「8時10分前集合」は何時?最近、テレビやXでも話題になっている時間の捉え方の問題をご存じの方も多いのではないでしょうか。
世代でズレる”当たり前”が、実はハラスメントにもつながるという話があります。
「明日は8時10分前集合ね」と言われたので、8時5分に到着。
しかし先輩から「なんで遅いんだよ!」と怒られてしまいました。
「え?言われた通り来たんですけど…」
「そもそも”8時10分前”って、何時なんですか??」
そんな戸惑い、あなたもどこかで感じたことがあるかもしれません。
実はこの「8時10分前集合」、世代によって”まったく違う時間”を意味しているという衝撃の事実があります。そしてこの”ちょっとしたズレ”が、実は職場でのハラスメントの火種にもなりうることをご存じでしょうか。
今回は、時間感覚のズレから始まる「価値観の違い」と、そこから学べるハラスメント防止のヒントを探っていきます。
昭和世代の解釈:8時「の」10分前=7時50分
昭和世代の多くは、「8時10分前」と言われたら「8時の10分前」、つまり7時50分集合だと考えます。
この解釈の背景には、「時間厳守こそ礼儀であり、時間に遅れる=信頼を失う」という考えが染み付いています。昭和生まれの私としては、「10分前行動」は幼稚園の頃から当たり前のように習ってきた習慣です。社会通念として、今でも強く根付いています。
そのため、ビジネスシーンでも、たとえばリモート会議で10時開始の際に、10時ちょうどに入ると参加者が全員揃っていることもよくある光景です。10時に入ると気まずい雰囲気になることもあります。通信環境の問題もあるので、そこまで目くじらを立てる人は少ないですが、明らかに不機嫌な顔をしている人がいるのも事実です。
営業訪問やリアルでの会議では、やはり習慣的に10分前、5分前集合が当然とされています。私の大先輩は「1時間前には相手先に着いているのが当然だ!」という人もいました。相手から時間をいただいている以上、待たせては「絶対にいけない」という強い信念があるようです。
このように「集合は10分前が当たり前」と教えられ、社会に出ても「言われなくても早く来い」が常識だった時代なのです。
若い世代の解釈:「8時10分の”前”」=8:00〜8:09頃
一方、10〜20代はどうでしょうか。メディアでは、このように取り上げられていました。
「8時10分前集合」と言われたら、「8時10分の前…つまり8時5分くらい?」と直感的に解釈し、8時〜8時9分の間に着けばいいと考える人が多いのです。
一瞬、私はフリーズしました。
その背景には、様々な考え方があるようですが、「10分前に来い」と言われること自体が減った(言い方によってはハラスメントと感じられる)といった現代の空気感があるとの解説がありました。
アンケートで見えた、世代間の”ズレ”
北海道テレビの情報番組では、実際に50人に「8時10分前集合って何時のことだと思いますか?」と尋ねたところ、こんな結果になったそうです。
- 10〜20代:8:00〜8:09頃集合 78% / 7:50集合 22%
- 昭和世代:7:50集合 100%
若者の約8割が「8時前後に着けばOK」と考えている一方、昭和世代はほぼ全員が「7時50分」と答えています。この差は、部下を指導する上司としては気になるところです。
「時間の常識」が時代によって変わったのです。もちろん、私の周囲の大学生や高校生に話を聞いても、7時50分という人もいたので、内心安心しました。不思議なのは、小学2年生の頃に時間の授業があったと思いますが、実生活でこの言葉を使う機会が10~20代では減ったのか、定着していないとのこと。個人的にはまだモヤモヤします。
待ち合わせ時間に、ハラスメントの”芽”がある!?
たとえばこんなシーン、思い当たりませんか?
- 新人に「8時10分前集合ね」と伝えた上司
- 部下は8時3分に到着
- 昭和世代の上司が「遅い!常識がない!」と叱責
- 本人は「言われた時間どおり来たのに…」と戸惑う
- 結果、お互いにモヤモヤが残る
このように、価値観のすれ違いを「常識でしょ」と押し付けてしまうと、パワハラと受け取られてしまう可能性があります。「こんなことで」と思った方も多いかもしれません。
ハラスメント防止の鍵は「価値観の違い」に気づくこと
ハラスメントの多くは、「わかってくれて当然」という思い込みから生まれます。
しかし、時代も育ってきた環境も、使っているツールさえも違えば、相手の「当たり前」が違うのは当然です。
「わかってほしい」より、まず”わかろう”としているか?
今回の時間の問題についても、まず「おかしい」とバッサリと切り捨てることは簡単ですが、「面白い!」「そういう見方もあるんだ」「どうしてそう思うの?」と興味・関心・好奇心を忘れずに対話して歩み寄ることは、いつの時代も大切ですね。あなたが「おかしい」と感じた、その20代の部下は、いつかはあなたの上司になるかもしれません。
但し、ビジネスの世界では、待ち合わせは、正確さが求められるわけですから、不安に感じたら「何時何分ですよね?」とハッキリ互いに確認した方がよいと私は思います。遠慮は不要です。
価値観の厄介さ―昔の価値観が「伝統」にすり替えられる怖さ
この価値観の問題は、今回は時間をテーマにしていますが、組織などでは古い価値観を「伝統」にすり替えて、新しい価値観から目を背けようとする人たちもいます。
「うちは何十年もこのやり方でうまくやってきたんだ」
このように、旧来のやり方で成功体験があればある組織ほど、変化を受け入れることに抵抗がある傾向があります。
「昔のやり方がよかった。今のやり方は一見新しいように見えるけど受け入れられない」という回顧主義になり、過去に固執するケースもあり得ます。
その結果、退職などで人が流出してしまうことで、「古き良き価値観」を継承する人もいなくなってしまうこともあり得ます。
新入社員のみなさんへ
「言われた通りやったのに怒られた」
「空気読めって…何を?」
そんな経験があるかもしれません。
でもそれは、あなたが悪いわけではありません。ただ「わかり方の違い」—理解の仕方、受け止め方に違いがあっただけなのでしょう。
だからこそ、伝える側も受け取る側も、お互いの前提をすり合わせることが何より大切です。しかし、思った言葉を伝えないと、本当の想いは届きません。「ヤバい」「パワハラっぽい」など、SNSで溢れかえる言葉を使って表現しても、上司には届かないかもしれません。
具体的にどうして欲しいのか、何に困っているのかを伝える力を磨くことは、お互いの誤解をなくしていくために大切なことですね。繰り返しになりますが、今回の時間に関する問題は、不安に感じたら「何時であっていますか?」と質問すれば済む話です。そこには遠慮は不要です。「こんな質問して、笑われたらどうしよう」そんな思いは捨ててください。あとで揉めるよりもよっぽど大事なことです。
最後に
「8時10分前集合」って、あなたなら何時に行きますか?
今回のこの問題の答えは、単なる時間でもありながら、一方であなたの価値観そのものです。
そして、相手の答えに「そう考える人もいるんだ」と思えたなら、もうそれだけでハラスメント防止のスタートラインに立っています。
「わかってほしい」より「わかろうとする」
そして、お互いにしっかりと「確認」をすればよいのです。
その姿勢が、信頼もチームも育てていくのです。
そのきっかけは、相手の気持ちに耳を澄ますことかもしれません。
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この記事を書いた人
藤山晴久
株式会社インプレッション・ラーニング 代表取締役
ハラスメント研修プランナー/講師/産業カウンセラー
企業の管理職が「ハラスメントを恐れて部下指導ができない」という悩みを解決する研修を専門とする。
アンダーセンビジネススクール、KPMGあずさビジネススクールにて法人研修の企画営業マネージャーとして、一部上場企業を中心にコンプライアンス研修、ハラスメント研修を企画。
2009年、株式会社インプレッション・ラーニングを設立。
企業研修プランナーとして、管理職向けハラスメント研修を中心に活動し、研修講師としても登壇。
年間約200件の研修を企画・実施し、これまで約30万人以上が受講。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ハラスメントは、特定の個人だけの問題ではありません。
社会の変化、世代間の違い、そして組織の文化の中で生まれるものです。
このブログでは、社会・組織・個人という三つの視点から、
ハラスメントの背景や構造について考えています。
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しかし、ときにそれは人を追い詰める
「以心伝心の暴力」 になることもあります。
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