで、このブログを書いています。

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#マネジメント
#ハラスメント

上司に弱音を吐けない職場がパワハラを生む?感情を表現する「言葉」を持たない部下たち(後編)

職場の悩み相談が5倍に増えたことを公表した企業

数年前、スギホールディングス株式会社がIR活動の一環として、「職場の悩み・何でも相談ダイヤル」に寄せられた相談件数が右肩上がりで増えていることを公表しました。2018年には269件だった相談が、2022年には1585件と、5倍以上に増えているそうです。

一般的には、「社員の悩み相談が増える」のはネガティブなことと捉えられ、外部には知られたくないものと考えられがちです。
しかし、職場で悩みや困りごとがあったときに、会社へ相談しやすい仕組みがあるということは、安心して働ける環境がある証拠とも言えます。「相談すれば対応してもらえる」と社員が感じられることは、会社への信頼にもつながるはずです。

こうした相談の増加を前向きにとらえ、公表したスギホールディングスの姿勢からは、学べる点が多いのではないでしょうか。

「職場では弱音を吐いてはいけない」という心のバイアス

現在、多くの企業が社員のメンタルヘルス対策として、外部のカウンセラーに相談できる仕組みを設けています。ところが、そうした制度が実際にはあまり活用されていないケースも少なくありません。

その背景には、利用する側の心の中に、
「職場で弱音を吐くのは良くない」
「仕事に感情を持ち込むべきではない」
といった思い込みや固定観念があることが考えられます。

「コミュニケーションが大切」と言われながら、職場では「弱音」や「悩み」を口にすることがタブー視される傾向があります。そうした雰囲気の中では、万が一、カウンセリングを受けていると知られたときに、「あの人、何かあったの?」という目で見られてしまうのでは、と感じる人も多いでしょう。
悩みがあっても相談できないのは、制度の問題というより、心にブレーキがかかってしまうからなのです。

会議でも意見が対立することを避ける傾向が


日本の職場では、上司も部下も、弱音を吐くことに慣れていません。「グチやつらさは言わず、我慢するのが当たり前」といった空気が、まだ根強く残っています。

感情を言葉にして伝え合うどころか、会議の場で誰かと違う意見を述べることすら避ける人も多くいます。本来、意見の違いは悪いことではないのに、「対立を避けたい」という気持ちが先に立ち、どちらかが折れたり我慢したりしてしまいがちです。
その結果、不満やストレスがたまりやすくなるのです。

互いの考えや感情を率直に伝え合うことは、対等な人間関係を築くために欠かせない大切なプロセスです。対立を恐れず、きちんと話し合える場が必要です。

効果的なのは、本当に信用できる人との対話

そのためにまず必要なのが、自分の考えや感情を言葉にする習慣です。学歴や知識が豊富でも、自分の感情をうまく言語化できないまま大人になる人は少なくありません。身体と同じで、使わない能力は衰えてしまいます。
言葉にならなかったネガティブな感情は、心の中にたまり続け、やがて心や体の不調につながりかねません。

前回のブログでも紹介した、恐山菩提寺で院代(住職代理)を務める南直哉さんは、Yahoo!ニュースのインタビューで、
「言葉というのは、対話でしか成り立たない」
と語っています。

南さんがすすめるのは、「淡い関係」が築ける相手との対話です。家族や親友のように近すぎる存在でなくても、会社の先輩や上司のように、信頼できる年上の相手に話を聴いてもらうことで、弱音を吐く練習になるというのです。

南さんによれば、SNSはただ一方的に気持ちを吐き出す場で、反応があったとしても、相手の性別や年齢もわからない関係では対話とは言えないと話していました。

弱音を吐いても、誰かに相談して助けを求めてもいい

高校時代にアメリカへ留学していた方が話してくれました。
「アメリカの高校では、何かあるとすぐに気軽にカウンセラーに相談する」とのこと。学校で恋愛の悩みさえも、お茶を飲みに行くような感覚でカウンセラーに話しができたそうです。スッキリして、まだ授業に意欲が湧いたとのこと。

社会に出る前から、悩みがあれば一人で抱え込まずに第三者に相談するという習慣が身についているのは、とても心強いことだと思います。

誰かに話すという行為は、自分の悩みや感情を言葉にすること。言葉にすることで、人に気持ちが伝わりやすくなるだけでなく、自分自身でも「本当はどう感じているのか」に気づきやすくなります。

たとえば、夫婦間の問題でも、第三者を交えて話すことでうまく進む場合があります。日本でも、職場や学校、家庭のことを、もっと気軽に第三者へ相談できることが「あたりまえ」になるといいと思います。

つらさや苦しさを抱え込む時代はもう終わり

「私さえ我慢すればいい」
「男だから自分で何とかしないと」
そうやって、つらさや苦しさを抱え込む時代は、もう終わったのです。

自分の気持ちを言葉にして、「嫌なものは嫌」「つらいものはつらい」と口に出してもいい。
困ったときは「助けて」と声を上げれば、きっと助けてくれる人がいます。

「つらいときは、誰かに弱音を吐いてもいい」
「相談して、助けを求めてもいい」

そう、自分自身に許してあげてみませんか?

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
年間約200件の研修を企画・実施し、これまで約30万人以上が受講。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
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言葉にしなくても伝わるはずだという空気があります。
しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。
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#上司
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#パワハラ

上司に弱音を吐けない職場がパワハラを生む?感情を表現する「言葉」を持たない部下たち(前編)

職場で気軽に「死ぬ」という言葉を使う!?

最近、企業の方からこんな話を聞きます。
「最近の若い人は、職場で気軽に『死ぬ』という言葉を使うんですよ」

「最近の若い者は…」で始まる若者批判は、昔から繰り返されてきたものです。
「言葉が乱れている」とか、「ボキャブラリーが乏しい」といった指摘も、50代以上の世代の方なら若い頃に言われた記憶があるのではないでしょうか。
例えば、1990年代には「チョベリバ」(超ベリーバッド)なんて、今ではすっかり「死語」です。

それでも、「死ぬ」とはやはり物騒。
どうして今の若者は、そんな言葉を職場で使うのでしょうか。

「私は自己肯定感が低い」という若者たち

あくまで推測ですが、一因として、自分は自己肯定感が低いと自覚しているケースが多いことが関係しているのかもしれません。ではなぜ、そう感じるのでしょうか?

その理由を私なりに分析してみると、1つは彼らが「この先、日本の景気や社会がどんどんよくなる」という実感を持ったことがないから。
時代の空気から受ける影響は、少なからずあるはずです。

もう1つは、SNSの影響。
スマホを覗けば、そこには誰かのキラキラした日常やポジティブな言葉があふれている。それに比べたら、自分の日常が色あせて見えたとしても無理はありません。関係性の薄い知り合いや、会ったこともない人と自分を比較して、「自分なんてダメだ」と思わされてしまうのは、SNSの負の側面といえるかもしれません。

ネガティブな感情を適切な言葉で表現できない

「死ぬ」と言ってしまうのは、適切な言葉が見つからないから。
「死ぬ」と口にしても、本当にそうなりたいわけではない。
ただ、つらい感情をどう表現すればよいかわからず、結果として極端な言葉を使ってしまう。そんなケースが少なくないように感じます。
このように彼らが「死ぬ」と口にするとき、必ずしも言葉通りの意味を伝えたいわけではないのだと思います。

いわゆるいい大学を出て、いい会社に勤める人でも、自分の感情を言葉で表現するのが苦手な人がたくさんいます。知識もあるし、論理的思考も得意。だから仕事の話はスラスラできるのに、自分の感情を表す言葉はうまく出てこない。そういう人は、年代に問わず共通の課題のように感じます。

特に職場では、「つらい」「悲しい」などのネガティブな感情は、表に出してはいけない考えられがちです。「プロらしくない」と思われます。仕事の場では、個人的な感情は自分の胸の中に押し込めておかなければならないもの。それは、若い世代だけではありません。
現在40代、50代の人たちも、さらにその上の世代の人たちも、個人的な感情を押し殺し、つらいときも歯を食いしばって耐えてきたのです。

適切な言葉を与えられずに押し殺された感情は、「死ぬ」というセンセーショナルな言葉となって、あふれてしまうのだと思います。

感情は「液体」。だから、言葉という「器」が必要

自分で自分の中にあるネガティブな感情に気づくためには、自分が思っていること、感じていることを言語化する力が必要です。

青森県にある恐山菩提寺で院代(住職代理)を務める南直哉さんが、(2024年8月17日)Yahoo!ニュースオリジナル特集編集部のインタビューでこう話しています。
「感情というのは『液体』だ」と。「器に入れてはじめて、色やにおい、重量がわかる。つまり、アウトプットしてみなければ、自分に起こっていることがわからないのだ」

「感情というのは液体」という表現は、とても印象的です。液体のように形のない感情は、「言葉」という器に入れて初めて意味が与えられる。自分の感情を自分で把握するためにも、言葉は必要です。

南さんに会いに来た30歳の男性は、一流大学を出て大企業に就職し、将来を嘱望されているエリートコースを歩んでいるにもかかわらず、会社に行けないという。理由を聞いても何も言わない。自分の感情を言葉で表すことができない。
そこで南さんが、「あなたが言いたいのはこういうことではないですか」と言葉にすると、彼は、
「なぜわかるんですか、さすがお坊さん、神通力ですか」と驚いたそうです。

弱音を吐けることが、職場の信頼を生む

自分の感情をうまく言語化できないのは、慣れていないから。
特に男性には、子どもの頃から「感情を言葉にするなんて、恥ずかしいことだ」と刷り込まれている人が多い。たとえば、職場で上司に「つらい」などと弱音をはくわけにはいかない、と自分を縛っている。

そういう人が、自分の感情を言語化できるようになるにはどうすればいいのでしょうか。それには、南さんが言うとおり「アウトプット」するといい。液体のように形のない自分の感情に、言葉という器を用意するのです。

誰かに話して聴いてもらってもいいし、文章にして書き出してもいい。とりとめのない話や文章でいいから、言葉にして発信することで、感情にふさわしい器が見つかりやすくなります。

それには、「どんなにネガティブな感情も、言葉にしていいんだ」と自分にOKを出すことが大切かもしれません。

だからこそ、令和の今、職場でも、間違っても「弱音を吐くな」「グチをこぼすな」などと言ってはいけない。もう時遅れ。
上司と部下がどちらも弱音を吐くことができ、そしてそれを受け止め合える信頼関係であれば、安心して仕事の相談もできるというもの。

そういう信頼関係という名の土壌を職場で耕すことが、ハラスメントを防ぐことにつながる鍵になるのではないかと私は思います。

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この記事を書いた人

藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
年間約200件の研修を企画・実施し、これまで約30万人以上が受講。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。 
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
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よりよい対話と関係を生み出すヒントを発信していきます。
職場の「わかっているはず」を、言葉に変える。
そんな思いで、このブログを書いています。

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